「星は微かに光り」 第8話
バイオレットグランプリ。〇〇達が所属するバイオレット魔法学園で開催される魔法の大会。
一年生である〇〇と和は予選と本戦の個人戦を勝ち上がり、2人とも決勝戦まで駒を進めた。
まもなく、決勝戦の幕があがる。
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バイオレット学園、カフェテリア。
〇〇、桜、咲月、和の4人で昼食中。
和「あぁ〜…もうお嫁に行けないぃ…。」
咲月「大袈裟だよ、和。」
和「だって、大衆の前であんな醜態を…。」
和は昨日の戦いにて、相手が仕掛けてきた特殊ルールにより、渾身のアイドルを演じたばかりだった。
しかも、羞恥心を断ち切られるという魔法を使われたばかりに、本人の理性のリミッターを外れて、全力で。
桜「可愛かったよ?和ちゃん。」
〇〇「そうそう、恥ずかしがることないって。」
そこまで言って、〇〇は桜、咲月と目を合わせてニヤリと笑う。
〇〇「せーのっ!」
〇〇・咲月・桜「「にゃんにゃんにゃぎ〜!」」
和「やめてぇぇぇ…!!///」
〇〇「アッハッハッハッ!からかいがいあるなぁ井上さん!」
和「うぅ…冨里くん酷いよぉ…。」
○○「ごめんごめん!」
咲月「そういえばさ、2人はいつまで苗字呼びなの?」
〇〇「え?」
咲月「ほら、桜ちゃんも私も〇〇くんのこと下の名前で呼んでるでしょ?和も同じ輪の中にいるのに、和とだけお互い苗字って、なんか距離感ない?」
桜「私も思ってたなぁ、それ。」
〇〇の横で水を飲みながら、桜が賛同する。
〇〇「そんなこと言われてもなぁ…。」
そう言ってチラリと和の方を見ると、少し顔を赤ながら。
和「私は別に、呼び方なんて何でも構わないけど…///」
〇〇「じゃあ「和」って呼んでいい?俺のことも〇〇で良いから。」
和「わ、わかった…〇〇///」
〇〇「和…///」
咲月「ちょっと!何この雰囲気!2人とも顔赤らめないの!」
〇〇「なっ…赤らめてなんかいないし!第一呼び方を突っ込んできたのは咲月だろ!?」
咲月「そ、そうだけどぉ…なんかこう…あれだよ…ゴニョゴニョ…。」
〇〇「え?なんだって?」
咲月「な、何でもない!」
と、そこへ。
??「あの〜、お取り込み中ちょっといいかな?」
一同が振り向くと、そこには、お盆を持った2人の女子生徒。
??「私たちも一緒にお昼食べてもいい?」
??「こんにちは……。」
〇〇「えっと…どちら様?」
和「あー!〇〇くん、賀喜遥香さんに遠藤さくらさんだよ!」
〇〇「うん…?なんかその名前聞き覚えあるような…。」
咲月「ほら、和、〇〇くん、山下さん、久保さんと並んで今回のバイオレットグランプリのファイナリストに勝ち進んだ2人。そして、2年生の四天王の2人だよ。」
〇〇「四天王!………って何だっけ?」
咲月「ズコーッ!!m(__)m」
和「こないだ説明したでしょ!?」
〇〇「アハハ…ごめんごめん、もう一回説明してもらえない?」
和「もう…私たちの学校には、毎年入学試験の上位4人を『四天王』と呼ぶ風習があるの。つまり毎年4人、校内に合計12人いる各学年最強の魔法使い。それが四天王。」
〇〇「へぇ〜、それで、今の2年生のその四天王のうち2人が、この賀喜さんと遠藤さんってわけね。」
さくら「別に…四天王なんて名前ほど大したものじゃないけど…。」
遥香「何言ってんの!さくちゃんは十分強いよ!私が保証する!」
さくら「え〜、かっきーの方が強いよ〜!いっつも尊敬してるよ、かっきー!」
遥香・さくら「「えへへへへ〜(^∇^)」」
〇〇「…ウォッホン!」
遥香・さくら「「あっ…。」」
〇〇「それで、その四天王でファイナリストの2人がどうして俺たちのところに?偵察、にしては堂々としすぎてますけど。」
遥香「偵察だなんてそんな〜。元々このバイオレットグランプリが新学期が始まってすぐに開催されるのは、新入生歓迎とか、学園内の親睦を深めるためにあるの。だから、決勝戦まで残った期待の新入生ちゃん達と仲良くなりたいと思ってね〜!」
さくら「…コクコク(゚-゚)(。。)」
〇〇(この遠藤さんって人は…ずっと賀喜さんの後ろに隠れて同意するだけだけど、さっき賀喜さんと親しそうに喋ってたよな…となるとこの人…。)
和「遠藤さんは人見知りだよ?」
〇〇「えっ?」
さくらのことをじっと眺めていると、突如和から心を見透かしたように和から言われる。
〇〇「よ、よく知ってるね?」
和「私、遠藤さんに憧れてこの学園に入ったの!」
さくら「え、そうなの…?」
和「はい!もう大ファンです!」
さくら「そ、そうなんだ…えへへ、嬉しいな…♪」
和「くぅ〜、可愛い!」
〇〇「…なんか井上…いや、和、キャラ変わってない…?」
咲月「好きなものを見ると性格変わっちゃうタイプなの…ʅ(◞‿◟)ʃ」
和「ささ、遠藤さん、こちらへどうぞ!さっちゃん席変わって!」
咲月「のわっ!?💦」
和は無理矢理咲月をどかして席を変える。
そして空いたスペースをポンポンと叩きさくらに座るよう促した。
さくら「ど、どうも…。」
その態度から咲月の発言が事実であると悟る〇〇。
〇〇「あぁ〜そう…。」
遥香「じゃあ私は、〇〇くんの横に行こうかな?」
〇〇「あ、どうぞどうぞ。桜、ちょっとそっち寄れる?」
桜「はーい。」
空いたスペースに遥香が座り、1列に3人ずつで向かい合った状態になる。
そして何故か、至近距離で〇〇を見つめる、遥香。
遥香「うーん…。」
〇〇「な、何か僕の顔についてますか…?」
〇〇(ち、近い…。)
遥香「中々可愛い顔してるね、〇〇くん♪」
咲月「!?」
桜「!?」
〇〇「は、はい!?」
遥香「あっはっは!冗談だよ!照れちゃって〜!このこの〜!」
〇〇(な、なんだこの人〜!?)
咲月「ほっ…。」
桜(またライバルが増えたかと思った…。)
遥香「皆んなはもう高等部の生活には慣れた?」
和「はい、友達もできて充実しています。」
〇〇「自分はこのバイオレット学園自体初めてなので、色々と新鮮です。」
咲月「私も!」
桜「私もでしゅ。あーむ。」パクッ
遥香「へぇ〜!外部進学の子もいるんだ!」
そこで遥香はハッと何かを思い出したように〇〇を見る。
遥香「あ、そうそう!〇〇くんと桜ちゃんさ、あの週刊ウィザードマガジンの記事ってどこまで本当なの!?白石校長とはどんな関係!?何で白石さんの家に住んでるの!?まさか、本当に隠し子!?」
〇〇「あ、えっと…隠し子は違くて…σ(^_^;)」
〇〇はチラリと桜の方を見る。
桜「話しちゃってもいいんじゃないかな?この人たち、悪い人じゃなさそうだし。それに和も咲月も、今なら受け入れてくれるよ。」
〇〇「うーん…でもまだ、俺の覚悟が決まらないかな…。」
桜「…そっか。」
遥香「え?なんだって!?」
〇〇「いやだから隠し子ではないんですって…縁あってちょっと住まわせてもらってて…。」
さくら「…フフッ。」
〇〇「あ、笑った。」
さくら「えっ?」
〇〇「いや、ずっと気まずそうだったから、やっと打ち解けてきたのかなって。」
さくら「まぁ、多少は…?」
○○「よかった!先輩との距離が縮まった気がして!」
さくら「う、うん…///」
○○がニコッと笑うと、さくらは少しはにかんで顔を伏せる。
遥香「え、さく、もしかして照れてる!?」
さくら「え!?て、照れてないよ!?」
遥香「ほほーう、どうやらかなりのたらしみたいだねぇ、○○く~ん?」
○○「はい…?」
遥香「てか、私とは距離縮めてくれないの!○○くん!」
○○「あなたはすでに距離近すぎです!!いろんな意味で!!」
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遥香「じゃあ、次は決勝戦でね!負けないよ〜?」
さくら「…私も負けないよっ✊グッ」
〇〇「ええ、臨むところです!」
和「さくらさんは私の憧れだけど、だからこそ全力でぶつかります!」
さくら「楽しみにしてるねっ…和ちゃん…!」
和「はぁっ…!可愛いっ…!」
〇〇「…和、本当にあの人と戦える?💧」
美月「ふーん、かっきーとさくちゃんと〇〇くんたちがくっついたか〜。」
史緒里「学年の垣根を超えた交流は良いことじゃん。くぅ〜青春してるなぁ〜。」
美月「私達も負けてられないね!史緒里!」
史緒里「3年生の威厳、後輩たちに見せちゃいますか!」
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パン!パパパン!
