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リユースビジネスへの参入は、自社の既存事業にどう影響するのか?

こんにちは!リユースビジネス支援サービス 『Selloop』ジェネラル・マネジャーの新谷です。 普段は、クライアント企業様のリユースビジネス参入において、企画・設計の伴走支援に携わっています。

この記事は、リユースビジネスへの新規参入を検討されている企業のご担当者様を対象としています。 メーカー企業や小売企業においてリユースビジネスへの参入を検討する際には、「既存事業の新品販売とカニバリゼーション(食い合い)が発生するのではないか?」「自社商品のブランド毀損につながるのではないか?」といった疑念に突き当たるケースが多く見受けられます。 そこでこの記事では、リユースビジネスへの参入が既存事業に与える影響について解説していきます。主には、次のような内容を議論しています:

  • 適切な形で取り組むことができれば、リユースビジネスは既存事業に好影響を与える

    • 疎遠化したお客様にリーチしたり、新規顧客のエントリーのきっかけとして活用する

    • リユースの利他的な側面をブランドイメージに取り込んだり、リユース市場における自社ブランドの地位を高めることで、顧客ロイヤルティの向上につなげる

  • そのためには、リユース事業を単体で捉えるのではなく、既存事業も含めた全体最適の視点で設計を進めていくことが肝要


1. リユースビジネスによる既存事業への影響

メーカー企業や小売企業がリユースビジネス(買取再販、サブスクリプション、シェアリング、レンタル、…)に参入しようとする際に、社内検討において直面しやすいのが、

  • 新品/リユース品の間で、カニバリゼーション(食い合い)が起こるのではないか?

  • リユース品を扱うことで、ブランドイメージを毀損してしまうのではないか?

といった、既存事業に対するネガティブ影響への懸念です。

実際、こうした負の影響の可能性はゼロとは言えません。しかし、リユースビジネスによる影響がネガティブなものになるか、ポジティブなものになるかは、リユースビジネスに対する取り組み方によって大きく左右されます。
適切な形で取り組むことができれば、リユースビジネスは既存事業に好影響を与えます。メーカー・小売企業におけるリユースビジネスでは、こうしたポテンシャルを念頭に置いたうえで、いかに設計に反映し、実現していくが重要です。

以降では、リユースビジネスが既存事業に与える2つのシナジー効果:

  • 新品販売の促進

  • 顧客ロイヤルティの向上

について考えていきます。

2. 影響①:新品販売の促進

リユースビジネスによる1つ目のシナジーは、「リユースビジネスが新品販売を促進する」というものです。

例えば、自社で買取サービスを展開するケースを想定してみましょう。こうしたサービスを利用するユーザーは、普段から継続的に自社商品を購入している方ばかりではありません。普段の「販売」という接点とは提供価値の異なる「買取」という接点を設けることで、しばらく自社商品を購入していなかったお客様にも、サービスを利用してもらえる可能性が生じます。

このようにリユースビジネスは、既存事業と異なる提供価値により、疎遠化したお客様にリーチするきっかけを与えてくれます。こうしたコンタクトを起点に、一定の確率で新品商品を購入してもらえるチャンスが生じます。

なお、買取金の支払いを自社ポイントやクーポンにしたり、買取のタイミングで新品商品をレコメンドすることによって、新品購入を促すことが可能です。特に、「買い取った商品が何であるか」という情報を活用すると、精度の高い1to1レコメンドを実現できる場合があります。例えば、子供向けの商品を買い取った場合、ユーザーにはおそらく子供がいること、加えて子供の大まかな年齢を推測することができます。

また、リユースビジネスには、疎遠化したお客様の呼び戻しに加えて、「リユース品販売によるエントリー顧客の獲得」というもう一つのポテンシャルがあります。リユース品の再販価格は新品に比べて安価なため、これまで価格の高さを理由に自社製品を敬遠していた潜在顧客のエントリーを促すことができるということです。そこで自社製品を気に入ってもらえれば、将来の新品商品購入につながります。

一方でこうした再販事業は、新品需要を食いつぶす懸念を伴います。この問題については、そういったカニバリゼーションのリスクと、エントリー顧客獲得によるリターンとを総合的に考えてみる必要があります。もし自社のこれまでのマーケティング活動が上手くいっていれば、「氷山の一角」である既存顧客の背後には、「隠れた氷山」である潜在顧客が多数存在することでしょう。こうした状況では、既存顧客のリユース品へのわずかな流出よりも、潜在顧客の取り込み効果の方が大きくなると期待できます。

3. 影響②:顧客ロイヤルティの向上

リユースビジネスによる2つ目のシナジーは、「リユースビジネスが自社ブランドの顧客ロイヤルティを向上させる」というものです。

リユースビジネスは、買取再販などを通じて、ユーザー間でのモノの譲り合いを媒介するビジネスといえます。つまり、不要になったものをできるだけ有効活用し、それを必要としている人のもとへ届ける活動です。こうした活動は、「新品商品を製造・販売したのに使われていない」「まだ使えるものが廃棄されている」といったムダを減らし、地球環境への負荷を抑制することにもつながります。そのため、リユースビジネスは「助け合い(利他)の活動」であり、「サステナビリティへの貢献」であると捉えることができます。

