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地獄のオルフェウス/春馬さんがおしえてくれたこと



共演者:大竹しのぶさん/水川あさみさん/三田和代さん



25才、初のストレートプレイ(舞台劇)に挑む/大竹しのぶさんとともに主演


イギリスの世界的演出家、フィリップ・ブリーンと出会い実現した舞台。
その4年後には、『罪と罰』(2019)に抜擢されている。




公演日程
2015年5月7日ー31日 東京・渋谷のシアターコクーン

    6月6日ー14日 大阪・森ノ宮ピロティホール

ストーリー

1950年代のアメリカ南部が舞台です。そのありふれた町の洋品雑貨店に僕の演じるヴァルはふらりと現れるんですが、彼が放つ違和感が波紋のように広がっていって、人々の欲望を触発していきます。
ただ、そんなヴァルも結局は一人の男だったんだな、っていう描き方が、すごく面白くかんじました。

『婦人公論』2015.5.12日号




原作:テネシー・ウィリアムズⅡ『地獄のオルフェウス』(2015)早川書房
Kindle:電子書籍あり
(現在、書籍は入手できない状態)
ー戯曲形式で書かれてあり、非常によみやすかったです。観劇された方も、この戯曲本をよむことで鮮やかに舞台がよみがえる、といわれていましたー

DVD『蛇皮の服を着た男』(1960)/マーロン・ブランド
(役柄:ヴァルという名のギター弾き、旧習深い田舎の町に着いた流れ者)
ー舞台を観ていない人は、DVDを先にみたほうがいいようにおもいました。とくに、ヴァルとレイデイの緊迫感のある会話のやりとりや、その背景が視覚的につかめます。春馬さんも、ながらく廃盤であったにもかかわらず事前に観賞していたそうですー

マーロン・ブランド、カッコよかったです。でもあのくぐもった感じのしゃべり方を舞台でやろうとしても、後ろの席までは届かないしな、って(笑い)

SPUR BUZZ 2015年6月号


ダイジェスト版(3分)



ヴァル艶のエピソード

大竹しのぶさんがいわれていた、稽古のおわりになるにつれ共演した女性たちの肌の艶が増すことを指して、「ヴァル艶」。ファンのあいだでは通説になっています。
そして、ヴァルのころはちょうど、春馬さん自身が内面をふかく見つめていたことばが書かれている、写真集『ふれる』発刊(3月発売)の時期とかさなりますね。


ブログより

1.note はるよこ「地獄のオルフェウスで初めてのストレートプレイに挑む!」2023.2.2 (10代からのファン)
「あの魅力的な大竹しのぶさんとも共演するようになったんだね!がんばってきたね!と思い、嬉しさが倍増する」/「ストーリーはアメリカでのイタリア移民に対する差別。戦争やむごさについて、春馬くんが伝えたかったことを何年も経ってからだけど受け取ることができたよ」

2.ameba blog 春恋☆Letters 2015.5-6「大好きなヴァルを忘れない」
一連の動作がめっちゃ美しいのです。細やか、色っぽさ、2人が繊細な感情の揺れを、息ぴったりに表現している/本当にこの姿が映像化されずに、あと数回でもう観られなくなってしまうなんてねえ。ヴァルは…この「地獄のオルフェウス」は永久保存版にぜひともしていただきたいです

3.ameba blog Dear Haruma* 2015.5.22「地獄のオルフェウス 天国の草に魅了されて・・・涙目」
天国の草を歌うシーンで、歌も詰まり、袖で涙をぬぐってた…。歌声に、歌う姿に酔いしれました。/千秋楽のあいさつでしのぶさんが、「この作品の感動を、ぜひ、10年くらいは心に残しておいてください」みたいなことをいわれました。忘れずに覚えておきたいです
 

4.浪漫@kaido kanata 2015.6.12  若いころから恐るべき演技派と評された大竹しのぶさんを相手に、堂々と渡り合っている春馬氏に大絶賛を送ります

5.ココログ「エンタメ三昧coco2の喝采ステージ」2015.5.9
とにかく大竹が圧巻。なんて振り幅が大きいんだろう。登場シーンのふてぶてしさでまず舞台を制圧。年下の男にひかれていく過程は可愛く、コミカルだ。
対するストレートプレイ初という三浦は線が細く、映画のマーロン・ブランドのような野性味はないものの、むしろ怯えた感じが、幼いころからの厳しい境遇を思わせて引きつける。三浦が語る「足のない鳥」の寄る辺なさ、「天国の草」のギター弾き語りも胸に染みます




阪清和さんの劇評


阪清和さんは、「エンタメ批評家」として見つめてきた『地獄のオルフェウス』と『キンキーブーツ』と『罪と罰』の3つの舞台について、発信されています。
その分析は、多角的でありつつ温かみを感じさせてくれるものとして、深くこころに残り、折にふれて読み返している文章でもあります。


「地獄のオルフェウス」での三浦は、ストレートプレイに真摯に向き合い、複雑な要素を持ったヴァルを懸命に表現していた。なによりその懐の深さに驚かされた。

元来の陽性の部分はヴァルが自由や希望の象徴であることを描き出すのを助けているし、その裏にある苦悩や、自らの殻を破ろうとする内側からの力の表現は、三浦がいかに豊かな表現力を秘めているかを証明している。

