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複合性局所疼痛症候群(CRPS)とは? 症状から治療法までわかりやすく解説


複合性局所疼痛症候群(CRPS)についてのアップデート版記事になります。

https://note.com/jolly_camel553/n/nf6e1ac3e596d?sub_rt=share_b

はじめに:CRPSってどんな病気?

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、けがや手術後に発症することが多い病気で、特に手や足に強い痛みが長期間続くのが特徴です。普通なら治るはずの痛みが、なぜか長引いてしまうという状態です。

たとえば、骨折や打撲といった軽いけがをきっかけに、痛みが異常に強くなり、治療してもなかなか治らないことがあります。思いがけない事例で発症することがあるため、ただのけがだけでなく、様々な原因から起こる病気です。

CRPSの主な症状

CRPSの症状は、患者さんによって異なります。けがをきっかけに発症し、痛みや不調が続きますが、その痛みの強さやタイプ、現れる症状も個人差があります。一般的に見られる症状としては、以下のようなものがありますが、すべての患者さんに当てはまるわけではありません。

  • 強烈な痛み: 通常のけがでは感じないような異常な痛みが続きます。痛みの感じ方は個人差があり、軽い刺激でも激しく感じることがあります。

  • 皮膚の色や温度の違い: 痛みを感じる部位の温度が変わり、異常に熱く感じたり、逆に冷たく感じたりすることがあります。また、皮膚の色が変わることもあります(赤くなる、青紫色になるなど)。

  • 発汗の異常: 患部から過剰に汗をかくことがあったり、逆に全く汗をかかないこともあります。

  • 腫れやむくみ: 体の一部が異常に腫れることがあります。

  • 運動機能の低下: 関節が固まり、動かしにくくなることがあります。また、筋力が低下し、手足の震えが生じることもあります。


CRPSの診断方法

CRPS(複合性局所疼痛症候群)の診断は、主に「Budapest基準」という特定の診断基準に基づいて行われます。この基準では、CRPSの症状を評価するために、痛みの強さとその持続時間、皮膚の血流の変化や発汗異常など、複数の項目が重要な要素としてチェックされます。

診断を行うためには、患者さんの症状がBudapest基準に合致しているかを確認し、以下のような評価が行われます。

  1. 痛みの強さと持続
    CRPSでは、痛みが通常のけがや外傷に比べて非常に強く、また長期間にわたって続きます。痛みの感覚が異常に激しく、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

  2. 皮膚の血流の変化
    CRPSでは、痛みを感じる部位の皮膚の色が変わったり、温度が左右で異なることがあります。例えば、手や足が熱く感じたり、冷たく感じることがあるため、血流の変化が一つの重要な指標となります。

  3. 発汗異常
    発汗量の異常もCRPSの重要な症状の一つです。患者さんの患部から過剰に汗をかいたり、逆に汗が全く出ないこともあります。この異常な発汗のパターンも診断の参考になります。

医師は、これらの症状を元に診断を行い、CRPSであるかどうかを判断します。また、CRPSの症状が他の病気や原因から来ていないかを確認することも重要です。例えば、同じような症状を引き起こす他の疾患を排除するため、慎重な検査が行われます。

CRPSの診断は難しいことが多いため、医師による診断が求められます。早期に診断を受けることで、適切な治療が行いやすくなり、症状の進行を防ぐことができます。


CRPSの治療法

CRPS(複合性局所疼痛症候群)の治療には、薬物療法やリハビリ、そして精神的なサポートが必要です。治療法は患者さんの状態に応じて個別に行われるため、症状に最も適した方法が選ばれます。治療の目的は、痛みの軽減、日常生活の質を向上させること、そして患者さんが生活の中で前向きに取り組めるようサポートすることです。


1. 薬物療法

CRPSの痛みを軽減するために使用される薬には、以下のものがあります

  • 神経の痛みを和らげる薬
    抗うつ薬や抗てんかん薬が使用されることがあります。これらは神経の過敏な反応を抑え、痛みを軽減する効果があります。

  • 炎症を抑える薬
    コルチコステロイドなどの炎症を抑える薬が、初期の炎症性の痛みに効果があります。

  • 強力な鎮痛薬
    オピオイド鎮痛薬など、強い痛みを抑えるための薬が使われることがありますが、長期的な使用には注意が必要です。


2. リハビリと運動療法

CRPSでは、痛みや可動域の制限による機能低下が起こるため、リハビリや運動療法が重要です。以下の方法がよく取り入れられます

  • 脱感作トレーニング
    痛みが過敏になっている部位に対して、最初は柔らかい物(絹の布など)で触れる練習を行い、徐々に刺激を強くしていきます。この方法で、過敏になっている部分の痛みを軽減することができます。

  • 筋力トレーニング
    長期間使わなかった筋肉を強化するためのトレーニングを行います。筋肉を強化することで、動きやすさを取り戻し、日常生活における活動がしやすくなります。

