見出し画像

「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第18話

ある朝、目が覚めると女の体、それも乃木坂4期生の17人目になっていた✕✕(現世名ː○○)。初の乃木坂工事中の収録。4期生売り込みショー。○○は生田と岩本に紹介をされようとしていた。

--------------------------


設楽「さぁ始まりました乃木坂工事中、司会のバナナマンですおねがいしまーす!」

日村「お願いしま~す」

設楽「そしてそして、乃木坂ちゃんで~す!」

聞きなれた挨拶。

それが画面越しではなく目の前で行われており、自分はそれを正面ではなく真横から眺めている。

これが視聴者ではなく、乃木坂側からの工事中の光景。

○○は自分が視聴者として見ていたころを脳裏に浮かべながら、今の自分の目に映るものに不思議な感覚を抱いていた。

そんな事を考えていると、カメラがこちらに寄ってくる。

メンバーをざーっと写すアレだ。

メンバー達は一瞬自分の前を通るカメラに向かってポーズを決めたり手を振ったり。

××(いつものあれってこんな感じなんだ…。)

設楽「日村さん、本日の企画、お願いします!」

日村「行きましょう!」


「4期生売り込みショー!」


そして拍手が起こる。

設楽「今日は4期の紹介、と。ねぇ、4期生みんな緊張してんね~。」

設楽「清宮もう倒れそうでしょ?」

と、言われ一同が清宮の方を見ると、まだ清宮は涙目になっていた。

清宮「平気です…。」

設楽「大丈夫よ、大園なんて気絶したんだから。」

そこで○○は気づく。

××(あれ、この時の清宮レイって、もっと泣いてたし、言葉も発せない感じになってたよな…?)

あの時、自分が励ましに行ったからだろうか。

特に何も言葉はかけられてはいないものの、あの時自分が駆け寄ったことで、それに気づいた筒井やみんなが寄って励ました。

それによって少しは、歴史を変えることができたのかもしれない。



メンバーの涙を少しでも払拭すること。

後ろ向きな涙を流させないこと。

それが、○○が乃木坂としてやっていくにあたって立てた目標。

それを少しは、果たせたのかもしれない。


スタッフ「はい、ここで一回カットします!」

スタッフの声でスタジオの雰囲気が一瞬変わる。というか、緩む。

オンエアではここでナレーターによる企画説明が入る。

スタッフ「じゃあここから順番に紹介行きます、まず、新内さん、和田さん、そして4期生田村さん、お願いします!」

田村「はい!」

呼ばれた田村、そして先輩陣から新内眞衣と和田まあやが指定の位置に着いた。

スタッフ「はい、じゃあ設楽さん、進行を…!」

どうやらカメラは一回回し始めると回しっぱなしらしい。

後から編集でこういう裏をカットするようだ。

そういえば、スタンバイ中のハプニングなんかがオンエアに載ることもあった気がする。

設楽「ではまず最初のメンバー、田村、行ってみましょう!どうぞ!」

田村「はい、埼玉県出身、20歳の、田村真佑です。よろしくお願いします。」

日村さんが文字にも起こせないガヤなんかを立てながらスタジオが拍手をする。

4期生紹介がスタートした。

--------------------------



新内「四国の県を四つ!Tから始まる…。」

田村「たちつ…。」

日村「徳島じゃない!」

白石・飛鳥「…うん?」

高山「…日村さーん!!💢」


遠藤「顔芸が好きで…!」

日村「あ、顔が好きなんだ~。」

ベシッ

秋元「顔が好きじゃない…。」

「ハハハ…!」

またスタジオに笑いが起きる。

あらかじめ展開を知っている✕✕でも全て素直に笑っていた。

さすがバナナマンだ。

田村がバイト時代をパフォーマンスし、遠藤がクラリネットを吹き、賀喜が自前のイラストを披露し、金川がバスケをして見せて、北川が流暢な英語を披露した。

そしていよいよ、○○の番。

スタッフ「はい、じゃあ次、生田さん、岩本さん、○○さん、お願いします。」

○○「はい。」

生田と岩本が紹介者の位置に立ち、○○は中心に立つ…直前に生田たちの下に駆け寄り、耳打ちする。

○○(大丈夫なんでしょうね…?私二個目の紹介要素知らないですよ…。)

生田(大丈夫大丈夫!心配しないで!)

