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「星は微かに光り」 第17話

ある日、突如麻衣に集められた○○たち。指示通り来てみると、そこには1~3年までのそれぞれの四天王をはじめとした実力者が集結していた。そこに麻衣が現れ、「闇魔導組織【セブンス・シン】を倒してくれ」と告げたのだった。


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麻衣「単刀直入に言います。皆さんには、闇魔導組織【セブンス・シン】を撲滅してもらいます。」


「「!?」」

○○「セブンスシン…?」

咲月「それってこないだ私たちが追っ払ったチンピラの言ってた…!」


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男「セブンスシンが黙ってねぇからな!」

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麻衣「それはきっとセブンス・シンの子分の組織の輩ね。」

○○「で、何なんですか?そのセブンス・シンって。」

瑛紗「セブンス・シン…七つの大罪…。」

麻衣「まずその前に、○○たちは闇魔導組織について知ってるわね?」

井上「闇魔導組織…魔法を使って悪さをする犯罪者集団のことですね。」

○○「つまり俺らがいた世界のマフィアみたいなもんだな…。」

麻衣「そう。セブンス・シンはその闇魔導組織の中でも一大勢力。生半可なその辺の悪党とは訳が違うわ。」

桜「それを私たちが撲滅するって…?」

○○「それって大魔導警備隊の仕事じゃないんですか?」

咲月「どうして私たちが…?」

和「私たちはただの学生だし…。」

○○たちが疑問を口にする。

麻衣「理由は二つ。まず一つ目に、大魔導警備隊の人員は常に人手不足なの。奴らの撲滅に回せる人員が今はいないわ。」

○○「だったら人員に余裕ができるまで待てば…。」

麻衣「そこまでもう時間がないわ。それに、それは二つ目の理由に関連してくる。」

○○「二つ目の理由というのは?」

麻衣「二つ目の理由。今の大魔導警備隊より、あなた達の方がよっぽど強いのよ。美月や史緒里みたいなクラスSもいるしね。それに、今の大魔導警備隊の中に、セブンス・シンに勝てる人間はいない。まぁ、だから人手不足なんだけどね。」

史緒里「実は、他の生徒には秘密になってるんだけど、私や美月、それに最近は遥香ちゃんやさくらちゃんも、麻衣さんたち大魔導世界政府に協力して、小さい闇魔導組織を壊滅する仕事を何度も引き受けてるの。でも今回は、まだ経験もないうえに一年生である○○君たちを、しかもこんな大人数…。」

麻衣「今回の作戦は猫の手さえ借りたいレベルの、急を要する一件です。私が戦力的に十分だと思った人は全員行ってもらわなければ。」

〇〇「それで、警備隊より強いっていう俺らがそのセブンスシンをどうにかしてこいって?でもいくら何でもただの高校生にそんなでかい闇魔導組織の相手をさせるなんて…。」

そこで麻衣はコホンと咳払いをした。

麻衣「数日前の話をしましょう。」

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麻衣「3日前。

とある事件が起きました。

大魔導世界の政府が管理所有する魔法保管庫が襲撃を受けたのです。」



「早く探すんだ!『アレ』が持ち出されたら大変な事になる!」

「見つけたぞ!捕まえろ!」

「もう終わりだ!観念しろ!」

政府の直属の警備隊が騒々しくかけ回る。

??「お前たちごときが俺たちを捕まえられると思ったか?俺たち【セブンス・シン】を。」

その男の手の甲には『七罪』の文字があった。

「「ぐわああああああ!!!」」


麻衣「この研究所には、古に発明された大魔法《カルマ》が封印されていました。」



〇〇「カルマ?」

和「それって一体どんな魔法なんですか?」

麻衣「…それは、国家機密なので教えられません。」

和「…。」

麻衣「ですが、一つ伝えられることは、《カルマ》が悪党の手に渡ることは、世界が滅ぶ可能性があります。」

○○「…!?」

遥香「世界が…!?」

さくら「滅ぶ…!?」

美月「本当にそんな魔法が存在するんですか…!?」

麻衣「今回、そのカルマを発動するための魔導書がセブンスシンに盗まれました。」

美月「ヤバいじゃないですか!」

○○「ちょっといい?麻衣さん。いささか腑に落ちない。なんでそんな危険な魔法が現代まで残されてるの?さっさと廃棄してしまえばよかったんじゃないの?」

麻衣「先ほども言ったように《カルマ》がどんな魔法かは教えらないわ。でも、《カルマ》は使い方を変えれば世界を滅ぼす魔法ではなく、世界を平和に導くこともできる力を秘めています。
そして、大魔導世界の歴史を知る重要文化財と指定されてしまったので、廃棄するにできないのよ。」