  • 関節の可動域の改善
    関節が固まるのを防ぐため、少しずつ関節を動かし、可動域を広げる練習を行います。これにより、手足をスムーズに使えるようにします。


3. 心理療法

CRPSは身体的な痛みだけでなく、精神的にも大きな影響を与える病気です。痛みによる不安やストレスを軽減するため、心理療法を受けることが非常に重要です。

  • 認知行動療法(CBT)
    痛みに対する恐怖心を軽減するために、認知行動療法を通じて痛みの管理方法を学びます。

  • ストレス管理
    日常生活の中で痛みと共に生きるために、ストレスや不安を管理するスキルを身につけることが生活の質向上に繋がります。


4. 特殊な治療法

CRPSには、標準的な治療方法だけでなく、特殊な治療法が有効である場合もあります。

  • 鏡療法
    幻肢痛(切断された手足の痛み)や脳卒中後のCRPSに特に効果があるとされています。鏡を使って、痛みを感じている側の体を「健側」に見せ、脳に正常に動いている錯覚を与えることで痛みを軽減します。

  • ニューロモジュレーション
    重症のCRPS患者さんに使用される治療法で、脊髄に電気刺激を与えて痛みを軽減します。この治療は、埋め込み型の装置を使用することが多いです。


重要なポイント

CRPSの治療法は、患者さん一人ひとりの状態に合わせて異なります。痛みの程度や症状、過去の治療歴などによって最適な方法が変わるため、医師や医療従事者と相談しながら治療計画を立てることが大切です。治療には時間がかかることがありますが、適切な支援を受けながら、症状を軽減し、より快適な生活を送るためのサポートが得られるはずです。


このように、CRPSの治療は個別化されており、患者さんの状態に最適な方法を選択することが重要です。必ず医師や医療従事者としっかりと相談しながら進めていきましょう。


最後に

ホープの会の役割と今後の取り組み
ホープの会では、CRPS患者さんやそのご家族を支えるために様々な活動を行っています。患者さん同士の交流やオンライン上での情報共有の場を提供し、社会に対してCRPSについての認知を広める活動に力を入れています。これらの活動を通じて、患者さんが孤独を感じることなく、共に支え合える環境を作り出しています。

後日、「ホープの会ができること」というテーマで、後日記事をまとめる予定です。具体的な支援内容や活動内容について、詳しくお伝えできればと思っています。
テーマに関しては、テーマ名は、暫定的に決めたので 変更する場合があります。

CRPSの症状は見た目に現れにくい場合が多いため、患者さんご本人しか「痛み」が分からないことがあります。そのため、周囲の理解が得られにくく、患者さんがどれほどの苦しみを抱えているかを理解してもらうのが難しい現実があります。たとえば、「こんな病気で痛みがあるんですよ」と説明しても、時には「そんな痛みだからなに?」と言われることもあります。腰が痛い人だって一生懸命仕事や学校に行っているのに、なぜ自分だけが特別だと言われるのか、理解してもらうことが難しいと感じることもあるかもしれません。

「経験者は語る」とも言いますが、痛みの感じ方は人それぞれであり、見た目ではわからないからこそ、その苦しみが理解されにくいのが現実です。CRPSでは、普通のけがや痛みとは異なり、痛みの強さや持続時間が異常であり、治療や対処が難しい場合が多いです。このため、痛みが見えないことによって、患者さんが感じる孤独や心理的な負担はさらに大きくなります。

多くの患者さんは「痛みを我慢するべきだ」と感じ、無理をして症状を悪化させてしまうことがあります。社会の理解と支援が必要なのは、痛みが見えないだけでなく、その痛みが患者さんの日常生活をどれだけ困難にしているかを理解してもらうためです。

理解が得られにくい状況で苦しむ患者さんにとって、少しでも理解を深めてもらうことが重要です。痛みがどれだけ強くても、見た目で判断されがちな現実を変えるためには、痛みや疾患に対する認識を広め、共感を呼びかけていくことが必要だと思います。 


まとめ

ホープの会は、複合性局所疼痛症候群(CRPS)をはじめ、難治性の疼痛症候群や慢性的な痛みを抱える方々とそのご家族を支えるために活動を続けています。

私たちは、オンライン交流会や情報発信を通じて、患者さんが少しでも安心できる環境を作り、社会全体の理解を深めることを目指しています。CRPSの痛みは目に見えにくいものですが、正しい知識を広め、患者さんが適切な治療や支援を受けられる社会づくりに向けて、一歩ずつ前進していきます。


患者さん、ご家族、支援者の皆さんとともに、これからも活動を続けていきます。どうか一人で悩まず、私たちと一緒に考えていきましょう。


今後の活動についても随時発信していきますので、ぜひ引き続きご覧ください!



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