『こちら、終末停滞委員会。02』感想と考察(?) ~銃痕の天使はこころなのか?
全体的な感想
これ、ホントに2巻?1〇巻の最終巻近くとかじゃなくて?今回はそんな風に思えるくらいの激しい戦闘シーンが繰り広げられていた。前回と同じく今回も、たくさんの個性あふれる組織やキャラが出てきて滅茶苦茶だが、それなのに、「意味わかんねぇよ」みたいな苛立ちを一切感じずに読み進めることができた。文章がすっと頭の中に入っていって、なんの摩擦もなく、ただただ、楽しくて面白くて熱狂して感動して。そんな風に感じられるのはマジでこの人の文章、物語だけなんだよな。それに荻poteさんのイラストも最高だった。躍動感というか空気感というか、今ここで生きてる感みたいなのが出ていて綺麗で可愛すぎる。大好きなライターと大好きな絵師が作り上げている『こちまつ』は俺にとって最高の作品すぎるんだよふざけんな(歓喜)
個別的な感想
さて、この第2巻で焦点が当たっていたのは『Corporations』側の選手――特にケイトリン、それと恋兎だったけど、それと同時にほかのキャラも個性をバチバチに出しながら、物語を動かしていて最高だった。個人的には黒の魔王が好きなのでもっと出してほしい。結局のところ直球に感情ぶつけてくる女の子は最高に可愛いんだよ。というかこちまつのキャラってみんな自分の感情に突き動かされて生きてる感じがして好き。小柴も相変わらず負けず嫌いで、恋愛に疎いところ子供っぽくて可愛かったな。
ケイトリン、あんた、かっこよすぎるぜって話
次はケイトリンについてだけど、彼女は片羽の名前が示す通り、まさしく英雄だったんだろう。沢山の人が彼女のために、命を懸けて恋兎の暗殺に協力し、彼らは皆、ケイトリンを慕って憧れている。それはそれまでに彼女が義務を遂行し続けたが故の結果だった。そうして彼女は、最後の最後の最後まで、諦めずに命を燃やし、恋兎を殺そうとした。それは確かに世界のためではあったけど、本当は、心の奥ではたった一人の少女のためのものだった。かつて助けられなかった未来の少女のためだった。それは愛ゆえにではなくて義務だから。罪だから、なんだろうきっと。30年後の自分を殺すという悲劇から始まった、辛くて苦しい世界の中で懸命に義務のために生きてきて、結局悲願は果たせなかった。それでも彼女はかっこよかった。最後の到達点<エンド>を使うところとか最高に熱かった。いつか報われてほしいよなほんと。
恋兎ひかり強すぎ問題
恋兎ひかりだけ別の世界線のキャラみたいに規格外すぎる。彼女については今後の物語でもっとわかってくるんだろうけど、もうなんかこいつが生きてるだけで、今後どんな強敵が出てきても、全部何とかなる気がしてきた。デウス・エクス・マキナみたいなものなんだよな。実際、冒頭の『匿名者たちの会』での恋兎の議案が「事例1123」なわけだけど、これってフィボナッチ数列で、それは黄金比――別名、神の比と呼ばれるものだし、ホントに神に類する存在だったりするのかな。だから彼女は人間になることを願ったのだろうか。
心葉の銃痕『noapusa』について。
今回は心葉の銃痕がついに判明したわけだけど――これ、ホントに主人公の能力?黒の魔王が彼の銃痕を「こっち側」の能力って言っていたけど、ホントにその通りで、主人公がこんな工夫も成長の余地もなく、自分の魂を危険にさらすだけの自己犠牲的な博打の能力って――そんなことあるんだ。まぁそれも仕方がないというか、彼の自己犠牲というか、滅私的な心が願うのはそういうものにならざるを得ないんだろうな。でも、ホント、これ、今後どうなるんだ?銃痕って途中で変わったりしなさそうだし、黄金の獅子と囁き屋がメインになっていくのかな。