○○「爆発の危険性がある戦争の武器が歴史的資料として現存しているのと同じようなものか…。」

麻衣「ですからもう、時間がないのです。セブンス・シンを相手にするための戦力が十分になるまで待つことなんてしていられません。」

すると麻衣は○○たち生徒に向けて頭を下げた。

麻衣「お願い、みんな。この大魔導世界のために、セブンス・シンを撲滅し、《カルマ》の書を取り返してきてください。」

○○たちは麻衣の頭を下げる姿に騒然とした。

そのレベルの大ごとなのだ、と理解した。

○○「麻衣さん、俺、やるよ。絶対に、セブンス・シンを倒してやる!」

その言葉に、各々全員が大きくうなずく。

麻衣「みんな…ありがとう…!」

蓮加「聞きたいんですけど、そのセブンス・シンって一体どれだけの規模の組織なんですか?闇魔導組織の中でも一大勢力って…。」

麻衣「傘下の組織を含めると計り知れないけど、セブンス・シン本体は、7人。」

蓮加「7人!?」

あやめ「たった7人で一大勢力なんて呼ばれる組織を作り上げたんですか…!?」

美月「でもたった7人なら楽勝なんじゃ…ましてやこんなにも人数は必要ないん…」

麻衣「侮ってはいけない!!」

美月「っ!?」ゾクッ

麻衣の突然の大声にその場の空気が凍り付き、大気が震えた。

麻衣「逆に言えば、たった7人でそこまで強大な勢力を気付いたのよ。セブンス・シンは各々が1人で軍隊を相手に出来るほどの強力な魔法使い達。絶対に1人で戦ってはならない。必ず2人以上でやること!良いわね?」

〇〇達全員は心得たと言わんばかりに頷いた。

咲月「あの!なんで私が呼ばれたんでしょう?私は学年でそこまで強い方じゃありませんよ?」

麻衣「ここに呼んだのはそんな単純な理由じゃないわ。この間のバイオレットグランプリ。あれは普通の行事でもあったけど、並行して今回のセブンス・シン撲滅のメンバーを選出するための選抜試験だったの。」

咲月「えっ!?」

麻衣「その予選の様子を見て優秀だと思った生徒を呼んだのよ。セブンス・シン相手に戦えると信じてね。」

和「やったじゃんさっちゃん!優秀だって!」

咲月「うぅ…喜んでいいのか、こんな重大な任務を任されて落ち込むべきなのか…。」

瑛紗「あの、私はそこまで優秀ではなかったと思うんですが…戦闘や魔力勝負はからっきしだし…。」

麻衣「あなたはサポートや知識に大きくたけているわ。どこかに待機してここにいるみんなの司令塔になってほしいの。あなたの魔法はその役職に適している。」

瑛紗「なるほど、そういうことなら…。」

遥香「あの、強い人なら「聖来」と「まゆたん」を推薦したいんですけど…。」

麻衣「その二人なら既に別任務を頼んだわ。セブンス・シンの傘下の小さい闇魔導組織を撲滅してくるように、とね。」

さくら「あの二人がそんなことを…。」


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「くそっ…俺たち【豚のしっぽピッグテール】が、こんなガキども二人に、全滅、だと…!?」

