「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第17話
ある朝、目が覚めると女の体、しかも乃木坂46の4期生になっていた✕✕(現世名:〇〇)。初の乃木坂工事中出演の4期生売り込みショーで自分を紹介するのは生田絵梨花と岩本蓮加だと分かって…。
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会議室で対面をして数分、早速収録に向けた打ち合わせが始まる。
生田「さぁ、じゃあ早速、何を武器に売り込んでいくか決めようか」
岩本「お見立て会では何を披露したの?」
○○「あ、お見立て会ではアクロバットの方を…。」
岩本「アクロバット!?凄いね!」
生田「じゃあ一個目の売り込み要素はそれで決まりね~」
生田がメモ用紙に書き込む。
〇〇「あ…。」
それを見て○○は椅子の下でトントンと床を足で小突く。
生田「ん…?どうかした?」
✕✕(うん、もう足のけがは平気だな。でも、今回は技のハードルはさげておこう。)
○○「いえ、何でもありません」
生田「じゃあ、もう一個を決めようか」
○○「ん?もう一個、ですか?」
生田「そうそう、今回アピールポイントは二個決めるようになってるんだよね~」
✕✕(あぁ、そういえばそうだった…。)
確かに、4期生はみんな何かしらの芸を2個行っていたことに✕✕は思い当たる。
✕✕(いや、にしても弱ったな…。)
この体は✕✕のものではない。
何ができるかわからないのだ。
お見立て会の時はそれとなく賀喜に教えてもらって、この○○の特技がアクロバットだとわかったが、それ以外の特技を✕✕は把握していない。
○○「うーん…。」
生田「あー、あんまり浮かばない?」
○○「はい、残念ながら…。」
岩本「何かしらある気がするけどね、ある程度くだらないものでもいいんだよ?」
○○「うーーーーん…。」
やはり、出てこない。
そんな会話をしていると。
生田「あっ!」
何かを思いついたように声を出した。
漫画なら電球マークが頭上に表示されるパターンの顔。
生田「いいの思いついた〜。」
○○「何ですか?」
生田「まぁまぁ、本番の時のお楽しみだよ〜。」
○○「え?本人である私にもですか?」
生田「そうそう、今言っちゃ意味ないからね」
○○「…?」
○○は意味深な笑みを浮かべる生田にただ困惑するばかりだった。
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そして迎えた、収録当日。
楽屋には4期生制服を纏った○○含む4期生たち。
初の工事中出演に色めき立っていた。
賀喜「工事中はずっと見てたからな〜、あのスタジオにこれから立つなんて楽しみ!」
早川「乃木坂って冠番組あったんやなぁ、しかも地上波…。」
掛橋「なんか、緊張する…。」
ギターケースを抱えた掛橋が身震いする。
どうやら楽しみに思うメンバーだけではない、らしい。
××(そういや今日は楽屋がずいぶん静かだな…。いつもならもっと、こう…。)
そう思い周りを見渡すと…
清宮「グスッ…うぅっ…。」
清宮が顔を伏せて泣いていた。
××(そういえば清宮レイは工事中初収録の時は緊張で泣いてたんだったな…。いつもより楽屋が静かなのはそのせいか…。)
いつもは清宮が持ち前の元気で話してくれるので自然と楽屋が賑やかになっていた。
○○「大丈夫?レイちゃん」
清宮「うっ…○ちゃん…私…。」
清宮「カメラが…怖くて…もし変なことしちゃったら…グスッ…。」
××はこの時、ふと大学の講義で言われた言葉を思い出していた。
教授(えー、ではみなさん、想像してください。)
教授(あなたは今落ち込んでいます、すごーく不安です。そんな時、普通に言葉で励まされるのと、背中をさすりながら、プラス言葉で励まされるの、どちらの方があなたの不安は無くなりそうですか?ええ、後者ですよね。)
教授(心理学的に、そういう事が証明されているのです。)
教授(ただこれは、性別と関係性によってはセクハラやわいせつとして訴えられてしまい、この理屈上の効果は期待できません。そこだけ注意してくださいね〜)
××(性別と、関係性…。)
××(今の俺なら…大丈夫だろうか…。)
○○は恐る恐る清宮の背中に手を伸ばす。
だが、すんでのところで躊躇いが生じ、手が止まってしまう。
そうしてまた数ミリずつ手を伸ばしていた時、○○の手と清宮の背中の間に別の手が伸びてくる。
それに驚いた○○は咄嗟に手を引っ込めてしまった。
筒井「レイちゃん、大丈夫?」
清宮「うん…。」
そのやり取りを目にした4期生みんなが駆け寄ってきた。
筒井「大丈夫だよ、そんな大きな失敗なんてそうそうないし、初めての収録なんだから上手くできなくてもみんな分かってくれるよ」
