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「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第34話

ある朝、目が覚めると女の体、しかも乃木坂46の4期生になっていた✕✕(現世名:○○)。
握手会でファンの人たちとお話をしている中、○○はやってきた人に突如として悪口を言われてしまった。

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ファン「〇〇ちゃんってさ、全然魅力ないよね!」


〇〇「……え?」


〇〇は一瞬、何を言われたのかわからなかった。

理解に時間がかかった。

ファン「俺やんちゃんのファンなんだけどさ、やんちゃんからこっちに流れてきたらブスすぎてビビったわ!w」

〇〇「えっ…えっ…?」

この人はいったい何を言っているの?

今私は罵倒されているの?何で?

だってここは、握手会だよね?


ファン「顔もそこまで可愛くないしさ、特に何か取り柄があるわけでもないし、アイドルとか全然似合わないっていうか?華がないんだよね。
よくそんなんで乃木坂入れたよね、ラッキーだったね〜。
でもさ、場違いだしいるだけ無駄だと思うから、さっさとやめた方がいいと思うよ?」


自分たちのファンだからここにきてくれたんじゃないの?

なのに何でこんな人がいて、しかも今自分はこんなことを言われてるの?

わざわざ握手会にきて、悪口を言いにきたの?何で?

理解できない。

何なのこの人は。

怖い。

怖い怖い。

怖い怖い怖い。

スタッフ「お時間です!ちょっと!お時間です!」

ファン「あ?まじ?wじゃあ俺行くわwまたねw」

スタッフに押し出されるようにその男は出ていった。

○○は、絶句していた。

スタッフも気遣ってか「大丈夫ですか?」と声をかけてくる。

○○「あ、だ、大丈夫です…。」

と、うつろな目で何とか答える。

スタッフ「次きまーす!」

と、次のファンがやってくる。

「こんにちは~!…え?〇ちゃん、大丈夫?なんか顔色悪いよ!?」

○○「え!?う、ううん!大丈夫!大丈夫!」

「前の人に何か言われた?」

○○「ううん、全然大丈夫!心配かけてごめんね!」

その部の終わり。

紗耶とレイが駆け寄ってくる。

紗耶「〇ちゃん!大丈夫!?さっきさ…!」

○○「あーうん、知ってるんだ…。」

レイ「あの人声が大きいからこっちまで聞こえてたんだよ…。ねぇ、本当に平気?」

○○「うん、大丈夫大丈夫!ハハ…!」

そうしてとぼとぼと去っていった。

残りの部も、○○は何とか空元気で、笑顔を顔に張り付けて乗り越えた。


そして、すべての部を終えた後。

○○は楽屋から少し離れた屋外のベンチで座り込んでいた。

○○「ハハッ、俺は男だ…!こんなことで傷ついてたまるかよ…。そうだ、俺は男…。」

○○は独り言のようにつぶやいていた。

しかし、どんなに自己暗示しても、気持ちが晴れることはなかった。

あの男の侮蔑したような目線が、ニタニタした笑顔が、低い声が、頭の中を何度も何度も駆け巡り、へばりついて離れない。

男だったころ、話には聞いていた。

握手会やミーグリで説教オタクが出てメンバーを泣かせた、傷つけた、それによって体調不良を起こしてしまい、残りの部を欠席、中止にせざるを得なくなったと。

第三者からその情報を見た時には、メンバーがかわいそうだとか、何やってるんだ握手会やミーグリにまで参加してそんなことして、と怒ったり呆れたりしていた。

しかし、メンバーの、当事者の視点になってみると、全然違った。


こんなにもショックで不快感の強いものだったのか。


今まで、様々なライブのために、今日の午前のミニライブのためにさえずっとみんなと練習してきたのに、それらを全否定された。

乃木坂にいることさえ。やめてしまえと。

なんであんなことが言えるんだろう。


ダメだ、考えれば考えるほど頭がぐしゃぐしゃしてきた。

✕✕(なぁ○○、お前だったら、この危機をどう考える?)



