「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第11話
目が覚めると女の体、しかも乃木坂4期生の17人目のメンバーになっていた××(現世名:○○)。
お見立て会が迫る中、自分が特技パートで披露するのは超高難易度なアクロバットだと知らされたのだった…。
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しばらく賀喜と歩くと、制服の人間が増えてきた。
同じ制服、というわけではなく、みんなバラバラの制服だ。
××(そういえば賀喜遥香達が通ってたのはそういう学校だったな)
そしてやがて校門が見えてくる。
生徒「おはようございまーす」
先生「おはよう〜はいおはよう〜」
賀喜「あ、先生!」
先生「おー、賀喜、どうした?」
賀喜「実は…。」
賀喜は○○に関する詳細を話した。
先生「そうか、記憶喪失…。」
先生「ここ数ヶ月分の記憶がない、と…。」
先生「アイドルってのも大変なんだな…。」
○○「まぁ…。」
先生「よしわかった、教職員には俺から伝えておこう」
先生「後でホームルームでもみんなに説明しなきゃな」
○○「ありがとうございます」
先生「じゃあまあ、もうすぐチャイム鳴るから、教室行きな」
○○と賀喜は一礼をしてその場を去る。
教室に入ると…。
金川「あ、おはよ〜」
遠藤「おはよう」
賀喜「おはよ〜」
○○「あ、おはよう」
××(そっか、やんちゃんとさくも同じクラスか)
××(いや、待てよ?)
以前ブログにあがった卒業報告の写真。
そこには同じ学校に賀喜、遠藤、金川だけでなく、3期生の同い年3人がいたはず。
ただ、彼女らの姿は見えない。
どうやら仕事らしい。
というか、空席が多い。
それもそのはず、このクラスは芸能科。
何気なく教室にいる人達も、今日ここにいない人達も、恐らく芸能事務所に所属し本格的な活動をしている人達だろう。
まあ、自分も今はそこに通っているわけだが…。
その後の学校は…特に何も起こらなかったので割愛する。
強いて言うなら、勉学にあまり力を入れている学校ではなかったし○○自体中身は大学生なので授業がすこぶる簡単だったこと。
授業内の活動で、以前話をしたことがあるというクラスメイトに話しかけられたが、前述の通り芸能活動との兼ね合いでお互い登校したりしなかったりでそこまで話したことはなく、そもそも○○は転校してきたばかりでまだ関係が希薄だったので、記憶の事は触れられずに済んだ事。
そのぐらい。
あと…制服のスカートに慣れない。
異常なまでに下半身がスースーする。
お陰で四六時中ソワソワしていたのをさく達に指摘される始末。
××(ズボン登校できるか聞いてみるか…。)
帰りのHRが終わると、賀喜から話しかけられる。
賀喜「さ、裏門の方にマネージャーさん待ってるから、行こっか!」
○○「あぁ、うん」
遠藤「はーい」
金川「オッケー!」
4人で裏門前に行くと、一台のワゴン車が目立って止まっていた。
その横でマネージャーさんがこちらに手を振っている。
皆んな乗り込むとマネージャーさんは運転席に乗り込み発車する。
行き先は言うまでもなく昨日のレッスン所だろう。
○○は賀喜達が仲睦まじく話す様子や時折車窓の外に立ち並ぶビルの列を眺めながら、移動時間を過ごしていた。
《レッスン中》
振付師「『ぐるぐるカーテン』は簡単だからすぐに出来るよね、サビから行くよ!」
"カーテンの中 そよ風と花の香りと"
××(当日はこの振り付けもスカートかぁ…。)
振付師「そこ!角度が違う!横向きすぎ!」
振付師「○○!記憶がないからってもう容赦しないからね!腕上がりすぎだって!あぁ今度は下げすぎ!」
振付師「リズムを合わせて!動きがバラバラ!お遊戯じゃないからね!」
かれこれ2時間そんな勢いだった。
しかもこれだけやっておいて、ずっと踊ってたのは「ぐるぐるカーテン」たった一曲のみ。
残り2曲はまだこれからという…。
○○「あ"ぁ"〜」
束の間の休憩時間に入ると○○は壁に倒れるようにもたれかかる。
早川「おじさんみたいな声出さないの」
早川「はい、お水」
○○「サンキュ」
○○「まだおじさんじゃないよ、失礼だなぁ」
早川「いや、否定するのそこじゃないと思うんやけど…。」
早川「てか、『まだ』…?どこで性転換するん〜?笑」
○○「あ…コホン、単に言い間違いだよ、聞き流して」
早川「フフッ、は〜い」
どうやら幸い冗談で済ませてくれたらしい。
にしても、早めに矯正しなければならないとわかっていても、どうしても××が出てきてしまう。
