第21話 時間停止とサンタの木
『ネネいつの間に、時間停止なんて危ないこと出来るようになったんだよ』
「はて?時間止めるのって危ないの?」
『時間止める能力なんか持ってたら、反則や犯罪やり放題になるだろ』
「出来るようになったのは、5年ぐらい前」
『え? うそ! こわっ』
「大丈夫だよ、イタズラにしか使ってないもん。それとせいぜい10分間ぐらいしか止めれないし、1ケ月に1回ぐらいしか使えないんだぞ」
『いや、それでも、こわっ』
「私って信用無いなぁ。ボルトくん、サンタのお姉さんはね、悪いことなんてしないんだ・ぞ うっふん」
『うっふんって何だよ。てかウソつけ。天上界で毎日悪さしまくってたでしょ、あなた』
「嫌だなぁ、あれはお茶目なイタズラだからセーフだよ」
最高峰の科学力の結集である人工知能を持ったサンダー・ボルトは、かなり堅苦しい考え方をします。
相方のネネは真逆で、いつも意味不明のホワホワした考え方をします。
会話が微妙にかみ合わないのは、いつものことでした。
『あーーー!思い出した!』
「何を?」
『先月、天上界のゼウスの神殿が一瞬で崩壊したのは、ネネの仕業だったってことか。破壊神が潜入してるとか、破壊神を探し出せとか、神々の間で大騒ぎになってたぞ』
「さて、どうでしょうね~。もう古かったから勝手に壊れたんじゃない?」
『そんなわけあるか』
「さて、何のことやら、わかりませんねー(棒読み)」
『その、すっとぼけた顔・・・やっぱりネネが犯人じゃねーか』
ネネはこの200年、天上界で毎日イタズラして歩き回っていました。
それは確かにクスッと笑える程度のものだったので大丈夫かもしれません。
しかし5年ぐらい前から天上界では、だいたい月イチのペースで大騒ぎになるような事件が多発していました。
それはイタズラというレベルをはるかに超えていたので、大丈夫なわけがありません。
天上界で神々の建築物を壊して回っていた「破壊神」の正体は、ネネでした。
この破壊行動には、ちゃんとした理由があるのですが、その説明はいずれまたってことで。
そんな身内話をしている間、道化師のオレンジと小人妖精のアケビちゃんは、ネネが取り出した「スノードーム」に夢中でした。
何に使うためのアイテムかはわかりませんが、ドーム内に雪が降ってる光景が何とも神秘的で、綺麗だったのです。
「ネネチャン、ネネちゃん、これって何なの?」
「ん?あぁ、これはね・・・えっと・・・何だっけ」
『忘れんなよ』
ボルトがネネに突っ込みを入れた後、代わりに説明をしてくれました。
『これは、全国各地にサンタ・クロース殿が植えていたサンタ・ツリーだ。つまり神様の木ってことだな。人間界では200年前に全て枯れてしまって、今は1本も存在しない。それをネネが、植え直そうとしている』
これに反応したのは、意外にも小人妖精のアケビちゃんでした。
「聞いたことがあるです。トントゥ族の大婆様が言ってたです。私たちは昔々に、大きな御神木を守るお役目だったって。たぶんこの木のことだと、思うのです」
『驚いたな。昔この森に、サンタ・ツリーがあったのか』
「御神木が復活。お話したら、大婆様きっと大喜びするです」
トントゥ族は今は小人妖精と呼ばれていますが、本当は森の妖精です。
森を守ることが、昔からのお役目でした。
かつてはサンタ・ツリーの周りに、村を作って住んでいたそうです。
ボルトはネネに向かって、話しかけます。
『わざわざ雪を積もらせてるんだから、ツリーの植樹をしたいんだろ?』
「うんうん、そうそう」
『また適当な返事だな』
「さてさて、始めますか」
ネネはサンタ・ツリーのスノードームを両手で持ちあげ、大きく振りかぶったかと思うと、前方に向かってエーーーイ!と投げつけました。
『うわーー!おまっ!扱いが乱暴すぎ』
サンタ・ネネは、いつも思い付きで行動します。
そもそもサンタ・ツリーの植樹なんてやったことが無いからと言ってしまえばそれまでですが、さすがに投げるのはどうかと・・・
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
ネネは、完全なる聖人ではありません
けっこう悪さもやっています
「聖」と「悪」が入り混じっている非常に珍しい女神です
悪さをするための能力やアイテムは、相棒のサンダー・ボルトにも内緒にしていることが多いのです
今回は秘密にしていた「時間停止の能力」がバレてしまいました
ネネには、他にも隠し事がいっぱいあるようです
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます
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