生田が誇らしげな顔で目くばせをする。

✕✕(本当に平気なんだろうか…。)

しぶしぶ○○は中心に立つ。

設楽「では続いてのメンバー、○○、お願いします!」

○○「はい、東京都出身、高校二年生、17歳の、○○ ○○です。よろしくお願いします。」

○○はお辞儀をする。

日村「はーいお願いしまーす!」

生田「早速なんですが、○○ちゃん、特技は何ですか?」

○○「アクロバットが、得意です…!」

設楽「アクロバット!?」

日村「アクロバットなんてできるんだ~!」

生田「じゃあ早速、ここでちょっと技を、何か披露してもらってもいいですか?」

設楽「え、大丈夫なの?がっつりローファー履いてるけど?」

○○「あ、全然大丈夫です…。」

自然と語尾が小さくなってしまう。

何せ目の前にいるのはあのバナナマンなのだ。

それに今は地上波で流れる番組の収録中。

今の自分の姿が全国に放映される。

そう考えると表情筋から全身の筋肉すべてが硬直する。

いや、厳密には自分の姿、ではないが。

○○「いきます。」

そうして○○が披露したのは、バク宙。

バク転は後ろに跳んだ後、手をつき、その手でまた体を持ち上げて跳んで今度は足で着地する。バク宙はこの手の過程を省略する。足で跳んだら一回転してまた足で着地する。

問題なく成功。メンバーとバナナマンから「おおっ!」と声が上がる。

もう怪我も何も問題ない。

北川の方を見ると、ほっとしたようにこちらに微笑んでいた。

問題はここから。

この先何をするのかを○○は聞いていない。

生田「さぁ、そしてここでこの○○ちゃんに、ゲームに挑戦してもらおうと思いまーす!」

✕✕(…ん?)

生田「ということで、こんなものを用意しました!お願いしまーす!」

そういってスタッフが台車に乗せて運んできたのは、三貫の中トロ。

○○「…寿司?」

岩本「題して、ロシアンルーレット~!」

生田「イエーイ!」

○○はただただ困惑している。

生田「さぁ、この中に一つだけ大量のワサビが入ったお寿司があります!それをひかなければクリア、と!」

設楽「あれ、待って生田、俺ら寄りの一番手前のやつさ、なんか緑色のがはみ出してんだけど…。」

設楽が若干笑いながら指摘する。

○○が腰をひねってそちら側から眺めてみると、確かに緑色のものがシャリとネタの間から大きくはみ出していた。

間違いなくこれが、ワサビ入り。

しかもはみ出すレベルで大量に入っている。

この企画は破綻か…?

と、○○は思っていた。

ところが…。

生田「えー?わからないですねー。気のせいじゃないですかねぇ?」

生田はへたくそなおすまし顔でごまかす。

生田「ねぇ蓮加ちゃん、何も見えないよね?」

岩本「なんにも見えないです!」

そして生田は笑いながら○○に向き直る。

生田「さぁ、○○ちゃん、どれを食べますか?」

ここですべてを察したバナナマンの二人は口元を手で押さえうっすらと笑い始める。

メンバーの一部からも笑いが漏れる。

逆にすべてを察した○○の表情はだんだんと硬ったものになっていく。

✕✕(生田さんこいつ…!)

✕✕(やりやがったなぁぁっ!!??)

はみ出したワサビ、ここまでが生田の計算だったのだ。

✕✕(かんっぜんに嵌められた!最悪だこの先輩!)

