第23話 サンタのトナカイ
いきなり余談から始まります。
現在の人間界は、統治の都合上、5つの行政区に分けられています。
中央区 セントラル central section
北区 ノースワード northward section
南区 サザン southern section
東区 イースタン eastern section
西区 ウエスタン Western section
現在ネネたちがいる場所は、南区の南端に位置する海岸沿いです。
ちなみにサンタ・クロースの家は北区の最北端にあるので、ネネ達がいる場所からは、けっこうな距離があります。
さて物語は、南区にあるドールの街の食堂に移ります。
食堂には仕事を終えた独身者達が夕食を取るために集まり、賑わいを見せています。
そこに頭に鹿の角を持った獣人が3名、一緒にテーブルを囲んでいました。
彼らは表向きは「獣人」という種族ということになっていますが、その正体はサンタ・クロースに仕える「トナカイの聖獣」です。
トナカイの聖獣は、全員で9名います。
彼らがサンタ・クロースと一緒に仕事をするのは、クリスマス・イブの夜のみになります。
普段は3名1組で全国各地に散らばり、運送業をやっていました。
さてこの3人組ですが、
1人目の名前は「ルドルフ」です。
冷静沈着な性格をしています。
幼少期のネネは、もっとも頼れる兄貴分として慕っていました。
2人目の名前は「ヴィクセン」です。
お姉さん気質の性格をしています。
幼少期のネネがかわいくて、やたらお菓子を与えて甘やかしていました。
ネネを甘い物好きにした犯人は、この人です。
3人目の名前は「プランサー」です。
無駄に元気でお喋り好きです。
幼少期のネネとは、最も仲が良かったトナカイでした。
いつも一緒に、人間界の野山や雪原を走り回っていました。
ネネをヤンチャな性格にしてしまった犯人は、この人です。
ちなみに彼らは動物形態に変身することで、猛スピードで夜空を駆け回ることが出来ます。
その能力を利用して、たくさんの荷物を巨大コンテナに詰め込んで、全国各地へ輸送しています。
今夜は、請け負いの仕事はありませんので、食事が終わったら、あとは宿に帰って寝るだけです。
「あのさー、もう200年以上たつんだよ。いい加減ネネちゃん帰ってきてもいい頃だと思わない?」
「プランサーは、いつもネネの話ばかりだな」
「だってさぁ、やっぱ寂しいじゃん。みんなはどう思って・・・はぐっ」
喋りまくるプランサーの口に、ヴィクセンがフォークで刺した大きなソーセージを無理やり突っ込みます。
こうでもしないと、お喋り好きなプランサーを黙らせることは出来ません。
「確かにネネが天上界に行ってしまってから、そんなに経つのか」
「確かにちょっと、寂しくはあるわよね」
「でしょー!でしょー!みんなも、そう思うでしょー!」
けっきょく口に入れられたソーセージを食べきったプランサーが、また機関銃のように喋り始めました。
「あなた、10秒も黙ってられないわけ?」
ヴィクセンが、ため息をつきながら呆れたように話しかけます。
しかし、そこでまた話し始めると思ったプランサーでしたが、珍しいことに急に黙ってしまったのです。
なぜかやたら周囲を、キョロキョロと見まわしています。
挙句の果てに立ち上がって目をつぶり、聞き耳を立てているような仕草を始めました。
「何やってんだよ、プランサー」
「しっ!静かに! みんなには聞こえないの? あの音」
「あの音って、何の音だ? 何も聞こえないが」
プランサーは、ぼそっと呟きました。
「サンタの誰かが、遠くでジングルベルの音を鳴らしてる・・・」
「え? クリスマスでもないのに、サンタ・クロース様が呼んでるのか?」
「いや方角が違う。南の方から、かすかに聞こえてくる」
プランサーはそれだけ言うと、食堂の外へ走って出てしまいました。
慌てたルドルフとヴィクセンは、食事の代金を支払い、プランサーの後を追いかけます。
外に出ると、空にはうっすら月が見えていました。
そろそろ夜がやって来る時間です。
つづく
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
ジングルベルの鈴の音は、キノコの森でネネが鳴らしたものです
別にネネはトナカイを呼んだつもりは無かったのですが、その音はプランサーの耳に届いたようでした
ジングルベルは、別名「スレイベル」と呼ばれている打楽器です
木の棒に、たくさんの小さな鈴が付けられています
使い方はベルを下向きに持ち、空いた方の手で楽器を握った方の手を叩いて、音を鳴らします
※参考 ウィキペディア「スレイベル」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%AB
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます
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