見出し画像

一棟アパート・一棟マンション、建ぺい率オーバーや容積率オーバーの解消方法!

収益不動産を探している時、「都内!表面利回15%!」みたいな、高利回物件に出くわすことって少なからずありますよね。
 
見つけた時は嬉しい反面、「絶対に何かある」と勘繰る人も多いと思います。
 
そして、その物件のことを調べていくと、「建ぺい率オーバー」「容積率オーバー」というワードに出会い、「やっぱり・・・」と落胆して終わる、ということは誰しも経験のするところではないでしょうか。
 
この「建ぺい率オーバー」や「容積率オーバー」の物件は、融資対象外になる金融機関が多いので、売却時の流動性が低く、結果として価格を下げなければ売れないことから、表面利回が高くなる傾向にあります。
 
でも、もし表面利回15%の物件が「建ぺい率オーバー」や「容積率オーバー」ではなかったとしたらどうでしょう?
 
場所や築年数等の条件にもよりますが、「買い」のシグナルは頭の中で点滅しますよね。
 
今回は、そんな「建ぺい率オーバー」「容積率オーバー」のオーバー解消方法について、いくつかご紹介できればと思います!
 
その前に、まずは「建ぺい率」「容積率」について簡易的に触れておきましょう。

【建ぺい率】
建ぺい率とは、「敷地面積に対する建築面積の割合」です。
敷地面積はわかりますよね、そうです、土地の広さです。
では、建築面積とは?これは建物の真上から垂直に光を当てた時に、陰になる部分を意味し「水平投影面積」とも呼ばれます。

住居系用途地域では、建ぺい率を30~60%に抑えなさい、という建築基準法があり、もし建ぺい率60%で指定されていれば、上の図にある建築面積(ベージュ部分)は、敷地に対して60%に収める必要があります。

例:敷地面積100㎡×60%=建築面積60㎡

※余談ですが「工業専用地域」では、工業の利便性を増進させる地域な為、住宅や共同住宅の建設は不可です。

【容積率】
容積率は「敷地面積に対する延床面積の割合」です。
延床面積とはその名の通り、各階面積(建物全体面積)の延べ(合計)です。

住居系用途地域では、容積率を50~500%に抑えなさい、という建築基準法があり、もし容積率200%で指定されていれば、上図にある延床面積(ベージュ部分)は、敷地に対して200%に収める必要があります。

例:敷地面積100㎡×200%=延床面積200㎡

以上の例でみると、建築面積60㎡、延床面積200㎡を超えてしまっている物件が「建ぺい率オーバー」「容積オーバー」と言われる物件です。

そして、もしこれらの物件を購入したら何かしらのペナルティはあるのでしょうか?

実は、これらの物件を購入したとしても(又は建築したとしても)、役所から解体命令が出るわけでもなく、賃貸であれば入居募集への影響もなく、ペナルティはありません。

特定行政庁(要は役所)からの助言、指導、勧告、是正命令はあるかもしれませんが、解体等の強制執行があった例はほとんどないのです。

よって、実質的には「ペナルティ」は無く、「作ってしまった者勝ち」と言っても大袈裟ではないのが、今の日本における建築業界の現実です。

そして、この行政の曖昧な対応が「建築率オーバー」や「容積率オーバー」の物件を生み出す元凶になっていると、個人的には考えているのですが、行政は特に何もせず、これらの物件を以下の2種類に分けて呼称します。

・既存不適格
・違反建築物

【既存不適格とは】
建築後に何かしらの理由で「建ぺい率」や「容積率」に変更があり、もしくは国に土地の一部を寄贈した、または持って行かれた(以上を収用と呼ぶ)ことで、敷地面積が減少してしまったことにより、建築基準法に適さない物件(建ぺい率オーバー、容積率オーバー)になってしまったことを、既存不適格と呼びます。

【違反建築とは】
建築時の様々な理由で、「建ぺい率」「容積率」を超えて建築をしてしまった、もしくは意図的に「建ぺい率」「容積率」を超える建築をしてしまった物件、のことです。

この2つに該当すると、融資対象外になる金融機関が多いおで、何とか2つに該当しないようにしたいのですが、その為には「建ぺい率オーバー」や「容積率オーバー」を解消しなければなりません。

それでは早速、「建ぺい率オーバー」や「容積率オーバー」の解消方法を見ていきましょう。

【建ぺい率オーバーの解消方法】
はじめに、角地の緩和、というワードを聞いたことはありませんか?