この先輩は自分に「バラエティをやれ」と遠回しに強いてきているのだ。

○○は懇願するように寿司と生田岩本を見る。

生田は何かを訴えるようにこちらを見ている。

隣ではすでにゲラを発動した岩本が台本を置く台に突っ伏して笑っている。

もう選択肢がないのは明らかだった。

○○「…これにします。」

そういってワサビ入りの寿司を手に取る。

設楽「おおマジ!?それいく!」

生田「ふふっ…ではどうぞ!」

○○「…いただきます…。」


寿司を口に入れる○○。

そして案の定…、


○○「~~~~~~~~~~~!!!!!!!」


口を閉じたまま悲鳴を上げてのたうち回る。

日村「おっと、ワサビ入りだぁ!!」

日村の実況が聞こえたが頭に入らない。

✕✕(辛い辛い辛い!!どんだけ入れたんだこれぇ!!)

するとそこへスタッフがコップに水を入れてやってくる。

設楽「生田!水持って行ってあげて!」

○○も口を押えながらコップと生田に駆け寄る。

ところが生田は受け取ったコップの水を一気に飲み干してしまった。

設楽「飲んじゃった!飲んじゃったよ!生田!」

○○「✕※○△~~~~~~!!!!!」

言葉にならない喚きとともにその場に崩れ落ちる○○。

設楽は満足そうに笑いながらガヤを入れる。

そしてまたスタッフがコップに水を入れて持ってくる。

今度は岩本が受け取りに行く。

設楽「おいなに飲んでんだよ生田!岩本、持ってってやれ!」

そして岩本もまた水をグイッと飲み始めた。

お約束。

設楽「また飲んじゃった!岩本も飲んじゃった!」

○○「んんんんーーーーーー!!!」

✕✕(このクソガキがぁぁぁっ!!!!)

--------------------------

そして、ようやく水をもらえた○○。

生田「はい、見たとおり、○○ちゃんはリアクションが抜群に良くてですね、打ち合わせの時に扉が勢いよくあいたときなんかもすごい良いリアクションをしていたんですよ!」

設楽「あぁ、はいはいなるほどね~。そっからこれ思いついたんだ。」

岩本「はい、ということで、以上、○○ ○○ちゃんの紹介でした~!」

✕✕(こいつら…覚えてろよ…!)

カメラの写らないところで、二人をにらむ○○だった。




--------------------------

スタッフ「ちょっとテープチェンジ入りまーす!しばらくお待ちくださーい!」

矢久保「〇ちゃん、大丈夫?凄かったね…。」

○○「最悪だよ…。」

柴田「でもいいリアクションだったよ~?」

疲労困憊で席に着く〇〇が周りの4期生と話をしていると…。

「✕✕さーん!!」

○○「!? はい!」

スタジオが静まり返る。

スタッフ「えと…、✕✕さんを呼んだんですけど…○○さん?」

○○「えっ…?あっ…。」

✕✕スタッフ「あーい、なに~?」

すぐに✕✕と呼ばれたスタッフが呼びかけに応じ、そこで○○は自分がやらかした事態を把握した。

✕✕(突然呼ばれたものだからつい反応してしまった…。)

○○「いやぁ、なんか聞き間違えちゃったみたいです、すいません…。」

設楽「○○と✕✕ってだいぶ名前違うだろ、どうやったら聞き間違えるんだよ?」

設楽のツッコミにスタジオが笑いに包まれる。

○○「ハハ、すいません…。」


「おい✕✕!!!!ちょっとこっち来い!!」

○○「は、はい!!」

今度は下の名前が呼ばれた。しかも大声で。

今度は驚いた○○は座っていて椅子が倒れる勢いで立ち上がってしまった。

スタッフ✕✕「うぃ、なんすか~?…え?」

スタッフ「ん…?なんで○○ちゃんが返事するんだい?」

○○「え、あ…。ごめんなさい、また聞き間違えちゃいました…。」

設楽「おいおい○○またかよ~?やばくない?」

と、またスタジオが笑いに包まれる。

○○「…。」

ばつが悪そうに座りなおす○○。

そんな中で…。

?「…?」

怪訝そうに首をひねって○○を見ているあるメンバーの姿があった…。



第18話 終

続く


--------------------------

いつもは3000字なのですが今回は4000字台でちょっと長めにしました。

みなさまどうでしたか?

特に読みにくいなどの声がなければこのくらいの長さでこれからも行こうと思います。

あ、マシュマロで感想や、何かアドバイスや指摘なんかでも、お気軽にお寄せいただけると幸いです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?