「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第26話
ある朝目が覚めると、女の体、しかも乃木坂46の4期生になっていた××(現世名:○○)。
先日は23枚目シングルに収録される4期生楽曲のフォーメーションが発表された。
○○の位置は、2列目、センター遠藤の裏。
今日は、MV撮影の日。
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現在、朝8時。
ここはとある学校。
今日は4期生楽曲、「四番目の光」のMV撮影日。
〇〇「ふぁあ…。眠い…。」
髪のセットをされながら欠伸をする〇〇。
他のメンバーも眠そうにしてるメンバーがちらほら。
筒井「zzz…。」
田村「あらあら、あやめん立ったまま寝てる…。」
筒井はメイクを直す為に目を瞑ったものの、そのまま眠ってしまっていた。
〇〇「そりゃそうだよ、今日何時集合だと…。」
田村「朝の7時…。」
〇〇「早いって…。」
賀喜「まあまあ、それは私たちだけじゃないし、スタッフさんは私たちよりすごい慌ただしく動いてくれてるから。」
校舎の前、学校のグラウンド、並べられる12の椅子。
自分の分が一つ増えた、✕✕が知る限り11だったはずの椅子。
そして、それらの正面に当たる位置で慌ただしく動くスタッフ一同と大量の機材。
まさしく何かの特典のメイキングなんかで見る映像の撮影現場そのものだった。
監督「じゃあこれから構成の再説明と確認を行いますので、全員集まってもらっていいですか~!」
4期生「はい!」
そして、監督から流れと動きの説明が行われる。
一応事前にざっくりとは聞いていたが、演出の説明というのはイメージだけではどうもわかりにくいもので。
ゆえに、実際に場所や道具を見せながら再度説明を行い、全員のイメージを統一しよう、ということだ。
スタッフ「では早速リハーサルを行いま~す!皆さんスタンバイお願いしま~す!」
4期生「はーい!」
全員が定位置に着くと、椅子に座り、スタッフの合図で音楽が流れる。
今撮影しようとしている場面は、どうしても音楽込みでないと撮れないらしい。
まぁ、これで確かに音楽なしでやっても、のちに編集する段階でずれが生じてしまうだろう。
ちなみに、レコーディングは終えているためこの時流れる音声には4期生たち本人の声と音楽が流れている。
既に音源が出来上がっていたのか。と○○はスタッフの仕事の速さに感心する。
トン、トン、トン…という音が鳴る。
イントロ一秒目から動き出すための3.2.1.というカウントダウンのようなものだ。
流れてきた音楽に合わせて、打ち合わせや練習通りに動く。
ちなみに、今撮影しているのは全員が椅子に座った状態で踊るという場面である。
〜♪
こんなに素敵な場所にいられたことを
誇りに思えるように輝こう
スタッフ「はいOKでーす!確認しまーす!」
一旦全員が脱力し、代わりに裏方のスタッフや監督がカメラとつながったモニターの前で何やら談義中。
脱力した私たちの近くにメイクさんやスタイリストさんが寄ってきて、何人かのメンバーを呼んではメイクや服装などを細かに直していく。
スタイリスト「○○!ちょっと…。」
○○「あ、はーい。」
○○が立ち上がって寄ると、髪には櫛が欠けられ、制服のリボンまで直される。
✕✕(リボンぐらいは自分で直せそうなもんだけどなぁ…子供じゃないんだし…。)
まぁ、これもスタイリストさんなりのこだわりかなと納得する○○。
スタッフ「大丈夫そうですね…じゃあ本番行きまーす!」
その声がかかると、再び現場の雰囲気が引き締まる。
監督「じゃあよーい!スタート!」
監督「はいカット!」
監督とスタッフがまた談義をし始める。
監督「OKです!じゃあ次、椅子をなしにして、Cメロとラスサビ部分やります!行ってみましょう!」
4期生「「はい!」」
MV撮影においていろんな場所、状態で同じ部分を踊ることは珍しくない。
だが、MVではそのフルで踊った内の一部が使われる。
4番目の光を探しに行こう
どこかにきっとあるだろう
私たちの世代だけのその輝き
新しい色になる
映像をこまめに切り替えながら、様々なシチュエーションやシーンをパッチワークのようにつなぎ合わせるパターンの、乃木坂では定番な演出のMVだ。
✕✕もこれには記憶があった。
確か「4番目の光」のMVは、サビなんかはメンバーが躍っている場面が流れるが、サビ前は教室にいるメンバーたちが立ったり座ったりしている状態で歌う場面だったはず。
ということは次は…、
監督「はいOK!皆さんお疲れさまでした!この後は幾つかに分かれて別々のシーンを撮りますので、事前に説明したグループに分かれた後指定の場所で待機していてください!」
四期生「「はい!ありがとうございます!」」
監督「はいこちらこそありがとう。この調子でお願いしますね~。」
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○○「えーっと、俺は誰と一緒だったっけな…。」
