魔導人形は深き者どもの夢をみるか③
海が近づいているはずなのに、景色はどんどん灰色に染まっていく。
大きな工場の敷地が連なっており、何度もフェンスに阻まれる。
「まるで迷路みたい」
「増築や改築を繰り返していくうちに統一感を失っていく」
海に出ようとしていたのに、ぐるりと迂回させられて、元の場所に戻ってきていた。
敷石は、波打って地下に続いていく。
「すみません、変な事に付き合わせてしまって」
「信じられないけど、君の言っていた通りになったな」
「先生は、長い変な夢を視ているんだと思っていてください」
「そうか」
「昔からそう。遠ざけておきたいものほど、こちら側に引き寄せてしまう」
地下に続く階段の先は地獄にまで繋がっていそうなくらいだ。
ただ深いという訳ではなく、あきらかに異質な感覚に囚われる。
地下鉄の入口とは違い、歪みきっている。
「中に入ったら戻ってこれないかもしれない」
「それでも行くしかないですね」
「元の世界に戻るために」
産まれた瞬間から、異端者であった。
家族の話す言葉がまったく理解できない。
生物の形や色が生きていた世界とはすこしずつ違っていく。
眠りにつく度に、そのズレはどんどん大きくなっていく。
誰もそのことに気付いていないようだった。
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