「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第22話
ある朝、目が覚めると女の体、しかも乃木坂4期生になっていた✕✕(現世名:○○)。いよいよ7th year birth day live が幕開く。
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桜井「さぁ、7th year birth day live、楽しんでいきましょう!せーの!」
のー!ぎゅー!ぎゅっ!せーの!努力!感謝!笑顔!うちらは乃木坂上り坂!46!
スタッフやメンバーから拍手が起こる。
✕✕(すげぇ、本物の乃木坂の円陣に入っちゃってるよ…。)
○○は他の四期生と並んで拍手しながら感激していた。
鳴り響くOverture。
轟く歓声。
先輩達がオーラを纏ってステージへと上がる。
4期生は冒頭数曲に参加した後MCパートではけ、後は中盤の出番以外はモニターを眺めるのみ。
しかし、4期生一同はその中盤の出番に全身全霊を注ぎ込んで今日まで練習を重ねてきた。
出番が少ないからこそ、入ったばかりだからこそ、恥ずかしいパフォーマンスは許されない。
自分たちの見せ場はそこしかない。
1日目、「水玉模様」、「サイコキネシスの可能性」。
2日目、「ないものねだり」。
3日目、「自分のこと」。
どれも今は卒業した先輩達の歌う思い入れと人気の強い楽曲達だった。
それを一時とはいえ担う責任を持って歌った。
そして4日目。
この日は歌う曲が3曲と、この3日より少し多かった。
いや、それでも先輩達の歌う曲よりはだいぶ少ないのだが。
「傾斜する」、「強がる蕾」、そして「転がった鐘を鳴らせ!」。
しっかり歌うことができただろうか。
「転がった鐘を鳴らせ!」はしっかり盛り上げることができただろうか。
自分の印象をしっかりファンの人達に残すことができただろうか。
誰もがそんなことを考えていた。
そして、最後の「転がった鐘を鳴らせ!」が終わった後は、秋元真夏と高山一実のMCのもと、4期生達の自己紹介パートが行われた。
遠藤「愛知県出身、高校2年生の、遠藤さくらです、よろしくお願いします。」
賀喜「栃木県出身、高校2年生、賀喜遥香です、よろしくお願いします!」
自己紹介のたびにペンライトが振られ、歓声が上がる。
この数日ひしひしと感じていたが、お見立て会とはやはり規模が違う。
××(……。)
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《××の世界》
××はこの時、本当はこの7th year birthday Liveのライブ会場にいた。
遠藤(愛知県出身、高校2年生の、遠藤さくらです、よろしくお願いします。)
賀喜(栃木県出身、高校2年生、賀喜遥香です、よろしくお願いします!)
××(あぁ、3期の新中3組に続いてまた同い年が乃木坂に…。しかもめっちゃ可愛いし…。)
筒井「愛知県出身、中学2年生、14歳の筒井あやめです。よろしくお願いします。」
✕✕(中2!?って、俺の3個下…?…おいおい、冗談だろ…。)
✕✕(俺より生きている年月が3年も短い人間がこんなでっかいステージに立ってるのに…。それに比べて俺は勉強も部活も中途半端で、特技とかもなんにもなくて…。)
✕✕(…俺は……。)
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思えばあの頃くらいだっただろうか。
自分がメンバーと自身を比べて劣等感を抱いたり、嫉妬心を抱き始めるようになったのは。
3期生にも同い年や年下はいたのだが、✕✕がファンになった時にはすでに3期がいたからか、なぜか4期が入って来た時からそういった思考が芽生え始めた。
そう考えると今の自分は、異質とはいえなりたかったものになれている。
そう○○は考えていた。
・
・
・
秋元「じゃあ次、○○ ○○ちゃん!」
○○「はーい!…えー、東京都出身、○○ ○○です、よろしくお願いします…!」
うおおおー……!
○ちゃーーーん!!