利他やサステナビリティを大切にする価値観は、世界的にますます影響力を増しており、日本も例外ではありません。こうした時代背景を踏まえると、リユースビジネスには、ユーザーからの深い共感を得るサービスとしての大きなポテンシャルがあるといえます。したがって、こうしたサービスを自社ブランドのもとで展開することにより、既存事業を含む顧客ロイヤリティの向上を実現できる可能性があります。

こうした効果の実現のためには、リユースの持つ利他やサステナビリティの側面を、ユーザー接点の各所(サービスwebサイト、Eメール、LINEメッセージ…)において魅力的に表現したり、サービスをユーザー参加型(”toC”ではなく”withC”)の「ブランドアクション」として見せていくことが必要となります。

また、こうした効果の他に、自らリユース市場に参入することを通じてリユース市場における自社ブランドの地位を高めることも、顧客ロイヤルティの向上につながる可能性があります。

例えば、高級車や宝飾品・ウォッチの市場においては、「リユース品が高値で再流通している」という事実がブランド価値の高さを分かりやすく証明し、顧客ロイヤルティを高めることにつながっています。したがってブランド企業は、自ら買取を行い「認定中古品」として流通させるなど、リユース市場における自社ブランドの地位を高める打ち手をとることがあります。
以上のように、リユースビジネスには顧客ロイヤルティを高めるポテンシャルがあります。一方で裏を返せば、低質なリユース品の流通に加担してしまうことにより、自社ブランドの価値を毀損してしまうリスクが存在することも事実です。

こうしたリスクは、「自社のリスクで販売するに値する高グレード品」「買い手側でリスクをとるべき中グレード品」「リユースに値しない低グレード品」を的確に仕分けたうえで、流通手段を使い分けることで回避できます。中・低グレード品の再流通には、専門業者への販売や、リペア/アップサイクル/リサイクルといった手段を活用できます。こうした手段を組み合わせながら、高グレード品には認定中古品としての価値を明示することで、リスクを抑えつつ、購入者にとっても安心・安全な再販サービスを実現することが可能です。

4. 好影響を実現するポイント

ここまでリユースビジネスによる既存事業へのシナジー効果について解説してきましたが、こうした好影響を実現するためには、どのような点に気を付けると良いでしょうか。

大前提として、上段で解説してきたように、リユースビジネスによる好影響のためには設計上の工夫が必要です。新品販売への導線設計や、共感性を高める体験の創出、再流通手段の使い分けといった要素を積み重ねることによって、大きな効果を得ることが可能になります。

一方で、一般の企業内の意思決定プロセスは、「リユースビジネスを単体事業として捉える」という考え方に囚われることが多いように見受けられます。具体的には、リユースビジネス単体でのP/L計画を作成して収益性を検討し、単体収益化の可能性を参入是非の基本的な判断軸とし、シナジー効果は「参考情報」程度の扱いとする、といった考え方です。

こうした考え方は設計の部分最適化に繋がり、結果としてリユースビジネスのポテンシャルを取り逃してしまうことに帰結します。例えば、単体収益を追い求めると、「安く買い取って高く売る」差益ビジネスとしての成功が優先されます。すると、顧客ロイヤリティを高めるために体験としての魅力を演出するといった観点は、コストがかかる割に差益には影響を与えないため、往々にして設計から排除されていきます。

また、このように差益を軸にした「典型的」なリユース事業は、従来の買取サービスやフリマサービスなど多くのサービスと競合します。加えて、商材によっては直接の差益がほとんど生じないこともあります。こうした弱点が指摘されるにつれて、既存事業も含めた全体最適化が十分考慮されないままに、「合理的」な意思決定として「リユースビジネスには参入しない」という結論に辿り着きかねません。

したがって、リユースビジネスの設計においては、こうした狭い・短期的な視野での検討に陥らないよう、事業の位置づけについて明確なコンセンサスを形成しながら検討を進めていくことが肝要です。端的な考え方としては、リユースビジネスを「収益事業」ではなく「マーケティング戦略」として位置付けると分かりやすいでしょう。このように捉えることで、仮にリユースビジネスが単体では赤字と想定されるとしても、既存事業に与える効果を考えるとトータルでプラスになる、といった可能性を丁寧に議論しやすくなります。

また、この記事で述べてきたようなリユースビジネスによる好影響を、自社のブランド特性・商品特性を前提としても同じように実現できるかどうかは、あくまで検証が必要な仮説です。この点を確かめるために、まずは小規模なPoC(コンセプト検証)をクイックに実施することも、検討のアプローチとして有効です。

5. 新品販売とリユースビジネスの融合事例

実際にリユースビジネスに参入し、上記のようなシナジー効果を狙っていると考えられる事例について、以下の記事でご紹介しています。

6. 二次流通支援サービスのご紹介

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 オークネットグループ企業ストラテジックインサイトでは、一般企業様におけるリユースビジネスの立ち上げを支援するサービス『Selloop』をご提供しています。 クイックかつローリスクなリユースビジネスの立ち上げを、ビジネス設計のコンサルティングや各種開発・制作の代行、業務BPOによって実現します。 ご興味のある方は、Selloop webサイトよりお気軽にご相談ください。

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