第47話 サンタ・ネネと死神の再会 4
原初神の月のルーナと道化師のオレンジは、ネネからもらったしろくまのヌイグルミを抱きながら、闘いを見守ります。
「死神もネネちゃんも、闘いを楽しんでるよな。ネネちゃん笑ってるし」
「前にネネちゃんが言ってたんだけどさ、天上界からこっちにくる直前に、神々が持ってる城や宮殿とかをいっぱい破壊してきたらしいよ」
「げっ!それってまるで破壊神じゃねーか」
「その理由が、人間を助けない神が気に食わないから天罰与えたんだって」
「うわ~、同族に戒められる神しかいない天上界って、もう終わってるな」
「あいつら人間を守る役目にいながら、ちっとも助けようとしないでしょ。だから自業自得だと思うよ」
「でもネネちゃんが犯人だってわかったら、さすがにやばくないか?」
「いや、完全犯罪だったからバレなかったらしい。んでもって、天上界のボンクラ神どもは、破壊神が潜入した可能性があるって今騒いでる」
「ちっ、同じことやろうと思ってたんだけど、先越されたのか」
「え?ちょっとなに言ってんの」
月のルーナと道化師のオレンジが呑気に話してる間にも、死神とサンタ・ネネの手合わせは、続いています。
2神とも武器は使わず、あくまでも肉弾戦で勝負していました。
それでも激突するたびに放たれる霊圧(エネルギー)はすさまじく、地響きが聞こえてきます。
「すげーな、地面が揺れてるぞ」
「ルーナ姉ちゃん、昨夜から砂浜に人払いの結界を張ってあるんだよね」
「うん、明日ぐらいまでは、砂浜には入ってこれないようにしてる」
「それなら安心。さすがにこの場に人間がいたら、死んじゃうよね」
ネネがエネルギーを込めた連続パンチの余波は、ルーナとオレンジの方にも飛んできます。
しかしその都度、ネネがくれたヌイグルミが光って、全て打ち消し続けていました。
「このヌイグルミ、すげーな。ちゃんと仕事してる」
「ネネちゃんも、すごいよ。どうやったら、あんなふうに動けるんだろ」
「なんだか死神とネネちゃんって、踊ってるように見えないか?」
「確かに、闘ってるはずなのに、ペアでダンスしてるみたいだね」
ネネは今、死神に200年ぶりに修行を付けてもらっている最中でした。
ネネが死神から伝授されている格闘術の心得は「舞闘魂」というもので、蝶のように舞いながら蜂のように刺せという教えでした。
結果的に、華麗に敵の攻撃を避けながら攻撃する姿が、まるでダンスをしているように見えるのです。
死神の教えはあくまでも基礎的な考え方であって、闘いにおける決まった型はありません。
むしろ各々の適性を生かした変幻自在の技が尊重され、相手に合わせて臨機応変に対応することが「舞闘魂」の真骨頂でした。
例えば死神の攻撃スタイルは、単発で一撃必殺の攻撃を行います。
単発とはいえ、毎回違う技を使うようにしています。
ネネの攻撃スタイルはそれとは異なり、相手に反撃を許さない連発攻撃を叩き込んでいきます。
連発攻撃の組み合わせは変幻自在で、予測不可能な動きになっています。
しかも、相手の意表をついて「ヘンテコな技」を突然組み入れてくるのが、彼女の最大の特徴です。
つまり今、ネネスタイルの舞闘魂格闘術と、死神スタイルの舞闘魂格闘術が、初めて激突しているわけです。
「でもすごく惜しいな。そろそろ経験の差が、出始めてきたぞ」
「死神の方が、一枚上手かな。でもネネちゃんは押されてるけど、天上界の神々を凌ぐ実力を持った者と、ほぼ互角に闘えるって十分すごいよ」
そんな会話をしていると、ネネがいきなり変な行動に出ました。
死神の頭上を見上げて指をさしながら、思いっきり大きな声で「あ!」と言ったのです。
死神もそれに釣られて、つい空を見上げてしまいます。
ついでにルーナとオレンジも釣られてしまい、空を見上げていました。
ポン!!
すると変な音がして、空中にしろくまのヌイグルミが現れたのです。
あまりにも意味不明な出来事に、死神は一瞬気を取られてしまいました。
その隙を付くかのように、ネネは猛ダッシュします。
大きな砂煙が巻き起こり、一気に状況が見えなくなってしまいました。
そして1分後。
砂煙が晴れると、頭を抱えながら半泣き状態のネネと、立ったままで涼しい顔をしている死神の姿がありました。
これは誰がどう見ても、勝者は死神で、敗者はネネの方なのですが・・・
死神は、おかしなことを言い出します。
「あーあ、師匠はやっぱり強いわ。また負けちゃった」
「いや、実にお見事でした。これはネネさん、あなたの勝ちですよ」
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
死神とネネの手合わせ修業は、相手の頭にゴチンと一発食らわせた方が勝ちというルールで行われていました
今回は死神が砂煙の中で、ネネの頭に一発当てています
つまり勝者は、死神の方でした
しかし死神は「勝者はネネの方だ」と言っています
この手合わせの勝敗は、死神がトドメを入れる前に、意外なところで決まっていたようです
それはネネが見せてくれた、200年間の間に培った「心の成長」だったのです
ネネが見せた咄嗟の行動は、死神にとっては最も喜ばしいことでした
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます