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「俺みたいな不細工を好きになる奴がいたら交際0日婚してやるよ!」→なんか来た。

俺は○○。

何の変哲もない社会人である。

社会人というのは、なってみると意外と大変なもので。

仕事5割、私生活3割、趣味2割という、ある程度は趣味に回せるものの結構大変な毎日を送っていた。

こんな日々を送っていると、ときには息抜きが必要になってくるもので。

俺は学生時代の同級生の井上✕✕と一緒に飲みに来ていた。



✕✕「ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…ぷはぁ!くぅ~!うめぇ!」

○○「ずいぶんおっさんじみたな、✕✕。」

✕✕「へへん、俺らだってもう二十歳超えたんだぜ?それなりに年ぐらい取るだろうよ。」

○○「まぁな、こないだまで高校でばかやってたと思ったら、いつのまにやら社会の首輪ぶら下げてお仕事お仕事…。」

○○が自分の首にぶら下がったネクタイをいじりながらつぶやく。

✕✕「そういやお前、これの方はどうよ?」

✕✕が小指を立てながら聞いてくる。

○○「ん?トイレか?」

✕✕「違うわ!わかってんだろ?」

○○「彼女か。俺には無縁だな。高校の頃も全然モテなかったし他の奴らがカップルになっていくところを横目で見てたぐらいだし。お前も知ってんだろ。」

✕✕「でも俺らも成長したし、それなりに大人の顔になったろ。そういう相手、できてもいいんじゃねぇの?」

○○「はっ、俺には一生そんな相手できないね。」

✕✕「一生は言いすぎだろ~!」

○○「いーや!俺みたいな不細工を好きになるやつがいたら交際0日婚してやるよ!そんな奴この世に存在することが貴重だからな!」

✕✕「ほーう、言ったな?」

○○「どういうノリだよ…。笑」

✕✕「いや、べつに?」

○○「まぁまぁ、要するに俺に結婚するような相手ができることは太陽が西から登るくらいの確率だってことさ。」

✕✕「ほう…。」

○○「ん、もういい時間だな、今日はそろそろ解散にしますか。」

✕✕「げ、もうそんなにか。楽しい息抜きの時間はあっという間に終わるよなぁ。」

○○「俺は明日休みだけどお前は明日仕事だろ?明日のお前のためだ。」

○○は✕✕の肩をポンポンと叩く。

✕✕「はぁー、しゃーなしやな。」


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翌日。

○○は今日は仕事は休みだった。

今日はゆっくりしていられる日だ。

そう思いながらソファーに横になってサブスクで映画を見ていると、朝9時半ごろ、自宅のインターホンが鳴る。

ピーンポーン。

○○「んん…なんなんだ、たまの休日に…。宅配なんて頼んでたかな…。」

ピーンポーン。ピーンポーン。

○○「はーい、今出ますよー!」

ガチャっ。

○○「はいはい、どちらさま…。」

そうして玄関の扉を開けると、そこにいたのは、おおよそ10代後半か20代前半程度の、とても美しい可憐な美少女だった。



??「どうも!」


○○「どうも…。」

○○(宅配、ではないよな…?てか可愛っ…。)

○○「あの、どういったご用件で?」


??「はい!あなたと結婚しに来ました!」


○○「…。」


バタン!

??「えっ!?」

○○は無言で玄関を閉めた。


扉の向こうでは。

○○「……は?」(今なんて?)

ピーンポーン。


○○「…。」


ガチャっ。


○○「はい。」


??「結婚しに来ました!」


○○「…。」

バタン。


??「…。」


ピーンポーン。

ピンポンピンポンピンポンピンポンピピピピピピーンポーン。


○○「だーーー!!うるせーーー!!」

??「何で閉めるんですか!」

○○「君が初対面なのに開口一番変なこと言うからでしょ!」

??「私何か変なこと言いましたか!?」

○○「言った!めちゃくちゃありえないこと言った!何、やばめの何かの勧誘なの!?」

??「違いますよ!」

○○「じゃあ何!」

??「あなたの嫁です!」

○○「違うでしょ!なんで会ったこともない人が嫁になってるの!」

??「会ったことありますし、あなたが自分で言ったんですよ!」

○○「え、会ったことある?そもそも君誰よ?」

??「和です!井上和!」

○○「井上…井上って、✕✕の妹?和…あー確かにだいぶ昔一緒に遊んだあいつの妹がいたな…。」

??「思い出してくれた!?○○お兄ちゃん!じゃあ結婚しよ!」

○○「ちょ、ちょっと待ってね!?」



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○○「どういうことだ!✕✕!」

✕✕『なんだよ、昨日の今日でいきなり電話してきたと思ったら藪から棒に。』

○○「お前の妹を名乗るやつがうちに来てるんだけど!?しかもいきなり玄関先で求婚してきてる!!」

✕✕『あ、ほんとに行ったんだ。』

〇〇「やっぱりお前何か知ってるな!?」

✕✕「そいつは正真正銘俺の妹の和だよ。俺としてはあんまり昔から変わらないと思ってるんだけど、気づかなかった?」

○○(いや、めちゃくちゃ変わってるし…めちゃくちゃ可愛くなってるし…。)

