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結婚は宝くじに当たるようなものと聞いたが実際はどうよ8話


 休日ー
風子はスマートホンで、地元の結婚相談所を検索していた。
「ブライダルカンパニーからは、連絡ないし、他にも相談所あるなら登録しようかな?」
しばらく探していると、隣町で一年くらい前に開設した相談所をみつけた。
「マリッジクラブ!?」
入会金20000円、月会費5000円、婚活パーティーも行っていると書いてある。
「うーん。」
しばらく考え、連絡することにする。
「はい、マリッジクラブです。」
オーナーの女性が、電話に出た。
「インターネットで見て、電話したのですが。」
緊張しながら、話す風子。
「そうなんですね。私は、オーナーの千田(ちだ)といいます。よろしければ、数週間後に行われるパーティーに出ませんか?」
「え?」
いきなり、パーティーのお誘いがきた。
「入会しなくて良いですので、お見合いパーティーの人数が足りないんです。参加費だけで、結構ですので」
戸惑う、風子。
「開設したばかりだから、お試しで紹介もさせていただいております。」
「・・・はい、わかりました。」
ーーまあ、いやだったら、辞めればいいかな?
軽い気持ちで了承する。
「ありがとうございます、いきなりパーティーと言っても不安だと思いますので、一度、私と喫茶店でお会いしませんか?」
「あ、はい、そうして頂けると私も助かります。」
「では、今週末の土曜日に、夜の7時喫茶ベルで話しませんか?」
「はい、わかりました。」
ドキドキしながら、電話を切る。
オーナーは女性で、ブライダルカンパニーのオーナーよりは若く感じた。
 それから、数日後ー
南国風の木造りの二階建てのカフェで、オーナーの千田と会った。
千田は、ショートカットでスカートのスーツを着て、高級ブランドバッグを持っていた。
「はじめまして、千田です。」
「はい、はじめまして、桜田です。」
お互いに、カフェオレのホットを頼んだ。
「入会しなくても、お相手を探すためにプロフィールを書いてください。」
「はい。」
簡易的な書類にプロフィールを風子が書く。
「桜田さんは看護師をしているんですね。」
「あ、はい。」
「実は、私も看護師をしてまして、私は老人保健施設で働いてます。桜田さんは病棟勤務ですか?」
「はい、同業者なんですね。そうなんですよ、私は病棟勤務で夜勤もしています。」
千田はカフェオレを一気に飲んで言った。
「私、将来は結婚相談所を主人とやろうと思ってまして、開設したばかりなんですよ。
今はまだ、かけだして食べていけないので、看護師と平行してやってます。」
風子はお冷やを飲む。
「そうなんですかー」
千田は両手を組んで、テーブルに両肘をついた。
「看護師って、男性に人気なんですよ。実は一人、あなたより年下だけど、紹介したい方がいるんですよ。」
「はぁ。」
気の抜けた言葉が出る。
千田は高級ブランドバッグから、一枚の用紙を出して風子に見せた。
「助平悦男(すけべいえつお)さん、28歳、普通の会社員、突然だけど、このあと、ちらっと会いませんか?」
「え?」
ーーお試しみたいに言っていたけど、紹介も本当にしてくれるんだ?
「いやなら、断って良いし、悪い話ではないと思いますけど。」
「わかりました。」
結局、会うことにした風子。
「じゃあ、彼は10分後くらいに来ますから」
と、パーティーの日時と場所を書いた書類を置いて、
「じゃあ、パーティーで待ってますね。」
「えっ!?」
去っていく千田。
ーーえっ?いきなり、ふたりで合うの??
ボーゼンとしていると、数分後に悦男がきた。
「桜田さんですか?助平です、よろしくお願いいたします」
ニコニコと笑っているが、目は風子を頭から足先までなめ回すように見てくる悦男。
ーーなんか、気持ち悪いんですけど。
悦男のルックスは、刈り上げの坊っちゃん風、男性にしては低い身長にお腹がぽっこりでた中年体型で、ジーパンに上はジャージという、センスがない服装だった。
「はい、そうです。」
ウェイトレスが悦男に注文を聞きに来た。
「ビッグコーラ~フロート」
如何にも頼みそう物を、頼んでいた。
「桜田さんはカラオケをしますか?僕は最近、アニメの主題歌ばかり歌ってますよー」
「本当に僕は1日も早く結婚したいんですよー」
「寂しくて、寂しくて婚姻届の書き方も勉強しましたよー」
と一方的に話をしだした。
ーーは?婚姻届を書く練習??