○○「そ、そうそう!それに収録のときには優しい先輩たちと私たちが隣にいるから!だから、がんばろ?」
そこから口々に4期生たちが「頑張ろう」「元気出して」と言葉をかける。
清宮「うん、みんなありがとう…。」
そこで楽屋の扉がノックされる。
スタッフ「スタジオの準備できましたんで、4期生の皆さんスタンバイお願いします!」
4期生「あ、はい!」「はーい!」「ありがとうございます!」
それぞれが返事をして楽屋を出ていく。
筒井「レイちゃん、いこ?」
清宮「うん…。」
二人は手をつないで楽屋を出ていった。
○○「…。」
○○は一人歩きださず、自分の手のひらをもう片方の手の親指で撫でていた。
賀喜「ん?〇ちゃん、どうしたの?」
○○「…いや、何でもない、いこっか」
賀喜「え、あ、うん…。」
そうして二人も隊列の最後尾を歩き出した。
先ほど清宮に触れることができなかった自分の手。
今の自分は女であり、さっきもやらしい気持ちなど一切なかった、のに、触れられなかった。
さっき自分にそれができなかったのは、やはり男としての意識が残っているからだろう。
この意識は、後々弊害になりうるのだろうか。
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《乃木坂工事中・スタジオ》
スタッフ「4期生さん入りまーす、よろしくお願いしまーす!」
4期生「よろしくお願いします!」
スタッフ「じゃ、4期生さんの席はあちらになりますので」
4期生たちは各々の席についていく。
12席。
もともとの映像にはなかった、ひとつ余分な椅子がある。
○○のぶんである。
その点に気づいた○○は何とも言えぬ感覚を抱きながら椅子に座る。
が、2、3分もせずにまた立ち上がることとなった。
スタッフ「1,2,3期生さん入りまーす!」
「「よろしくお願いしまーす!」」
その声に4期生一同は一斉に立ち上がる。
全員何度も頭を下げ、先輩一人一人を迎える。
そして全員が入ってきたことを確認しまた座ると、先ほどまで空席だった関に壮観な光景が広がっていた。
○○「うわぁ…。」
それはまさにテレビの中の光景から画面という壁だけを取り払ったような景色が広がっていた。
白石麻衣、齋藤飛鳥、高山一実、秋元真夏、先日も会った生田絵梨花…。
梅澤美波、久保史緒里、山下美月、与田祐希…。etc…。
錚々たる面々が、スーツ姿でそこに揃っていた。
他の4期生たちは加入後すぐに先輩対面していたそうで、今回は所見ではないのでチラチラ見る程度だが、○○、もとい✕✕は違う。
その対面が終わった後のタイミングにタイムスリップなるものをしたため、ほとんどの先輩がこれが所見なのだ。
ガン見もガン見。口をあんぐりと開けてじっと見ていた。
数人の先輩と目が合ってしまい、それをそらす形でこの凝視は終わった。
そして…。
スタッフ「バナナマンさん入りまーす!よろしくお願いしまーす!」
設楽「はい、よろしくお願いしま~す、どうも、よろしくお願いします」
日村「はいどうも~、よろしくお願いしまーす」
先輩一同「よろしくお願いします!」
先輩たちが一斉に立ち上がり礼をする。
4期生たちもそれに追随する形で、先輩より声は少量だが挨拶と礼をする。
設楽「お、この子たちが4期生たち?」
設楽の言葉に4期生は小さくうなずく。
日村「いやぁ、若いね~、もうフレッシュさと初々しさみたいなのがにじみ出てるよ」
設楽「前あれだよね、一回スタジオ見学来たよね?」
それにも4期生たちは小さくうなずく。
××(そうなの!?)
××はこれも知らない。
そんなことを話していると…。
松村「ちょっと〜!今の言い方だと私たちにフレッシュさも初々しさもないみたいじゃないですか〜!」
日村「また始まった始まった笑」
設楽「いや、それはさ、違うじゃん、一期生なんからさ、もうベテランみたいなさ…。」
松村「…。」
日村「不服なんだ?」
松村はこくりと頷く。
設楽「めんどくせぇな…笑」
××(カメラ回ってなくてもこんな感じなのな…。)
すると…
スタッフ「機材の準備できましたので始めまーす!」
その掛け声で全員が一斉に姿勢を正す。
スタッフ「はい5秒前〜!4、3、2…。」
設楽「ドン!さぁ、始まりました!乃木坂工事中!司会のバナナマンですよろしくお願いしま〜す。」
日村「お願いしま〜す」
設楽「そしてそして、乃木坂ちゃんで〜す!」
第17話 終
続く
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本当は今回の話で○○の紹介まで終えるつもりだったんですが、書いているうちに目安である3000字台になってしまいまして…。
1話1話もうちょい長くてもいいのか、それともそれぞれの話の長さに差はあれど区切りのいいところまで書いたほうがいいのか…。今悩んでます。
よろしければマシュマロでご意見をください。
あと感想も…。