あの子は居ない。

渋滞でイライラしている時に、

「パパ怒ってるけど、夕陽綺麗だよ。」

と言われて、
息子が座る助手席から空を見ると、雲と夕陽が本当に綺麗に重なっていて、

「この子は凄く良い感性をしているな。」

と思った。
それが、当時小学6年生の時。

正直、典型的な「ダメな親。」でした。

「学校行きたくない。パパと遊びたい。」

と言われたら、

「なら休めや!」

と、学校を休ませて遊びに連れ回して、
夏休みは朝帰りが当たり前。(当時はまだ、保護者同伴の場合、オールで居れるカラオケ屋があったし、昔俺が働いていたバーにも連れて行けていた。)

小1の夏休みで生活リズムが狂った息子は、
あまり小学校へ通っていない。

その代わり、友達には本当に恵まれていて、
放課後になると息子の友達が何人も遊びに来てくれる。
そんな環境だったから、簡単な読み書きと割り算までが出来れば良いと思い、それだけは教えた。

高学年の頃は、低学年の頃に比べると出席率も上がり、そのまま中学校へ入学。

ここで…
初めて人間関係を挫折したんだと思う。

部活の先輩に揶揄われたことに激怒し、本気で殴って怪我をさせた。

俺らの世代は、そんなことは普通だったけど
最近ではあり得ない光景だったらしく…

「アイツはヤバい。」

と、息子の周りから人が離れた。

「パパも中2から学校行ってないし、行かんでええよ。高校なんか、全日制の通信行けば良いんぢゃけ!」

と、俺は何も咎めなかったが、

この時に学校に行かしておけば良かったのかなと、最近思うことがある。

中学へ行くのを辞めてから、ほとんど家にこもってスマホを触って過ごしていた。

遊ぶのはパパか、
パパの友達の息子さん。

ネットの世界に入り浸ってから、良くも悪くも変わってしまったなと思う。

いや、多分…
普通に中学生をしていたとしたも、あの頃のまま大きくなると言うことはなかったであろう。

「夕陽綺麗だよ。」

と言っていた息子は、もう何処にも居ない。

本当に、どうしようもないバカ親だと自負しているんだけど、
あの頃の君にもっと沢山の物を見せてあげたかったし、色んなことをさせてあげたかった。

そうすれば、
あんなに傷付かなくて良かったのかもしれないね。

でも、職場のトラブルで成長したなと思ったし、パパも甘やかさなかった。

昔なら、
「もういやだ。やめる!」
って泣いてただろうし、

「分かった。やめていいよ。」
と、パパは言ってたと思う。

あんたが変わっただけぢゃなくて、
パパも変わったんだと思うぜ。

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