あとは銃痕の名前――『noapusa』について。調べるとこれはフリー音源らしい。過去作に使われたことあったかなと思って何となく、過去作のフォルダを適当に開いていたら、『Sessions!!-少女を監禁する事情-』のmovieフォルダの中に答えがあった。ファイル名はtensi_ed.wmv。つまりジンとこころの物語である『HAPPYEND STORY』のエンディング。関係ないけどここに企画・シナリオ藍縁黄縁って書いてて今と漢字違ったんだな。閑話休題。『noapusa』がジンとこころの物語のエンディングに使われていたということから、単純に考えると心葉の魂はジンで、銃痕の天使の魂はこころということになるんだろうか。実際こころと同じように銃痕の天使も青い目をしていたし。そうだったら熱いけどどうなんだろ。他の作品でも使われてたりしたっけな。
銃痕の使い過ぎについて
今回、銃痕は使えば使うほど反現実性に侵されるということが明かされたけど、これって、具体的にはどうなることなんだろう。主客逆転の現象って言っていたから、銃痕を使うのではなく、銃痕に使われるってことになるんだろうけど。銃痕は渇望を叶えるものだから、渇望を叶えるためにその使用者を利用するってことになる。それって銃痕によって使用者が変容させられることも含むのでは?つまり、その結果として終末が生まれてしまうこともあるのでは?実際のところはどうなのかわからんけどありそうではある。
過去作とのつながりについて
今回は『It was a human』を彷彿とさせるケイトリンの台詞が多かった。でもケイトリンと虎魚とのつながりはそれ以外では見えてこないし、おそらく象徴程度の意味合いなのだろう。自らの罪と相対すること。それを倒して自分に同化すること。そういった点が類似していて、だから同じような表現を使った。自分を殺したという点でも似ているしね。蒼だとか黒だとかも同じく象徴程度の意味合いのように思えるけど、蒼の巨人っぽいのは『It was a human』とかCienの『奇跡論のエッダ――白いうさぎと蒼の巨人』で出てきていたし、黒の魔王が心葉のことを運命だとか言っていて、心葉も何となくそんなことを感じていたから何かありそう。黒の魔王の台詞と似たようなことを『It was a human』の虎魚が言っていたけど関係あんのかな。『It was a human』の『貴方』がジンの魂だとすると、そこで虎魚と関係しているし、一応辻褄は合うけどどうなんだろう。あと『巨匠』が蒼は「戦いと冒険の象徴」だとか「彼方の宇宙の奇跡の輝き」だとか言っていて、明らかに何か知っていそうなのが気になる。黒の魔王が普通の生徒から終末になった原因が明らかにされていないし、そこに『巨匠』が関わっていたのか。あるいは魔術師らしく、アカシックレコード的なものにアクセスして知ったのか。
学園あるのって3の倍数の地区だよねって話と結語
大して意味ないのかもしれないけど、学園のある地区が全部3の倍数なのが地味に気になる。3といえば三位一体みたいなとこあるけど、関係あんのかな。でも、アメリアが新しく学園作ったら3つじゃなくなっちゃうな。あるいはただ、天空にあるから地上からすれば神の国だよね程度の意味なのか。3の倍数理論が妥当するならアリシアの創る学園は第3地区か第15地区になりそう。
他にも小柴やシーハンの過去やら、とある第6地区の生徒が黒の魔王になった所以やら、200年前に復興しなくちゃいけないようなことがあったこととか、銃痕の天使の台詞とか、恋兎に『桜の残影』を渡した天使は誰とか、アメリアの心の声の意味とか、『巨匠』がLunaのことを鎖って言っていた理由とか気になることがたくさんあったので次回も楽しみだ。というか第3巻今年の冬とか早すぎだろ。ゲームも同時に作ってんのに、筆が速すぎない?それでこのクオリティなんだもんなわけわかんねぇよ。というわけで次回も期待してます。