聖来「なんや、闇魔導組織言うから身構えてたのに、全然大したことないなぁ。なぁまゆたん?」

真佑「そうだね、せーら。この人たち自分たちの組織名通り尻尾を巻いて逃げればよかったのに。うふふっ。」

「くそっ…!」ガクッ


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麻衣「ほかに、質問がある人はいるかしら?」

そこで、俯いていた史緒里が手を挙げる。

史緒里「白石さん。」

麻衣「何かしら?史緒里?」

史緒里「どうしてこの場に、『うめ』がいないんですか?」

〇〇「うめ?誰ですかそれ?」

そこに蓮加が口を挟む。

蓮加「梅澤美波。この学校の現生徒会長で、うちの学年の四天王の一人。記録上はうちの学年で最強の魔法使いよ。」


美月「本当は私の方が強いし!」

蓮加「美月。今は黙って。」

美月「ふぁぁい…。」

和「梅澤美波さん…知ってるわ、前に新聞で見たことがある。美月さんや久保さんと同じ、クラスSの魔法使い…。」

クラスSはその強さと希少性ゆえに、クラスSであると認められると大魔導世界全体にそれが報じられる。

〇〇「クラスS…。」

史緒里「これほどの任務ならうめを参加させないはずがない。ううん、今日だけじゃない、うめは数日前に偵察任務とやらに出てから今日まで一度も姿を見ていません。うめの身に何かあったんですか?」

そこまでしゃべって史緒里は何かに気づいたようにハッとする。

史緒里「まさか、うめの出た偵察任務って…。」

麻衣は気まずそうに顔を伏せる。

麻衣「ええ、セブンス・シンの偵察任務よ…。」

「「!?」」

麻衣「数日前からセブンス・シンの傘下の動きが活発になってる事を掴んだ我々議会は、クラスSの美波なら大丈夫だろうと思ってその偵察に行かせたわ。
でも、少し前からその定期連絡が途絶えた…。」

美月「うめは…うめは無事なんですか!」

麻衣は首を横に振る。

麻衣「わからない。でも、普通に考えれば、セブンス・シンの手に落ちたと考えるのが妥当でしょう…。生きてるのか否か、それはわからない。」

美月「そんな…。」

麻衣「私が今回の任務を急ごうとしたのは、個人的にそれも理由の一つなの。セブンス・シンの討伐と並行して、美波の救出をお願いしたいの。」

美月と久保、そして蓮加がお互いを見合って頷いた。

麻衣「頼んだわよ、みんな。この大魔導世界の運命は、あなた達の手にかかっている…!」

「「はい!」」

麻衣「出発は明日の朝よ。それまで各々帰宅して準備しなさい。解散!」

そうしてそれぞれが校長室を出ようとする。

すると。

麻衣「〇〇。桜。」

〇〇「ん?」

桜「はい?」

麻衣「〇〇。今回の任務では、あなたの本来の力が必要になる時が来るかもしれない。いや、おそらく来る。」

〇〇「…!でもあれは!あれのせいで俺は…いろんな人を…。」

麻衣「ええ、わかっているわ、だからこそ、次はその力を、誰かを助けるために使うのよ。それに、今のあなたは大きく成長したわ。私たちであなたが能力を制御できるよう特訓もした。あとはあなたの精神的な覚悟の問題なのよ。」

○○「精神的な、覚悟…。」

桜「○○…。」

麻衣「それから…。」

そして麻衣は○○と桜をギュッと抱きしめた。

麻衣「こんな任務にあなた達を駆り出しておいて私にこんなセリフは言う資格はないかもしれないけれど…どうか無事に帰ってきて。あなた達は私の大切な子供たちなのよ…。」

○○「母さん…。」

桜「お母さん…。」

○○と桜も麻衣をギュッと抱きしめた。






どこかの薄暗い部屋。そこに杖を突いた中年の男が立っていた。

すると、その男の目の前に、シュッという音と共に、どこからともなく若い男が現れた。

??「どうやら光の奴らが俺たちのところに来るらしいぜ?それも噂じゃどっかの学生らしい。」

??「ふん、警備隊の奴らの数を減らしたと思ったら、ついにそんなガキどもを寄こしてくるようになったか。こりないクズどもだ。政府の奴らは。いいだろう。どんな奴らを向かわせてこようが、われらセブンス・シンの敵ではないわ…。」

そうすると、中年の男は後ろを振り返り、その部屋の唯一の光源だった何かの装置を見つめる。

??「もうすぐわれらの望む理想郷が完成するのだ。光のクズどもに邪魔などされるか!ククク…フフハハハハハッ!!」

高笑いするその中年の男の横には、誰かがたっていた。

暗さゆえによく見えないその人影は、時折装置の光源に照らされて長い髪が見え隠れしていた。



「星は微かに光り」 第17話 終

続く

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