第7夜【火だるまバーニア】
帯で描かれてる対空砲火を、一基一基のミサイル、一弾一弾のビームに描きかえる、背景フォローの中では目に残らないかもしれないな…。縫うように避けるレズン機。
ちょっと大変だが、まぁこのペースならと思ってたら…。
急に予告編含むカットが追加。
自分よりメカ作画経験豊富なサンライズの原画陣だから…。
と思っていたが、劇場用としては原画枚数が少なすぎる。
流石に最初のメカデザインからして違うっていうのは無くなったが、
INを追加したり、中原画を入れたり、リアクションを入れたりした。
(そうでないとバーニア制御が描けない)
火だるまバーニアのメカ作画も多く、噴射炎を小さくしようとすると
バーニアで隠れていた部分のメカの描き起こしもしなきゃならない。
予告用のアルパアジールが正面に放つビームは全て描き起こした。
サザビーが被弾したヤクトドーガを上空に助けるシーンで
「演出指示でヤクトドーガを大きくしてくれ」とあったので、
それは原画リテイクであって自分の仕事じゃないだろう…?
とバーニアと上空での光のみを直し、取りに来た制作にその旨伝え返した。
しかし、自分のところに届く修正カットは弾幕のように後を絶たなかった…。遅れて届くミサイル等のデザイン画。何種類ものミサイル設定がされているが、どれが艦体のどこから射出されるミサイルなのかは全く記載が無い。もう適当に、その中でこっちで選んで描き起こしていった。
そんな中でも、ガンダムへの欲はあるから、レズン含むギラドーガのリーダーが行動する前には部下機に合図を送るような作画も加えていったし、銃のリアクションなどをいれるゆとりがまだあった。
ギラドーガ部隊が手前にやって来る。
ここはアポジモーターの見せどころだからと、先頭機が盾で合図の演技を加え、4機編隊が下駄を捨て、手前に来ては右下、右下、中央へと機動性を見せるよう描きかえる。
対するジェガン部隊、手前に来て、右へ左へ上へ下へ急速に方向転換をする描写に変え、ケーラ機が中央に入って来るようにした。
グループDのリーダーから電話がかかってきた。
彼は昔の麻雀仲間で、サンライズ傘下の仕事が長く今回の逆シャアの原画も担当していた。そのグループ内の動画担当者がアクシズへの集中砲火のカットを動画作業しているという…。
そして「仙波君、奥に行ったミサイルは点でいいんじゃないか?」と聞かれた。ハっとした、ミサイルとビームを描き分けるというのに頭がいっぱいだったが、確かにその通りだ…。
ビームだろうが、ミサイルだろうが、奥は光点でいい。俺は何をやってるんだろう?と思った…。「送り返して!」と言ったが「もう、途中までやってるから」と言われた…。
最終チェックはどうなってんだ?
<オマケ回想。そこから数年前のある夜、田無のグループD麻雀卓>
グループDのK「仙波君?あれからメカ描いたんか?」
仙波「サジタリウスで戦闘機描いた…。」
製作進行J「プシュ~ッ!」(伊功氏のパイロットポーズで麻雀牌引く音)
スタジオSのM「…。」
グループDのK「今度、ガンダムの続編はじまるんだが一緒にやらないか?」
仙波「はぁ?誰が作りたいの?ヤマトの二の舞がオチじゃん…。」
製作進行J「プシュ~ッ!」
スタジオSのM「…。」
グループDのK「株の70%握られて、どうにもならんらしいがや…」
仙波「へぇ…そうなんだ…プラモのライン?厳しいね~」
製作進行J「プシュ~ッ!」
スタジオSのM「そんな事より、俺のツレが広告代理店初めて、スキー場にモ デル二人連れてって夜はそのまま…羨ましくない?へへ…」
グループDのK「お前は、そっち行けばいいがや」
仙波「俺もそう思う、行け行け!」
製作進行J「プシュ~ッ!…それがいいがや」
スタジオSのM「そんな…。」
元に戻り…制作ディスク(制作長)が、カットを回収に来て、
「仕上げ(セル化)が線を拾いきれないので、バーニアやビームを簡略化してください」と申し込まれた。動画、仕上げで略してよいと言ったが、意味が伝わらないようだし自分としても方南町の仕事と板挟みで、簡略化は良い方向だと思って修正提出した。
すると翌日、O作画監督から電話が入り「仙波君、なんで簡略化したの?」とクレームが入った。
「やっぱダメなのか?」再び回収に来た制作ディスクに、その旨を伝えると電話を貸してくれと、しばらくO作画監督と制作ディスクの押し問答…。
制作ディスクは電話をガチャ切りし、修正上がり分のカットを持って帰った。