○○は心底安心した。
ここで自分だけ歓声が少なかったり、そもそも声が上がらなかったらどうしようかなどと考えていたから。
実際はそんなことはなかった。
目の前のファンの人たちは○○が抱える事情など察せるはずもなく、ただ4期生の1人として、暖かく迎え入れてくれた。
大きな会場を埋め尽くすペンライト。
それらが自分に向けて振られているという、この感覚。
この歓声は、或いは自分を推してくれている人達は、この○○のビジュアルを見てだろうか、それとも、××の演じる○○としての立ち振る舞いを見てだろうか。
何はともあれ。
○○の4期生としての活動は、始まったばかり。
メンバーやファンの笑顔のために頑張りたい。
一方で、自分がいつまで○○でいられるかもわからない。
この夢が、いつ覚めるかわからない。
今を精一杯やろう。
○○は、いや。××は今一度気を引き締めた。
××(にしても、メンバー目線だと座席のファンなんてみんなごちゃごちゃした有象無象に見えるかと思ってたけど、メンバーが言う通りホントに一人一人の顔とか推しメンタオルがよく見えるな…。)
他のメンバーが自己紹介を続ける中、××はそんなことを考えていたのだが。
途中であることに気がつく。
××(そういえば…この日の俺の席は…確か向こうのほうだったよな…?)
○○は、元の世界でこの日自分がいた座席の方向を向いた。
「そこの座席にいるのは果たして自分自身なのか?それとも、別の誰かなのか?」
今の自分がどういう状態なのかを把握する上では、重要な要素だった。
並行世界に迷い込んだのか、或いは時間軸に何かしらの変化が起こって生まれが変わったのか。
○○のこの日の席は、いわゆる天空と呼ばれるもので、結構な高所。
中々ステージからは視認がしにくい席だったが、じっくりと見れば何となくは見えてくるもので。
しかし、○○が目を向けた座席のエリアには、××自身の姿はなかった。
該当する人物は見当たらなかった。
××(俺が、いない…。)
××(やっぱり俺は…この世界にはいないのか…?)
自然と自分の顔が険しくなっていることに気がつき、慌てて首を振る。
××(ダメだダメだ、今はライブに集中…!)
秋元「はい、これで4期生全員の自己紹介が終わりました〜!皆さん4期生のことをよろしくお願いしま〜す!」
4期生「「よろしくお願いします!!」」
○○「よろしくお願いします!」
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そして、Live最終日。
4日目は、西野七瀬の卒業コンサートが行われた日だった。
前述の通り、4期生の出番はあまり多くはなかったが、偉大に先輩の卒業する舞台に同席できたことを、4期生一同、もちろん○○も誇りに思っていた。
美しい晴れ舞台だった。
舞台裏のモニターから西野がパフォーマンスをする様子をしばらく見ていたが、本当に自分の出番を忘れかけるほどの、壮観な景色。
一面の、緑と白のサイリウム。
メンバーは卒業前が一番綺麗とはよく言ったもので。
ものすごく綺麗だった。
これが、一期生の、7年間乃木坂を駆け抜けたエース級メンバーのパフォーマンス。
観覧するだけだったファンの頃とは違う、
レッスンの過酷さやパフォーマンスの難しさをよく知った後で見るそれは、視点や感覚が大きく違った。
果たして、自分はこうなれるのか?
