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透析治療のすべて


透析療法とは?

透析療法は、腎臓の機能が著しく低下した患者の血液を浄化するための治療法です。腎臓は体内で余分な水分や老廃物を排出し、血液を清潔に保つ重要な役割を果たしています。しかし、腎臓の機能が低下すると、これらの排出機能が失われ、体内に有害な物質が蓄積します。このため、透析療法を用いて血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、患者の命を支えることが必要になります。

透析には主に血液透析(HD)と腹膜透析(PD)の2種類があり、どちらの方法を選択するかは患者の状態やライフスタイルに基づいて決定されます。


血液透析(HD)とは?

血液透析は、体外で血液を浄化する治療法です。血液中の余分な老廃物や水分を取り除くため、透析器(ダイアライザー)を通して血液を浄化します。この過程では、患者の体から血液を一度取り出し、浄化された血液を再び体内に戻すという手順が行われます。

血液透析の手順

  1. バスキュラーアクセスの作成 血液透析を行うためには、まず血液が出入りするためのアクセス経路を作る必要があります。通常、患者の腕にシャント(内シャント)を作成します。この手術は、動脈と静脈をつなぎ合わせて血管を太くし、血液の流れを良くするためのものです[1]。

  2. 穿刺(せんし) 血液透析の治療が始まる前に、シャント部に2本の針を刺します。1本は血液を体外に送り出すために使い、もう1本は浄化後の血液を体内に戻すために使用します[2]。

  3. 血液の循環 血液透析では、血液を血液ポンプを使って体外に送り出します。1分間に約200mlの血液が循環し、ダイアライザーを通って浄化されます[3]。

  4. 血液の浄化 ダイアライザー(人工腎臓)は、半透膜を使って血液と透析液の間で物質を交換します。これにより、血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、必要な物質を補充します。

  5. 血液の返還 浄化された血液は再び体内に戻されます。これにより、血液が清潔に保たれ、患者の体調が改善します。

  6. 治療の頻度と時間 血液透析は通常、週3回、1回4~5時間程度行われます。透析施設に通院し、専門のスタッフのもとで治療を受けます[6]。

血液透析は、腎臓の機能がほとんどない患者にとって命をつなぐ重要な治療法ですが、患者は定期的に通院しなければならないため、生活に大きな影響を与えることがあります。


腹膜透析(PD)とは?

腹膜透析は、患者自身の腹膜を利用して血液を浄化する方法です。腹膜は、体内にある空間(腹腔)を囲んでいる薄い膜で、透析液を利用して血液中の老廃物や余分な水分を取り除きます。この方法は、自宅で行えるため、通院の負担を減らすことができるのが特徴です。

腹膜透析の手順

  1. カテーテルの挿入 腹膜透析を始めるには、まず患者の腹部にカテーテルを埋め込みます。このカテーテルは、透析液を腹腔内に出し入れするために使用します。

  2. 透析液の注入 透析液をカテーテルを通して腹腔内に注入します。腹膜が透析液と接触することで、老廃物や余分な水分が血液から透析液に移動します。

  3. 老廃物の除去 透析液は一定時間、腹腔内に留置され、体内の老廃物や余分な水分を吸収します。この過程で血液が浄化されます[9]。

  4. 透析液の交換 使用済みの透析液を排出し、新しい透析液と交換します。通常、1日4回程度、6~8時間おきに透析液を交換します。

腹膜透析は、自宅でできるため、患者の生活の質を改善する可能性がありますが、自己管理が求められます。


透析治療の時間と頻度

透析の治療時間や頻度は患者の状態によって異なりますが、基本的には以下のようになります。

血液透析

  • 標準的な治療時間:1回4~5時間

  • 治療の頻度:週3回

  • 合計時間:週に12~15時間程度

長時間透析や夜間透析も選択肢としてあります。長時間透析では、週18時間以上の透析が行われ、週3回の場合は1回6時間以上、隔日の場合は1回5時間以上行われることもあります[11]。夜間透析は、患者が睡眠をとる時間帯に透析を行い、7~8時間の治療を行います。

透析時間が短すぎると、老廃物や余分な水分の除去が不十分になるため、長時間の治療が推奨される場合もあります。


自宅での透析

透析を自宅で行うことも可能です。自宅でできる透析方法には腹膜透析
在宅血液透析(HHD)があります。それぞれの特徴と注意点について見ていきましょう。

腹膜透析

腹膜透析は、自宅で手軽に実施できる方法です。患者はカテーテルを使って透析液を注入し、交換を行います。通常、1日4回の交換が必要ですが、生活に合わせて調整可能です。腹膜透析の最大の利点は、自宅で自己管理できる点です。

在宅血液透析

在宅血液透析(HHD)は、自宅に透析機器を設置し、患者自身が血液透析を行う方法です。これは医師の管理とトレーニングを受けて行いますが、通院の必要がなくなり、生活スタイルに合わせた透析が可能になります。十分な透析ができるため、予後の改善が期待されます[13]。


透析のメリットとデメリット

透析には、治療を受ける患者にとってのメリットとデメリットがあります。

メリット

  • 生命維持:腎臓機能が失われた場合に、透析は命をつなぐ治療法です。

  • 生活の自由度:自宅での透析(腹膜透析、在宅血液透析)により、通院の負担が減ります。

  • 予後の改善:特に在宅血液透析では、より効果的な透析が可能で、患者の体調や生活の質が向上します。

デメリット

  • 自己管理の必要:特に自宅での透析は、患者自身の自己管理が求められます。トレーニングや準備が必要です。

  • 治療の負担:透析は治療時間が長く、患者の日常生活に影響を与えることがあります。


透析療法は、腎不全の治療に欠かせない方法ですが、治療の選択や自己管理が重要です。透析治療を受ける際は、医師とよく相談し、自分に合った方法を選ぶことが大切です。透析を通じて、患者はより良い生活を送ることができるようになるでしょう。

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