小さな煙花火をあげて、開会式が始まる。
生徒は校庭や中庭、教室など学内各地に散らばり、スマホやスクリーンなど、いずれも開会式を映すモニターを眺めている。
レイ『さぁさぁさぁさぁ!!ついにこの日がやってきました!バイオレットグランプリ!けっしょぉぉぉせんっ!!』
おおおおおおおおお!!!!
レイ『残念ながら白石校長は今日は出張でいないのですが…その分私が盛り上げていきますよぉぉぉぉ!!』
レイ『1000人を超える高等部の生徒の中から、今年のバイオレットグランプリの決勝戦に勝ち進んだ強者な生徒たちを紹介しましょう!!』
ねぇねぇ、誰が優勝するかな!
私は山下さんだと思う!クラスSだもん!
いーや、俺は冨里〇〇にかけるね!一年生で決勝戦に進むやつも珍しいし、なんたって白石麻衣の隠し子だぜ?期待するだろ!
それを言うなら井上和だって!あの可愛さで強さも兼ね備えてるとなれば最強だよなぁ〜!優勝してほしい!
学校中が大賑わいで画面を眺めていた。
レイ『まずは3年生!最強の称号クラスSの力を持つ絶対的王者!大地の魔法使い、3年、山下美月〜!!!』
美月「は〜い!やっほ〜!みんな元気〜!?」
場所はバイオレット学園内闘技場。
しかし今日は観客席は無人だ。
そんな闘技場で、美月は廊下の通路から手を振りながら闘技場の中へと歩み出てきた。
レイ『続いては!こちらもクラスSの魔法使い!山下美月と並ぶもう一人の最強候補!3年、久保史緒里!!』
その声とともに、史緒里が一礼をして入場してくる。
一方、会場の廊下。
緊張した面持ちで立つ、和。
和「…。」
??「井上さん。」
和は後方から話しかけられ振り向く。
そこには、白衣を着た男が立っていた。
和「…クレシマ先生。」
クレシマ「どうも。」
この男、クレシマ。
バイオレット魔法学園の教師の一人であり、科学の授業担当。(第二話に登場)
和「どうされたんですか?こんなところで。」
クレシマ「なに、たまたま近くを通りかかったのでね、せっかくなので激励にと。」
和「そうでしたか、ありがとうございます。」
和はペコリと頭を下げる。
クレシマ「健闘を祈りますよ。頑張ってください。」
そう言うと、クレシマは和の肩をポンポンと叩き、クルリと向き直り去っていった。
和「…。」
レイ『さぁ!続いては一年生!!』
和「あ、行かなきゃ…。」
和は入場口のほうへと走っていく。
クレシマ「…フッ。せいぜい頑張ってくださいね。」
レイ『今年の入学試験首席にして圧倒的なビジュアルも誇る才色兼備の美少女!一年生!井上和!』
和「…よし!」
レイ『最後は〜!今大会のダークホース!魔力クラスBにしてまさかの決勝戦出場!白石麻衣の隠し子との噂もある、謎多き青年!一年生!冨里〇〇!』
〇〇『…特に何もしてないのに尾ヒレがすごいな…。』
レイ『これで全選手が出揃いました!ではでは〜!決勝戦!開始っ!!』
「星は微かに光り」 第8話 終
続く