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第6夜【真空と無重力と機動戦士】

緊張の中、最初に届いた修正用原画カットを見て、目をひん剥いた…。
地球からPANし落下するルナツーへ、そこに登場するギラドーガ、向かうジェガン2機。監督が「アポジモーター」というメモをコンテに記した真にそのカットだった。

似ても似つかないメカデザイン…全く足りない原画枚数…奥のシャボン玉爆発…。コンテを拡大コピーしたのを、そのままトレースしただけのようなラフな原画だった。
メカデザインが似ても似つかないのじゃ、バーニアをなおすっていったって、メカ本体からデザイン状に描き直さなきゃ無理だ。
そしてコンテには、ギラドーガの見せ芝居とある…。

「最初だから腕試しされてるのかな?」そう思った。

奥のシャボン玉は良しとして、全原画を描き直し、加えた。
黄色一色の修正用紙は、まだ自分の手元に届かず白の動画用紙にマーカーで
いちいち修正印をつけるのが手間だった。
書き文字も、両作画監督のスタジオ気風なのか?とても小さく、
最初のうちは自分の動画への指示書きも、それより小さくと気遣った。

メカデザインに多数のバーニア口はあるものの演技させたい肝心な挙動箇所に無い…。幸いメカデザインには、何に使うかわからない謎の穴が結構空いているので、全部バーニア口(アポジモーター)ってことでいいや。
プラモデルも売るだろうギラドーガという事で、折り畳み式盾とそこに付属するパンツァーファーストまで見せて芝居。…でもね、盾に火薬兵器仕込むって本末転倒…盾の意味がなくない?
こんな兵器開発社は廃業である(笑)と初回、担当時点から思ってた。
たぶん盾に剣を仕込むオーラバトラーから飛ばした発想なのかな?
どうしても、雑念が沸くが、

あとはO作画監督に任せよう…。

次に開けたのが説明を受けたアクシズへのミサイル集中砲火だ。
この原画も、ひょろひょろと十数機のミサイルがエアブラシの煙を引きながら飛んでいくだけのものだった。その部分のコンテには、最初にミサイル、続いてビーム、そしてバルカン砲との全力射撃の記述…。
イメージしたのはファーストガンダムⅢのア・バオア・クーへの集中砲火、しかし、規模がわからないので、かなりのセル分けをして、演出でもO作画監督でも、セルのプライオリティで抜くなり調整してもらえばいいや、
と全部描きなおし加えた。後ろ向きからのミサイルとビームの書き分け、その一点に頭は偏っていた。(このカットは後悔を残す)

真空中の煙は、自分が知る限りアポロ搭載のバギー車が月面を走る土煙フィルムくらいしかなかった。結構、サラっとした感じ。それに無重力という条件を加えた宇宙での爆発は丸くなると提起されたのは、故・石黒昇さんだと思ったが、そのふたつくらいしか想像元は無かった。

無重力。これはアポロ宇宙飛行士やスペースシャトル内外映像がある。
しかし、あのまったり感を、そのまま再現したのでは宇宙空間での機動戦士、兵器としては役立たない。
この未来では、もっと機敏に動作制御可能な技術があるはずだ。

その次に開けたカットは、核ミサイルを迎撃するためにアクシズの前に立ちふさがるギュネイのヤクトドーガ。たった一枚の立ち絵しかなくて、黄色い修正用紙に矢印が書いてある…。こっちからIN気味にって事か…?
ここにこそ、アポジモーター挙動芝居が要るなと思い、IN気味から制動、
そしてアクシズを後ろに立ちふさがる芝居を描き加えた。
つまらない小カットだが少し自己満足を覚えた。

ジェガンの初やられシーン…。デザイン画どおりに絵は描かれているもののビームが当たって即爆発。そうじゃないだろうと、ビームが貫通、のけぞるリアクション演技を加え爆発させた。

有料部分は第一担当シーンのメカとビームについて。

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