第11夜【増えた修正屋?】
サザビーの拡散ビームの作画設定を作ってくれと言われUプロデューサーに渡した。
この頃になると、サンライズ側で作画修正をある程度行っているのか?メカの影を直してあったり、
爆発に関しては煙のフォルムをもつ修正が黄色の修正用紙に描かれて届きはじめた。「何処まで修正していいものか?」悩みが複雑化する。
それらは規則性のある作業ではなく、飛び飛びに直してあったり、なかったりカット毎にまちまちで、なんでこのカットが無修正で、こっちは修正されてるのか等、謎だらけだった。
爆発に関しては、当初、O作画監督との話し合いで真空間だから、なるべくフォルムをもたない方がいいとしたが、
「できる限りで直して」と言われてスルーしたものが、そのままフィルムになっていたので劇場物としては、このくらい描き込みのある方がいいよな…。と受け止めた。
影に関しては、その下のモビルスーツを直したり、原画その物を描き変えなきゃならない物もあった。そして双方とも全体の秒数から、一つの現象としてタイムシートをいじったり、前後に絵を加えたりもした。
ケーラを失った直後のフィンファンネルは、アムロの感情が暴発するようビーム発射に、「泣きのファンネル」みたいなリアクション作画に変えた。
「秒数を変えるな」それは重い言葉だが、監督だって人間だろう…どうしたもんか。2カットをしばらく保留した。できれば、その2カットの秒数を交換したかった。
一つはギュネイのヤクトドーガからファンネルが射出するシーン、秒数が長すぎる。
もう一つは、レズンが死にギラドーガが爆発するシーン。秒数が短すぎる…。
ファンネルは高速兵器だ。戦闘中の発射に時間はかからない、
この秒数は演出的にスローモーションを意図した物なんだろうか?
前後のコンテを見てもそうは思えない。
バーンと盾から射出し、ファンネルが羽を開くまでの動作のタメで秒数を費やす事にした。(しかし、一番奥のファンネルが動画組を間違えたか、機体の奥に無いような…)
担当で最初に作画したのがレズンであったから、レズンの死はちょっと特別な感情を抱いた。
兼用カットの被弾するシーンは派手派手しく爆炎を飛ばすとこまで描いたが…。手は止まった。
コンテには、ギラドーガの手が爆発でなまめかしく飛んでカメラに被さるとあった。
爆発はすでに他者の手で修正されており、その規模からしても、
秒数的に手がカメラに被さるまでのアップにするには無理があると思えた。
まして、なまめかしくというスロー描写はパースの付き方からして無理だし、レズン機は背景に溶け込んでしまうという弱点がある。
ここは、火だるまバーニア現象を逆手に取り、爆風内でなまめかしく飛ぶ、レズン機の手という描写に変えた。
なまめかしくは全て動画ラフを入れ込んだ。アップという指示は捨てた。
修正用に受け取る原画は、前半シーンだったり、中盤だったりしながら、徐々に後半が増す。
タイムシート裏に、監督と助監督のメモが行きかってたりする。
監督の字で「こうすればセル枚数少なくできるでしょ」。
そういうのを見て、これから後半の山場作画だってのに、
今更、セル枚数超過を気にしなくちゃいけないんだろうか?と考え込んだりもした。
自分はセル枚数を削減する作画法も知っているが、
原画時に今時の撮影ならやってくれる程度なクロス引き等を、
監督は認めない人だと第一担当原画時に理解していた。