コーラフロートが届くと、信じられない速さで一気飲みした。
「ぷふぁ、げっぷ」
口を押さえずゲップをすると、どこかの工務店の名前が入ったフェイスタオルをズボンのポケットから出して、額の汗を拭いている。
「ところでさ、明日、婚姻届ださない?」
「は?」
風子は宇宙人と話している気持ちになる。
「私はあなたのことなんにも、しらないけど?」
蔑む表情で悦男を見る。
「じゃあ、やっちまえば良いじゃん?」
眉をハの字にして、困惑する風子。
「やっちまう?なにを?」
「男と女がやることっていったら、エッチしかないじゃん!」
ーーああ、やっぱり、そういうこと。
「具合が悪くなったので、帰らせていただきますね。」
コーヒー代をテープルに置いて、去っていく風子。
「またねーよい返事待ってるねー」
何故か、満面の笑みで風子を送る悦男。
風子は車に乗り込み、エンジンをかける。
「ありゃ、宇宙人だ!」
と言いながら、帰っていく。
 翌日ー
風子はマリッジクラブのオーナーの千田に、電話をする。
「はい、マリッジクラブです。あ、桜田さん?」
オーナーの千田が電話に出た。
「こんにちは、先日会った助平さんの件ですけど・・・」
「あら、良い返事かしら?」
ため息をつく、風子。
「すいません、その逆です。明日、入籍しましょうとか、エッチしましょうとか、セクハラされました。無理です!」
少し、イライラしながら伝えた。
「ええっ!?」
かなり驚いている様子の千田。
「ごめんなさいね。本人に確認します。でも、パーティーには来てくださいね。」
「・・・わかりました。」
電話を切って、ベッドに倒れ込む風子。
レモンが飛んできて、風子の顔にとまる。
「ピィー!」
雄叫びのようになく。
 数日後ー
個人でやっている喫茶店で、マリッジクラブが企画したお見合いパーティーに参加する準備をする風子。
久々にスカートをはいて、おしゃれをする。
「よし!今度こそ、良い人見つけるぞ!!」
車で数十分の場所に向かう。
到着すると、駐車場に車を停めて、車から降りて、胸に手を当てて深呼吸する。
緊張しながら、喫茶店のドアを開ける。
「いらっしゃいませ!」
店のオーナーが挨拶する。
店内にマリッジクラブのオーナー夫妻がいて、「あ、桜田さん、こっちです。」
と風子を案内する。
席はくじ引きで決められて、席につく。
席に着くと、目の前に座っている男性は、あるお笑い芸人ににていた。
その隣の男性は、下を向いて何も話さない。
風子の隣の女性は、ブランドバッグを持って美人でスタイルが良い女性だった、30代後半くらいにみえた。
その女性が口を開いた。
「わたしー仲村まのかでーす。よろしくお願いしまーす。」
5〜6人いる男性に、名刺を配っている。
ーー会社の社長さんかな?
と思っていると、名刺をもらった男性の1人が、
「へぇーホステスさんですかー」
と名刺を見ながら呟いた。
「サービスするから、来てね🩷」
ーーえ?お見合いの場で、こんなことするの?
少し、不思議な思いをする風子。
名刺をもらった男性は、引いている。
「そちらの女性は、なんの仕事をしているのですか?」
お笑い芸人に似た、男性が風子に聞いてきた。
「あ、私は看護師をしています。」
風子がそう答えると、芸人に似た男性は積極的に風子に話しかけてくる。
40歳代半ばに見える、禿げてはいないがカッパのような髪型、ぎんぶちメガネに巨漢なルックス。
「俺は竹村隆夫といいます。仕事は工場のパートしています。」
ーーパートかーないな。
風子が見定めていると、ユニクロの紙袋からシワシワのハンカチを出して額の汗を拭く隆夫。
オーナーが来て、隆夫の隣の席にいる下を向いている男性に話をかける。
「お友達がみえてないんですけど、どうしました?」
男性が答える。
「すいません、彼らは今、畑の収穫が忙しくて行けないって言われました。欠席でお願いします。、」 
農家で働いていると言うが、青白い肌にガリガリの身体で覇気がない農家の青年。
ーー農家の人なんだ、この際、農家の人でも、良いかな?看護師辞めたいし。
実は風子の実妹といとこが、農家に嫁いでいる、お金に余裕がある様子で幸せそうにしている。
「あの、農家さんなんですか?」
勇気を出して、その農家青年に話しかける。
「あ、はい、オーナーは親ですけど。」
風子から目を逸らして、答える農家青年。
「今は何を収穫してるのですか?」
「・・・・・」
モゴモゴして、答えない農家青年。
「今の時期はビートですよ。」
何故か、隆夫が答えた。
ユニクロの紙袋から(カバン代わりに使っているらしい)タバコを出して吸う。
「あなた、ご両親と一緒にお店にいらしてね。」
まりかが空気を読まず、農家青年に言う。
ーーこの人、本当に婚活に来たの?
「ライン交換しましょうよ。」
男性数人とライン交換するまのか。
また、風子を含めた女性陣とも交換した。
「みなさん、お待たせしました。もうすでに色々話されている方々もいらっしゃるみたいですが、まず、自己紹介を1人ずつしてください。」
結局、集まった男女は6人のみ。
自己紹介でまのかは、ホステスをしているシングルマザーであると言った。
ビンゴゲームをして、内容が薄いパーティーだった。
オーナーは参加者の橋渡し的な動きをするわけでもなく、オーナーの夫はお飾り状態で、座ってコーヒーをすすっているだけだった。
一方、風子なりに、農業青年に積極的に話しかける。
「今、農業ってトラクターをG P Sで動かすのですよね。すごいですよねー」
風子がそう話しかけるが、
答えるのは全て、隆夫だった。
「そうそう、G P Sで自動で稲刈りしたりしてくれるから、トラクターに乗りながらゲームしている人もいるんですよー」
「あ、そうですかー」
呆れつつ、返答する風子。
農業青年も、
「こちらの方の方が詳しいみたいなので、こちらの方に聞いてください。」
と相手にしない。
そして、誰とも話をしない。
ーー世間知らずの、おぼっちゃまかな?何しにここに来たんだよ?
結局何の収穫もなく、お見合いパーティーは終わった。
ガックリとうなだれ、力を落としながら車を運転して帰る風子。
その途中で、隆夫からしつこくライン電話がかかってくる。
フル無視する風子。
コンビニに寄り、ビック肉まんを3個買い、家でやけ食いする風子。
レモンが飛んできて、涙目の風子の目を、くちばしでつついてくる。
そうして夜はふけていった。

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