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SDGs時代の新たな小売モデル『サーキュラーコマース』とは?

この記事は、消費者に直接商品を販売している(あるいは販売強化を試みている)メーカー企業や小売企業において、次のような課題に向き合っている担当者様を対象としています。

  • 顧客関係性の進化(LTVモデルへの転換、ファン育成、D2C化、…)

  • サステナビリティの確立(脱炭素、SDGs対策、ESG投資対策、…)

この記事では、こうした課題を抱える担当者様に向けて、顧客関係性強化/サステナビリティ/収益性を同時に実現する新しい事業モデル『サーキュラーコマース(循環型小売)』をご紹介しています。


メーカー・小売企業の経営環境と課題

市場の変化、他社との競争状況の変化、技術水準の変化、社会の変化…
こうした経営環境の変化を「脅威」ではなく「機会」と捉えて乗りこなしていくことは、企業経営における基本的かつ重要な課題です。昨今の経営環境の目まぐるしい変化には様々な側面があり、様々に語られていますが、特に次の2つの流れに向き合うことは欠かせないでしょう。

  1. 脱炭素
    「SDGs」「ESG投資」といった言葉に象徴されているように、顧客や投資家を含む様々なステークホルダーからの脱炭素要請は高まっています。
    脱炭素に本格的に取り組むにあたって、従来CSRと呼ばれてきたようなコストアウトを伴う活動を超えて、「サステナビリティと事業性の両立」を目指すことが欠かせなくなりつつあります。

  2. 市場の成熟
    モノと情報のあふれる社会の中で、人々はSNSを含むwebからの情報収集により、心から共感できるブランドを選んで購入するようになってきています。それに対して企業は顧客接点を拡張し、リアル・デジタルの垣根を超えて長期的かつ深い関係性を築くことで、顧客を囲い込みLTVモデルで利益を稼ぐ方向にシフトしてきています。こうした高度な顧客獲得競争に対応するための顧客接点の進化も、喫緊の課題といえます。

この記事では、こうした課題を同時に解決するための企業進化の具体的手段として、「一次流通(小売)と二次流通(リユース)の融合」がもたらす可能性にスポットライトを当ててみます。

二次流通と「サステナビリティ」

まず、二次流通がサステナビリティの観点でもたらす効果について、少し解像度を上げて考えてみます。二次流通(リユース)は、「3R」と括られるリデュースやリサイクルと比べても、企業活動のサステナビリティを高める有効な手段です。

二次流通によって商品がファースト・ユーザーからセカンド・ユーザーの手にわたるとき、大きく3つの効果が得られます。

  1. 廃棄の抑制
    商品が捨てられることなく再活用されることで、廃棄品の発生頻度が下がり、廃棄工程に伴うCO2排出を抑制できます。

  2. 製造の抑制
    セカンド・ユーザーが新品ではなくユーズド品を使用することで、製造工程に伴うCO2排出や資源消費を抑制できます。

  3. 「モノのLTV」の最大化
    商品あたりの使用期間(=寿命)が延びることで、商品製造に使われた資源やCO2排出に対して、最大限の価値を引き出すことができます。モノを主語にしたLife Time Valueを最大化しているといえます。

このように、最小限の資源消費やCO2排出から、最大限の価値を引き出すのが二次流通の特徴です。

リサイクルやリデュースもサステナビリティを高めるうえで有効な手段ですが、リサイクルは製品を原材料に還元し、再製造する過程で一定の資源消費やCO2排出が発生する手段です。また、リデュースはそもそもの商品消費を抑制しますが、豊かな経済活動のためにはやみくもにモノを減らせないというのも事実です。そのように考えると、最小限の資源から最大限の価値を引き出す二次流通(リユース)は、環境と経済的な豊かさをうまく両立させられる、優れた手段だといえます。

※ 二次流通のサステナビリティについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

二次流通と「顧客関係性の進化」

二次流通はブランドと顧客の関係性を深め、長期的に継続させることにもつながります。

例えば典型的な例として、メーカー・小売企業が「買取事業」を営む場合を考えてみます。買取を通じて、顧客が購入済みの自社商品を手放す際に接点を持つことができます。このタイミングで新商品をレコメンドしたり、買取を自社ポイントやクーポンを介して行うことで、次回購入を促し他社流出を防ぐことができます(この買取と再販が完全にセットになると、いわゆる「下取り」となります)。
レコメンドの際には、買取品が何であるかという情報から顧客の好みを推測し、それに合った商品を提案することも可能です。

こうした直接的な方法に加え、買取サービス自体を通じてユーザーにとって魅力的な体験を提供することで、ブランドへのロイヤルティを高められる可能性もあります。例えば、買取サービスをユーザー参加型の「脱炭素アクション」として提供し、サステナビリティに関心のあるユーザーの共感を得るなどの方法が考えられます。

二次流通による顧客接点の進化
二次流通による顧客接点の進化

このように、二次流通による新たな顧客接点には、顧客関係性を進化させ、顧客LTVやロイヤルティを高めるポテンシャルがあります。

「サーキュラーコマース」とは

これまで見てきたように、二次流通にはサステナビリティに対する優れた効果があるとともに、一次流通(新品の販売)と組み合わせることで顧客関係性の進化につながるポテンシャルがあります。これらを組み合わせて考えると、一次流通と二次流通を融合させることにより、サステナビリティ/顧客関係性/収益性を同時に成立させられる可能性が見えてきます。

従来の小売を一方通行の「ワンウェイコマース」と呼ぶならば、一次流通と二次流通の融合は「サーキュラーコマース(循環型小売)」と呼べるかと思います。一次流通の顧客に二次流通サービスを提供し、二次流通の顧客に一次流通サービスを再び提供するなかで、商品が企業と顧客の間を循環するような、小売業の新しいビジネスモデルです。

サーキュラーコマース

二次流通サービスの典型例として買取サービスについて触れましたが、レンタルやシェアリング、商品サブスクリプションのようなサービスでも同様の構造が成り立ちます。

実は、昨今の欧米に目を向けると、サーキュラーコマースの実践例が着実に増加しています。そうした事例にご興味がある方は、以下の記事も併せてご覧ください。

サステナビリティに関する機運が高まるにつれ、欧米、あるいは日本においても、二次流通への注目が増してきています。
現代の経営環境におけるメーカー・小売企業の事業進化の形として、サーキュラーコマースは大きなポテンシャルを秘めているのではないでしょうか。

終わりに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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