○○「でなんでその和ちゃんがうちに来てるわけ!?しかも求婚!」

✕✕「いやぁ、和って実はお前のこと昔っから大好きでさ。中高の卒業式にも俺じゃなくてお前目当てで来てたくらいなんだわ。」

○○「確かにすごい話しかけてきてたけど…。」

✕✕「直接会えない間もしつこく俺からお前の話聞いては興奮してたんだぜ?」

○○「へ、へぇ…。」

✕✕「それでお前昨日言ってたろ?『俺みたいな不細工を好きになるやつがいたら交際0日婚してやるよ!』って。それを和に話したらさ……」


和(えっ!○○さんがそんなことを!?ってことは今から私が結婚してくれって言いに行ったら結婚してくれるってことじゃない!キャーーーー!!)


✕✕「って大騒ぎだったから、そんな妹に俺はお前の住所を教えてやっただけだよ。」

○○「何そんなモンスターに居場所教えてんの!?てか勝手に個人情報を流出させるな!
てかどうすんの!?いきなり求婚されて…。住所教えたお前の責任でもあるだろ?それ以前に兄貴だし。」

✕✕「( ̄∇ ̄;)ハッハッハ、あいつのお前への愛は強烈だし、そうなったら俺には止められねぇや。まぁ、いい感じに相手してやってくれや。俺仕事中だし、じゃな!」

プツッ!…ツー…ツー…

○○「待て!おい!おい✕✕!…切りやがった。」

○○は振り向くと、そこには子犬のようにキラキラした目で○○を眺める和がいた。

しっぽが生えてたら多分ものすごい振ってるだろう。

和「ね?全部本当だったでしょ!?私が妹なのも、あなたが私と結婚してくれるのも!ってことで…マイダーリン!!」

和は○○に強く抱き着く。

○○「うおっ!?」

和「すぅ~…はぁ、ようやく飛び込めた愛する人の胸の中…なんて心地いいの…。」

○○「ちょっ、一回離れよ?うん、離れようか。」

和「うん、わかった。」

和が素直に離れる。

○○「え、本気で結婚するつもり?」

和「もちろん!」

○○「俺のどこが好きなの?」

和「ぜーんぶ!」

○○「和ちゃん今何歳?」

和「20歳!」

○○「ならまぁ…いやいやいや…やっぱ無理だ、どうしても現実的に結婚を考えられない…。」

和「なんでよ~!私はこんなに○○さんのこと好きなのに!もしかして、私のことが嫌い、とか…!?Σ(゚д゚lll)ガーン」

○○「いや、そうではないんだけど…。」

和「じゃあ結婚しよ!」

○○「いやだって付き合ってもいないのにさ…。」

和「私は全然気にしないし、べつに赤の他人ってわけでもないじゃないですか!結婚しましょ!」

○○「ごめん、少し考えさせてほしいな…。」

和「そうですか、じゃあお邪魔します!」

○○「え、ちょっとちょっと!え、入ってくるの!?」

和「はい!結論が出るまで待とうと思って!」

○○「少しってそんなに短くないよ!?」

和「ありゃ、じゃあお泊りですね。着替え取ってこなきゃ。」

○○「住むつもり!?」

和「お料理、お掃除、お洗濯、何でもできる完璧な妻になって見せます!いつ○○さんと結婚してもいいように日頃から花嫁修業してたんです!」

○○「そういう問題じゃないんだよなぁ…。」

和「じゃあ何が不満なんです?」

○○「ひ、ひとまずさ、お友達から始めない?」

和「嫌です!同棲からで!」

○○「お友だt」

和「同棲で!」

○○「おt」

和「同棲!」

○○「…わかったよ…。」

和「やったー!新婚生活スタート!」

○○「まだ結婚許可してないからね!?」

和「いいよ!私は結婚しているつもりで暮らすから!これからよろしくね!あなたっ!」ギュッ

○○「あぁ、どうしてこうなった…。」


こうして俺の平穏な日常は、一転しました。



しかし数か月後、本当に俺は和と籍を入れることになってしまうのですが、それはまた先のお話…。






「『俺みたいな不細工を好きになる奴がいたら交際0日婚してやるよ!』→なんか来た。」

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