??「俺?」
○○「うわっ!?」
田村「ごめんごめん、脅かすつもりじゃなかったんだ。笑」
○○「なんだ、まゆたんか…。」
田村「〇ちゃんは私とかっきーと三人だよ!」
××の世界では4期生が11人だった分、このサビ前のシーンのグループの組み分けは3.3.3.2になっていた。
その「2」の枠が田村と賀喜の2人のみでの撮影。
ところがこの世界では〇〇が12人目として入ったため、ここに〇〇が入り、3.3.3.3の組み分けになったわけだ。
○○「あー。そういえばそうだった。…で、そのかっきーはどこ?見当たらないけど…。」
田村「あー、かっきーならスタッフさんに呼ばれてついていったよ?なんかかっきーだけ別で撮影があるんだって。だから私たちの撮影は最後の方になるらしいよ〜。」
○○「ふーん、なるほどね…。」
田村「かっきーだけソロなんてすごいよね~、どんなの撮るんだろ?」
そういえば「4番目の光」のMVは賀喜が4期生たちの似顔絵を描くところから始まった。おそらくその撮影だろう。
賀喜「まゆた~ん、〇ちゃ~ん!」
田村「かっきー!」
〇〇「お、来た。」
賀喜「お待たせ〜。」
〇〇「絵が上手いとこういうのにも活かせるんだね〜。すごいな〜。」
賀喜「え、何で私が絵を描いてきたこと知ってるの?」
〇〇「えっ!?い、いや、それは…あ!ほら!スタッフさんとかも話してたし、さっきお手洗い行く時に撮影してる様子が見えたからさ!」
賀喜「そう…なんだ?」
〇〇「そうそう!…はは。」
田村(うーん…○ちゃんずっと私と一緒にいたような…。お手洗いなんていってたっけ?……まいっか!)
監督「じゃあ、えー、賀喜さん?が大体この辺に、で、えっと、○○さん?」
○○「はい、○○です!」
監督「うんいい返事。○○さんが、んー、大体ここで!」
○○「はい。ここですね。」
自分たちは新入りな分、まだまだ一部のスタッフやこうしてMV撮影の時なんかのときだけ携わる監督なんかには名前はまだ覚えてもらえていない。
監督「じゃあそのまま三人ともカメラを見て、音源流すのでその通りに歌ってください!」
○○、賀喜、田村「はい!」
監督「じゃ音源OK?OK?はい了解。はいじゃあ本番いきます!」
その声に三人は気を引き締め、姿勢やのどを整える。
♪~
次に4期生たちは再集合したのち、着替えを済ませると、とある教室に集められた。
そこには、色とりどりの布が天井から垂らされ、きれいに装飾がされた、広めの部屋だった。
清宮「うわ!なにここ!すっごい!」
その教室を目にした途端、清宮が我先にと先行し教室へ足を踏み入れて行く。
それに続いて続々と4期生たちが教室へを入っては感嘆の声を上げる。
田村「うわぁ!きれー!」
早川「え、次ここで踊れるの?」
スタッフ「えー、とりあえずここでは曲一本分通しで撮りますので、通しで踊ってください!」
4期生「はい!」
真面目に返事をしながらも、MVならではのしゃれた風景の現場にみんなのテンションは上がっていた。
✕✕(俺の記憶が確かで今回も何も変わらないなら、通しで踊ってもあんまりその映像使わないだろうに…。)
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光は愛~♪
~♪………
監督「はいオッケーです!」
スタッフ「以上で今回のMV撮影は以上になります!お疲れさまでした!」
4期生「「ありがとうございました!」」
こうして、○○が入った新たな形での「4番目の光」のMVの撮影は終了した。
○○は自分の着ている制服を見つめ、周りでねぎらいあう4期生たちを見つめ、ひとつため息をついた。
✕✕(…俺。)
本当に乃木坂46になったんだな。
もうこうして活動してきて、何度思ったことかわからない。
すべての経験が、前の世界で✕✕として生きていた時を含めて、初めてのことばかりなのだ。
それら一つ一つが、○○の肉体に、中にある✕✕の魂に、乃木坂4期生であるという事実をひしひしと感じさせる刺激だった。
清宮「わっ!〇ちゃん、お疲れさま!」
○○「うおっ!?ビックリした…。脅かすなよぉ…。」
清宮「ごめんごめん、なんかぼーっとしてたからさ~。」
田村「というか今の〇ちゃんのリアクション受けるんだけど!」
金川「きゃっ、じゃなくて、うおっ、て言ったもんね!」
○○「かーらかわないのー!もう~!」
賀喜「…〇ちゃん、ちょっといい?」
○○「うん…?…うん。」
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MVを撮影した木造校舎、校舎裏。
○○は「場所を移そう」と言った賀喜に連れられてここまできた。
○○「どうしたの?こんな人気のないとこなんかに連れてきて。」
賀喜「〇ちゃんさ……」
賀喜「あなた、誰?」
「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」
第26話 終
続く。