そんなことを考えた時、ふと同じようにモニターを見ていた遠藤と賀喜の姿が目に入る。
××(いや、でも、出来るようになったやつもいるんだもんな…。)
××が○○として生きるための、一つの目標を見た気がした。
そして、最後の最後。
メンバー達が1人数秒程度、西野と絡んでから舞台裏に捌ける場面があった。
そして、○○の番。
女になってわかった、とてもとても煌びやかなドレスを纏った西野。
そんな西野が手を振ってくれる。
○○と目があった途端、少しだけ西野の目の色が変わった。
「お、あの時の」というような意志が易く読み取れた。
××(…覚えててくれたんだ。)
○○は4期生のお見立て会の時、西野から舞台に上がるための洋服をもらっていた。
絡みこそ少ないものの、恩義のある立派な先輩だった。
○○は軽く手を振り返した後、腰を大きく折って礼をした。
そして口パクで
あ り が と う ご ざ い ま し た
と伝えた。
西野はそれを読み取れたようで、満面の笑みで頷いてそれに応えた。
こうして、西野七瀬卒業コンサートは、幕を閉じた。
ライブ終演後。
着替えを済ませ、楽屋周辺を彷徨いていた○○。
「○○ちゃん。」
声をかけられて振り向くと、そこには、ドレスから着替えを済ませた西野がいた。
○○「…西野さん!」
西野「フフッ…どうも〜。」
きょとんとした○○とは対照に、ふわっとした挨拶を返してくる。
○○「もう良いんですか?色々と。先輩達と話したりとか…。」
西野「うん、もう一通り済ませてきたよ。」
○○「えっと…それで、どうしてここに?」
西野「んー、君とお話ししに?」
○○「え、私ですか?」
西野「そうそう。そこ、座ろ?」
○○と西野は、ちょうど側にあったベンチに腰掛ける。
西野「乃木坂の活動は楽しい?」
○○「フッ…ええ、とても。」
西野「今回のライブとかは、どうだった?」
○○「ちょっとビックリすることも大変なことも多かったけど、それ以上に楽しかったです。」
西野「それはよかったよかった。」
○○「まぁ、まだ出番ほとんどなかったんで、もっと本格的に出番が作られるようになったら、大変が勝っちゃうのかなって思ったりもしますけど…。」
西野「ん〜、そこは慣れかな。私も最初は大変だったしね〜。」
○○「へぇ…。」
西野「あ、そうそう、洋服は役に立った?」
それを聞くと、○○は立ち上がって、改めて礼をした。
○○「あ、はい!それはもうとっても!その節はありがとうございました!」
西野「ううん、役に立てたなら嬉しい。」
○○は西野に手で促されて、再びベンチに腰掛ける。
○○「これからも、しばらくは西野さんからいただいた服でやっていけそうだなって思います。」
西野「そっか。」
西野「んー…それでなんだけどね?」
○○「…?はい。」
西野「あなた、何か抱えてるでしょ?」
○○はギョッとした。
一瞬、自分の正体がバレたのかとさえ思った。
西野「悩みとかじゃなくて…うーん、秘密、みたいなの。」
○○「…どうして、そう思うんですか?」
西野「リハの時とかあなたを見てた時、なんとなくそんな感じがした。」
西野「これでもいろんな現場見てきてるし、演技の事も多少知識あるから、多分そこから来る第六感、みたいな?」
○○は驚いていた。
内容こそ見抜かれてないものの、秘密があることを見抜かれた。
○○の中身が、男の××、しかも多分別世界の人間であるという事実。
探られまいと鷹を括っていたが…。
そっか、生半可な演技はプロには見抜かれる事もあるのか…。
○○「ご明察です。でも、他のメンバーに危害が入るような秘密ではないと誓います。」
西野「うん、そんな感じもなんとなくしてた。」
西野「私は今日で卒業だし、無理にその秘密をここで聞き出そうなんてことはしないけどね。」
西野「これから乃木坂をやってくあなたに、先輩としてアドバイス。」
○○「…?」
西野「何かあったら、他の人に頼る事も考えなよ?芸能界でやってくなら、大事なこと。」
西野「特に私たちは、周りにそれが出来る人たちがたくさんいるんだから。」
そこにタイミングよく、一際盛り上がったメンバー達の談笑の声が聞こえる。
○○「…えぇ。ありがとうございます。肝に銘じておきます。」
××(まぁ、中々打ち明けられる事柄じゃないけどね…。)
西野「あ、もうこんな時間…。」
西野「私、そろそろ行くね?」
○○「あ、はい!お疲れ様でした!あ、それと、改めて卒業、おめでとうございます!」
西野「フフッ…ありがとう。
西野「これから頑張ってね。期待してるよ。後輩ちゃん。」
○○は今一度頭を下げ、西野を見送った。
頭を上げると、つい先ほどまでいた西野がつけていたのであろう何かしらの残り香がふわっと漂ってくる。
「○ちゃ〜ん!帰るよ〜!」
○○はそれらの空気を深く吸って深呼吸した後、小さくよしと意気込み、仲間達の元へと歩き出した。
○○「は〜い!今行く〜!」
「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」
第22話 終
続く
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回を増すごとに描写が下手くそになっているというか、文字数に比べて中身がスッカスカな気がしてます…。申し訳ありません。
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