見出し画像

不動産投資の「区分マンション」

現代で「区分マンション」の購入は有り?

今、マイホームのマンションは首都圏を中心に価格が高騰し、それにつられて投資用区分マンションも高騰しています。

過去に低い価格帯で区分マンションを購入した方にとって、今は売却の好機でしょう。逆に、今区分マンションを購入するのは高いリスクを伴います。

特に、区分マンションの売主が業者(もしくは三為業者)の場合は注意が必要です。※「三為業者」の詳細はこちらをご参考ください➡ 

区分マンションの物件価格に利益を上回乗せして売却する業者から購入すれば尚更物件価格が高いので、キャッシュフローが赤字になる可能性は極めて高いからです。

それでも一部の投資家様は区分マンションへの投資に意欲があります。理由は、利益を価格に上回乗している業者からすれば「仲介手数料まではいりません」という流れから「仲介手数料0円キャンペーン」に至り、ご属性が高くフルローンで融資が引ければ、諸費用の多くを占める仲介手数料がないので、ほぼ0円で区分マンションが手に入るからです。

誤解が生じないようにお伝えしますと、これらの内容が決して「悪」だとは考えてはいません。

宅建業法違反に該当するわけでもなく、「お客様の利益に繋がるのであれば良し」とする考えもあるかと思います。

但し、現代の高騰したマンション市場では、お客様の利益に繋がるとは考え難い、とお伝えしたいかったのです。

「それは分かっているが区分マンションを購入する価値はある」と思った方はいるのではないでしょうか。

それは何故か、理由はおそらく「損益通算」です。

高額所得の個人に限りますが、不動産投資で区分マンションを購入し損益通算で還付金を狙うのは、給与所得が高ければ高い程、還付金が得られる可能も高くなるので有効だと思われます。

但し、その物件の収支がマイナスであった場合はどうでしょう。

マンションが高騰している現代でも還付金を狙った方が得なのか否かが問われるところです。

「不動産利益」+「還付金」= プラス “OR” マイナス ? 不動産利益編

区分マンションを購入した場合に、「不動産利益」+「還付金」=プラス “OR” マイナス?のどちらになるのか考えてみましょう。

例として、都内区分マンションを購入し10年後に売却した収支シミュレーションを行いました。

まずは、下の不動産が生み出す「不動産利益」を考えてみます。

【物件例(区分マンション)】
・所 在 地:新宿区
・物件価格:9,500万円
・家賃収入:35万円/月(420万円/年)
・表面利回:4.5%
・建物構造:鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造
・築 年 数:20年

【融資条件例】
・融資割合:100%(フルローン)
・金利:2%
・期間:35年
・諸費用約530万円

初めに、不動産利益の「インカムゲイン」について見ていきましょう。

インカムゲイン

家賃収入に対してのストレスとして稼働率95%(空室率5%)の設定を行い、初年度キャッシュフロー(CF)ツリーを記載します。

~ 以下CFツリー ~

  • GPI (満室家賃収入): 420万円/年

  • EGI (95%稼働計算): 399万円 (①×95%)

  • OPEX (運営費用) : △68万円

  • NOI (家賃純収益) : 331万円 (②-③)

  • ADS (借入返済額) :△377万円/年

  • BTCF (税引前CF) :△46万円 (④-⑤)

  • ATCF (税引後CF  :△47万円(住民税△5千円)

そして、家賃収入を毎年1%減で設定し物件を10年間所有した場合のCFは以下の通りです。

2年目ATCF:△51万円
3年目 〃 :△55万円
4年目 〃 :△58万円
5年目 〃 :△62万円
6年目 〃 :△66万円
7年目 〃 :△70万円
8年目 〃 :△74万円
9年目 〃 :△77万円
10年目 〃 :△81万円

よって、10年間のATCF累計(インカムゲイン)は約△645万円となります。

次に不動産利益の「キャピタルゲイン」のシミュレーションを見てみましょう。
※10年後に売却を想定

キャピタルゲイン

初めに売却価格を設定する必要がありますが、不動産投資の場合、投資家様が収益不動産を購入する上で最も重視しているのがやはり表面利回です。そして、設定された利回よりも高い利回りを求めることから価格交渉を行うので、仮に物件価格が1,000万円で表面利回7%(家賃収入70万円)のであれば「7.5%で購入したい」という発想に至り、この場合の購入希望額は・・・