それは単に演技力というだけでは片づけられない、何か特別なものである。
日本を代表する女優である大竹しのぶとがっぷり四つに演技をぶつけ合う姿は、ブリーンばかりか、大竹の心をも魅了した。

note  阪清和 2020.8.2




インタビュー


1.『地獄のオルフェウス』について語る(2015年の動画より)

・作品との出会い「すごいおもしろいなって思ったんです。登場人物の悩みだったり、ぬぐい切れない過去を背負っている、そういう人たちの痛みがこの戯曲にはあるんじゃないか、と思ったのが最初の印象ですね」

・自分の役(ヴァル)について「彼は自分の哲学をもっていて、彼が話すセリフを、そこに合った気持ちや痛みを、きちんと置いていけたらいいなって」

・演出家フイリップ・ブリーンについて「けいこ初日に、この戯曲についての説明をしてくださった。立ったら立ったで箇所箇所を止めて丁寧に教えてくれるんですよね」

・この作品の魅力「生きるうえでの苦しみだったりとか業だったりとか、希望だったりとかが渦巻くなかでの、やっぱり最後には素直な気持ちがそこにあったから、あ、2人が一緒にいたんだとか、それをうまく届けられるように頑張って稽古に励みたいと思います」


2.「FLIX」2015 年6月号
ー共通するキーワードとしてー

・ぺソア詩集からの発言ー2014年主演映画『真夜中の五分前』の中に出てくる(むずかしい)ぺソアのことば。春馬さんはじぶんのものとして咀嚼していたのですねー
「愛されることを求めるあまり苦しむのだから、自分の中に閉じ込めなさい。自分でいることに徹するべきだと言っている。ただ希望は捨てちゃいけないなと思っている。そういうことを超越した出会いや思いやりはきっと存在する」

・地獄のオルフェウス
ヴァルが放つセリフがとても興味深い。「親しくなるためには触れ合うべきだと思っていた。けれど、触れればどんどん他人になっていく」…ヴァルは他人に夢を見させてしまう人なんじゃないかって。


ー春馬さんはインタビューの機会に、役や設定についての語りをとおして、あれ、これって自身の思いをつたえているのかな、とおもわせられる発言がよくあります。意識してか、無意識かはわかりませんが。
でも、だから春馬さんのインタビューを今こうして読んでいくと、すこしでも春馬さんの考えていたことに近づけるような気がしていますー




ドラマ・映画と、密なスケジュールの中で舞台挑戦


2013-2014 新境地を開いたドラマ「ラスト♡シンデレラ」につづく、「僕のいた時間」では、難病の役づくりのためみずから体重を、筋肉をつけずに10キロ落とすなど過酷な状況で挑んだ(この2つで第51回ギャラクシー賞ー放送批評懇談会主催ーを受ける)。そのほか、殺人偏差値70・キャプテンハーロック(声優/ヤマ役)・真夜中の五分前(全編中国ロケと中国語の習得)。そして2015には進撃の巨人、2016.1-3 放映の「わたしを離さないで」などがある。


地獄のオルフェウス 天国の草

(劇中、3度歌う)



♬ 思い出す天の野原 昼の空は澄み渡り 踏みしめたあの甘き草 寂しい星は夜空めぐり 今しがた 地に降りた俺を産んで泣いた母 

遥か遠く歩いても 戻れない天の野原 ここには無い あの甘き草 ♬



言葉


演出家フイリップ・ブリーン
大竹しのぶさんから訃報を聞いた時のことば。「心の中を嵐が吹き荒れているようで、言葉がみつからない」

大竹しのぶさん 
2020.7.19 instagram
「イギリスの演出家のフィリップを中心に、私たちはモノを作り上げる同士になった。毎日毎日、より良い芝居を作り上げることに皆で必死になった。
そして思いっきり笑って、悩んで、一緒に喜んでいた。みんな春馬が大好きだった。」

2022.2.27 NHKラジオ第一「大竹しのぶのスピーカーズコーナー」
「たぶん何年たっても、彼の美しい外見だけでなく美しい心、私たち春馬を知った人はもう絶対忘れることはできないと思うので」




おわりに



もっと自分はできそうだと勇気をくれた作品ではあります。もっと貪欲に芝居を突き詰めれば、より多くの人の心を動かせるんだと板の上で感じましたし。
それはフィリップもそうですけど、大竹しのぶさんが引き出してくれたのがすごく大きくあったと思います。

.週刊女性PRIME 2018年11月13日


春馬さんはいつも、「今までやったことのない役」を求めているといっていたから、この一作にもどれほどの可能性と情熱をかけていたのか、と想像してしまいます。
けっして「器用でない」からこそ、全身全霊でとりくむその軌跡に、多くの華をのこせたのではないかとおもいました。

ヴァルの台詞に、『30は若くない、15から死ぬほど遊んで暮らせば!』とあります。子役のころからまっすぐに走り続けた、中身の濃い春馬さんの30年をかさねずにはいられませんでした。

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