夏の日の思い出 2024/11/09

真夏のピークと言える8月。その12時前後という炎天下のど真ん中、私は法事のために親族と県境の寺に来ていた。お寺というのはエアコンの設備はできないのか、扇風機だけを数台回していた。しかし、お寺は無駄に広さがあったので人がいるところまで風は届いていなかった。それでも、私は勿論親族一同は法事だったため皆礼服を着なければならないと、手首まである袖を通してかっちりと決めていた。寺の住職の妻だろう人がお茶を配ってくれる。お茶を配る際に「汗をかくのであんまり飲まないでください。」と言っていた。飲むなと言うなら渡してくるなよと思いながら、渡されたぶんだけそのままにしておくこともできず飲み干した。真夏日とだけあって気温は当然のように35度を超えて40度台に差し掛かっていた。あまりにも風が来ないので私は待機時間まで手持ちの携帯扇風機を時々回していた。(お経を唱えられている際などは鞄にしまいっていた。)
法事が終わり、私達親族は住職に促されるまま移動した。そこは普通の居間のようになっており、エアコンも機能していた。風もない薄着にもできない苦行の中で、やっと冷風に当たることができた。その瞬間生き返った…と、ホッとしたことを覚えている。暫くは祖母と住職一同が談笑していた。聞いてはいたが特に気に留めてなかったので記憶には残っていない。しかし、談笑を続けていた会話を切っていきなり住職の妻が私を指差しこう言った。「貴方のその持っている携帯扇風機っていうの?よく爆発するんだってね、都会の若い子が持ってるみたいだけど。」私は予想外の言葉に何が起こったのかわからず何も返せなかった。
なんでこの人は突然矛先を向けてきた上に、マイナスなこと言った…?その瞬間過去の記憶が蘇った。彼女は私のことを知らない(正しくは記憶にない)とは思うが、実を言うと私は彼女のことを親族からちらほら情報を得ていた。親戚づきあいのややこしい話が入るので情報は割愛するが、私は彼女を "事情も知らずに外面だけで物事を決めつけ遠回しな毒を吐く人" と認識していた。無神経に的はずれなことを言う人も確かに世の中にはいるが、この人の場合は故意に毒づいているし、それが通常であると思われる証言もあった。まぁ、その情報通りの人物だとすれば、突然悪口を言いたくなって私を指差したのだろう。その後も彼女は止まらずに「◯◯さんのご家族にこんな方居たんですね?」のようなことも笑いながら言っていた。その姿は堰き止められてた川の水が溢れだすようだった。自分が初対面と思ってる人間に、こんなにも失礼だなと思うことを言い放てる人っているんだ。色々自分の中で理解を深めても残るものは "唖然" だった。
扇風機の件は勿論だが、水分を摂るなというのも頭が昭和の時代で時間が止まっているのだろうか…と思ってしまっていた上にこの仕打ちだった。情報が更新されない環境下で特に変化もない田舎で退屈しているんだろうな…そして都会かぶれの馬鹿女を目撃するなど、自分の辞書を捲っても出てこない情報に新鮮味が増したのだろう…。田舎にはまだまだこんなモンスターがぞろぞろいるのかもしれない。二度と会うことは無いだろうが有難う、私は田舎に帰りたくない理由をまた一つ見つけてしまったよ。

恐らくこの人は思ったことを耐えて耐えて、耐えきれずに吐き出してしまうそんな性格をしているんだな。いい大人は何か思ってもそこは堪えて一旦持ち帰るんだよ。一生その寺から出ないでね、おばさん。

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