魔導人形は深き者どもの夢を見るか⑧
誰もが何者かになりたくて
何者にもなれずに消えていく
最初から自分は自分でしかなくて
どんなに見た目や形を変えたところで
本質の部分は何一つ変わらない
翼があっても空は飛べず。
水掻きがあっても海を泳げず。
地面に縛られ続けている私達は何者なのか。
地下牢で見たのは自分とそっくりな黒い羽を持った生き物だった。
初めてみた同胞。
だが、明確に違うのは彼ら彼女らには個性がなかった。
知性がないといってもいい。
この地に幽閉されているうちに退化したのだろうか。
かつて先生だったものの中には、深きもの達の一族の記憶が微かに刻まれていた。
人類が誕生する以前の、遥か昔から文明を築いていた彼等は、私達の一族と共存していた。
しかし、ある日を境に彼等の信仰している神との関係が変化し、決別することになった。
黒き羽をもつものは、深きもの達に迫害されたのだった。
同時に、自分に関する大事な記憶が呼び覚まされた。
私達一族の羽は空を飛ぶためのものではなく、異なる世界を超越するためのものだという。
行き先こそ自由に選べないものの、私が望めば別の世界にも移行できる。
ただ、私にとって正しき世界は先生と共存している世界だ。
私達より上位の存在によって、それはことごとく妨害されている。
もし、それが叶うのならば私は何度でも夢を見続けようとおもう。
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