万が一今後エピソードトークで○○が男っぽいなどと話されてしまうのは避けねばなるまい。
《更に2時間後》
○○「『インフルエンサー』って…ゼェ…こんなにキツいんだ…ゼェ…。」
周りを見ると流石に皆んなヘトヘトだ。
元々先輩達がこのシングルを出す時も、難関すぎる振り付けにMV撮影中など号泣者が出たレベルであるこの曲。
いざ己が体験するとなると、振付師からの細かい指摘もあって、それはそれはしんどかった。
YouTubeにある『インフルエンサー踊ってみた』みたいなやつの比じゃない。
ここにまだ「制服のマネキン」もあるわけだが、今日は時間上もうやらないだろう。
それだけが救いなぐらい覚えることも体もパンパンである。
振付師は途中で次の仕事があるからと自由解散を宣言して出て行った。
勿論、各々まだ上京してない人もいて、帰宅に時間がかかる人が多いからだ。
だが4期生達は上京しているしていないに関わらず、誰一人出て行こうとしない。
誰からでもなく自然な流れで自主練を始める。
そしてそれは○○も例外ではない。
掛橋「○、この時変な癖ついてる」
○○「あ、ここは、こう?」
掛橋「そうそう」
柴田「○ちゃーん、そこにあるゆなの筆箱とって〜!」
○○「これ〜?」
柴田「それ〜!」
○○「いくよ〜!」
柴田「えっ、投げるの!?」
○○「あ…ごめん」
○○はグイッと体を伸ばして柴田に筆箱を渡した。
××(女は基本物を投げて渡したりはしない、か…。)
とまぁ、こんな風に、少なくとも「○○」「○ちゃん」などと呼ばれた時に最低限反応はできるようになった。
最低限、というのは、それが自分の名前であると処理するのに時間がかかり、結果的に呼ばれてから反応するまでに1秒ほどタイムラグが出来るからである。
とはいえ、4期生の皆んなはそれを受け入れてくれていた。
問題は…自己PRタイム。
2日後。今日は自己PRパートの練習。
各々バスケットボールや絵を見せるなど自分の特技を披露していくが…。
(賀喜「そうそう、『後方伸身宙返り4回捻り』!」)
あの後ネットで調べて動画を見てみたが…。
出てきたのはオリンピック選手の映像ばかり。
しかも××の頃はマット運動や器械体操は苦手ときた。
出来る気がしない。
スタッフ「じゃあ次、○○」
○○「…はい。」
○○「○○ ○○です。」
○○「特技は、アクロバットです。」
××(えっと、まずはハンドスプリングみたいな感じだったよな…。)
××(走った勢いのまま手をついて…。)
○○は心の中で要領を復唱しつつ走り出す。
フワッ
××(えっ…?)
クルクル ストン
着地した瞬間、あたりはシンと静まり返る。
××(体…軽っ!!)
男の頃は腕力がなかったのか胴体が重かったのか、側転をしようとしても腕をついた後足を持ち上げた瞬間崩れ落ちていた××。
だが○○の体になって驚いた。
驚くほど体幹が安定していて、体も軽い。
腕で体を支えきれないと言うことがない。
あとはその勢いのまま力を手や足に込めて回るだけ。
ここまでスムーズにいけた事に驚いた。
××(コイツの体…すげぇ…。)
ところが…。
スタッフ「えと…あれ、捻ってなくない?」
スタッフ「今のただの宙返りじゃないか?」
○○「え、あ…。」
××(自分の身体技術に驚き過ぎて捻るとこまで頭回らなかった…。)
○○「すいません、手元狂っちゃってビックリして」
スタッフ「そうか…じゃあまあ今回は大目に見るって事で」
スタッフ「どうしても出来なければ調整する事になるから報告するように」
○○「はい」
未だ自分が宙返りをできた事に驚き手をグーパーとしながら4期生達の待機する列に戻る。
田村「どうしたの?」
田村「自分自身に驚いてるみたいな顔してるけど…。」
大当たり…。
そしてその日のレッスン終わり。
今野「じゃあ来週は会場リハーサルと本番があるので、色々と不備のないように。以上。解散。」
4期生「はい!」
××(いよいよ本番、か…。)
第11話 終
続く
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ちょっぴり重要なお知らせ。
本作において、現在時系列は11月の時点でこうして学校の場面が描かれているわけですが、実は4期生は当時3月までは地元の学校に通うよう指示があったそうで、本作の展開と史実に矛盾が生じています…。
えっと、結論…強行突破します。(💧^◇^)
まあそこまで学校の場面多くする予定もなければ、このあと幾らか日程が飛ばし飛ばしになって2月まではあっという間になる予定なので。
以上、お知らせでした。