特定行政庁が指定した「角地」であれば、建ぺい率に10%加算してもよい(10%緩和)、という内容です。もし指定されている建ぺい率が60%の地域であれば、70%になります。

10%緩和されると、建築面積にもよりますが、ほぼ建ぺい率オーバーは解消されます。

そして、今まで、10%緩和を受けるには、角地であることと、「防火地域」にある建築物が「耐火建築物」でる場合に限られていましたが、2019年の法改正で、以下に当てはまれば角地と同じく10%緩和が受けられることになりました。

① 「準防火地域」の建築物が「準耐火建築物」または「耐火建築物」である場合

② 特定行政庁が壁面線の指定をし、その線内に建築を行った場合

① の壁面線の位置については複雑な手続きが必要で現実的ではありませんが、②の場合、一棟アパートや、一棟マンション等の共同住宅は、「特殊建築物」扱いになりますので、そもそも、「準耐火構造」以上で建築することが建築基準法で義務付けられています。

よって「建ぺい率オーバー」の一棟アパート、一棟マンションが、もし「準防火地域」内にある場合、10%緩和を受けられる可能性は極めて高くなります。

ここでネックになるのが、果たしてホントに「準耐火構造」以上の建築物で建てられているか否かです。

築30年以上経過している物件であれば微妙に疑わしいですよね。

そんな場合は、検査済証があれば証明できます。検査済証に記載のある準耐火構造等の記録を見つければ問題ありません。

では、検査済証が無い場合はどうでしょうか?

そんな場合には、役所に保管されている「台帳図記載事項証明書」に登録されている検索済の番号及び登録日を確認してください。
共同住宅では、準耐火構造以上での建築が義務付けられている、という建築基準法により、当時検査をクリアして登録されている、ということは準耐火構造以上である、との証明が、台帳記載事項証明書に登録されていればできるはずです。

それも無ければ、知り合いの建築士に頼んで、準耐火構造か耐火構造かの判断を仰ぎましょう。証明するのに時間と費用はかかりますが、やむを得ません。

【容積率オーバー解消方法】
一般的に広く知られているのが以下の内容です。

・地下がある場合、延床面積の1/3を限度に容積率不算入。
・エレベーターの昇降路、共同住宅の廊下、共同住宅の階段、共同住宅のエントランスホールは容積不算入

そして、意外と知られていないのが、宅配ボックスが設置されている部分は容積不算入、ということです。

とはいえ、宅配ボックスを設置するのはエントランスホール部分になるケースが多い為、あまり活用されることは少ないのですが、この宅配ボックスを設置することにより、エントランスホールではない場所を、エントランスホールにできる、という可能性はあります。

しかも、共同住宅のエントランスホールは容積不算入になりますので、宅配ボックスを利用して容積率解消ができるかもしれないのです。
※但しこの場合の設置された宅配ボックス部分は容積算入になりますのでお気を付けください。

例えば、4階建のマンション(階段外付け)で、1階に店舗(クリニック)が入っている場合、
大抵のクリニックでは風除室があります。今ではコロナ禍に対応するべく、消毒液を風除室に置いているクリニックが多いと思います。

風除室イメージ

この風除室を共用部分にできれば、容積率は解消できます。

仮に下図のような風除室があった場合・・・

このままでは、容積率は解消出来ないので、下図のように宅配ボックスを設置します。

このように、今まで店舗面積(風除室)であった部分に宅配ボックスを置くことでエントランスホール(共用部分)へ変更できれば、1階の建築面積が減少し、容積率は解消されます。

【裏ワザ編】
これは、「一戸建」に限るお話ですが、1階~2階へ上がる階段の3段目までは容積不算入です。知っていましたか?建築業界では知っている人は多いと思いますが、不動産業界でこれをご存知の方はいません。※少なくとも私は出会ったことはないです(笑)。

いかがでしょうか。建ぺい率オーバーや容積率オーバーを解消できれば、競合の少ない高利回物件を購入することができるかもしれません。是非、活用してみてください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?