70万円(家賃収入)÷7.5%(希望利回)=933万円(物件価格)です。

ということは、物件価格を計算する公式は以下の通りとなるはずです。

Value(物件価格)=Income(家賃収入)/Rate(利回)

この内容で10年目に売却を想定した場合の売却価格をシミュレーションしてみましょう。現在の表面利回は4.4%ですが、10年後に売れるであろう表面利回を5.1%で設定した場合・・・

・10年目のGPI(家賃収入)383万円÷5.1%(表面利回)=7,492万円(売却価格)
※GPI(満室想定)が420万円ではないのは毎年1%家賃減で設定している為です。

となり、売却益のキャッシュフローツリーは以下の通りとなります。

~CFツリー~
・売却(譲渡)価格 : 7,492万円
・売却時諸費用  : △ 299万円
・借入残債    :△7,424万円
・税引前益(BTCFs): △232万円
・税引後益(ATCFs): △326万円

よって、△326万円がキャピタルゲインとなることが分かりました。

不動産利益(インカムゲイン+キャピタルゲイン)

本物件の購入時に530万円を自己資金として投下しているので、本物件が生み出す利益は以下の通りとなります。

・インカムゲイン :△645万円
・キャピタルゲイン:△326万円
・自己資金    :△530万円
・合  計    :△1,501万円

それでは、次に建物9,500万円の損益通算における還付金をシミュレーションしてみましょう。

「不動産利益」+「還付金」= プラス “OR” マイナス ? 還付金編

まずは10年間の損益を計算する為に、本物件の課税所得を下記に記載させて頂きます。

~課税所得額「NOI-(減価償却+金利)」~
1年目:△348万円
2年目:△323万円
3年目:△321万円
4年目:△164万円
5年目:△164万円
6年目:△164万円
7年目:△163万円
8年目:△163万円
9年目:△162万円
10年目:△161万円

上記の10年間累計課税所得は2,136万円となり、もし所得税+住民税=55%の場合、

2,136万円×55%=1,174万円(還付金概算)となります。

「不動産利益」+「還付金」=プラス “OR” マイナス?の結論

・不動産利益:△1,501万円
・還付金概算: 1,174万円

不動産利益のマイナスが還付金のプラスを上回る為、本物件の保有は非効率という結果になりました。所得税+住民税は最高税率の55%で計算しているので、55%を下回る場合は尚更非効率であることが分かります。

サマリー

区分は1戸の為、入居者が出てしまうと1円も入ってきません。10年間の賃貸経営において365×5%(空室日数)=18日が空室でいられる期間も少し不安要素はあります。おそらく空室が出た場合、最低でも2ヶ月(60日)前後は募集期間になると思いますので・・・

・60日÷365日=16%

以上の空室率で、つまり84%の稼働率で計算する必要がありますので、先程の不動産利益は△1,501万円 ➡ △1,944万円になり、更に還付金との差は広がります。

また、区分マンションの資産性についてですが、建物の評価額を出す際に最も多く利用されている公式は・・・

・建物再調達価格×延床面積×(法定耐用残年数÷法定耐用年数)です。

RC造の場合、建物再調達価格は25万円/㎡前後で計算するケースが多く、仮に延床面積70㎡で計算すると・・・

・25万円/㎡×70㎡×(27年/47年)=1,005万円です。

よって1,005万円が建物価値と思いがちですが、建物は毎年減価償却を行いますので、数年後には簿価が0になり、つまり建物評価も0です。

資産形成で保有したはずの不動産が、重い残債しか残らない「負動産」に化ける瞬間がここにあります。

これに比べて「土地」に簿価は存在しませんので、建物評価が0でも土地評価額があれば、末永く資産として存続します。

区分マンションと比較するのに一戸建がございますが、どちらがオススメかと言うのであれば、土地の所有権がある分、一戸建の保有がオススメです。

損益通算を目的に、毎年赤字を出しながらにして不動産を保有するのはリスクが高いと、言わざるを得ません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?