真佑「〇ちゃん。」

不意に名を呼ばれ、顔をあげると、そこには真佑と、そしてあやめがいた。

あやめ「レイちゃん達から聞いたよ。ひどいことを言われたって。」

○○「…そっか。」

真佑「大丈夫…じゃないよね。」

○○「ううん、全然大丈夫!あんなのアイドルやってたら少なからずあることだよね!平気平気!」

真佑「…〇ちゃん、少しは我慢しないで頼ってくれてもいいんだよ?」

○○「全然平気だって…!」

あやめ「いつも一緒にいるんだよ?今の〇ちゃんが普通じゃないことぐらいわかるよ。」

○○「…。」

○○は黙り込んでしまった。

そして、○○が座るベンチの左右に真佑とあやめが座る。

○○「私は…。」

真佑「どんなことを言われたの?」

○○は観念して話し出した。

○○「魅力がないとか、ブスだとか、乃木坂やめろ、とか言われちゃった…。」

あやめ「ひどい!なんでそんなことを!」

真佑「こんなところまできて、本人に面と向かって言うことじゃないよ!」

二人は自分のことのように憤慨してくれた。

○○は驚いた。

○○「なんで二人がそんなに怒るの?二人が言われたわけじゃないのに…。」

あやめ「当たり前じゃん!怒るに決まってるよ!」

真佑「大切な仲間だもん!」

○○「…!」

真佑「大丈夫だよ。そんな人の言うこと気にしなくていい。〇ちゃんがいつも努力してるのは私たちが知ってるから。」

あやめ「私はね、〇ちゃんがいっつもファンの人のために頑張ったり、私たちのためにいろいろと気遣って動いてくれてるの、すごく尊敬してるよ。」

真佑「4期生はみんな〇ちゃんがいてくれてよかったって思ってる!やめてほしいなんて思ったことない!」

あやめ「表面しか見てないそんな人なんかより、いつも一緒にいる私たちの言葉、信じてほしいな…?」

○○「まゆたん…あやめん…。」

○○は胸がすっと軽くなるような、しかしとても苦しくなるような感覚がした。

今の精神状態の○○にとって、真佑やあやめがかけてくれた言葉は、無意識の中で○○が求めていた言葉たちだった。

自分がそのように思われていたことがうれしかった。

自分はあの人が言うようなひどい人間ではないと思うことができた。

それに、✕✕のころは、人に優しくする、優しくされるなんて、無縁だった。

あの頃から変化したと思わされるような言葉の数々は、図らずも○○だけではなく、✕✕の中にまで響く言葉だった。

○○は口元をゆがめて、うつむいてしまった。

髪の毛で目元は見えない。

その様子を見た真佑は○○の背中を撫で、あやめは○○の肩に頭を乗せて頭を撫でた。

二人は、○○が落ち着くまでそれを続けてくれた。


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その後落ち着いた○○は、真佑とあやめと一緒にみんなのいる休憩室まで戻った。

4期生のみんなは一塊になって何かを話していた様子だった。

紗耶「あっ!〇ちゃん!」

紗耶が○○の姿に気づいて声を上げると、他の4期生たちも一斉に○○たちの方を見る。

そして、一斉にみんなで駆け寄ってきた。

美緒「大丈夫だった!?」

聖来「話聞いて心配したんやで!」

悠理「もう平気なの…?」

紗耶「一人で抱え込まなくていいんだからね!」

各々が○○のもとにより、言葉をかけてくる。


あぁ、こんなに暖かかったんだな。

自分のいる場所は。4期生の仲間たちは。


○○は思わず頬を緩ませた。


紗耶香「うん、いつもの〇ちゃんに戻った感じだね。」

○○「うん、なんとか立ち直った。みんな心配かけてごめんね。」

その言葉と笑顔に4期生たちは安堵し、安心したような息や言葉をこぼす。

それを遠巻きに見ていた、さくらと遥香。

さくら「大丈夫になったみたいだね、〇ちゃん。」

遥香「うん…。」

さくら「かっきー、〇ちゃんのことになると顔が曇るよね。何かあった?」

遥香「え、気づいてたの?」

さくら「もちろん。」

遥香「なんか、〇ちゃんには私たちに隠してる何か秘密がある気がして。それが気になって、〇ちゃんと普通に話せなくて。」

さくら「うーん、そっか~。」

さくらは口をへの字にして唸る。

さくら「かっきーはさ、〇ちゃんのこと、嫌い?」

遥香「いや、嫌いじゃないけど…。」

さくら「かっきーが気になってるその秘密っていうのは、○○ちゃんが4期生の仲間として見れなくなっちゃうような悪いこと?」

遥香「うーん、まだわからないけど、なんとなく違う気がする。」

さくら「じゃあいいじゃん、たとえ何か秘密を持ってたとしても、〇ちゃんは〇ちゃんで私たち4期生の仲間だよ!ね?」

遥香「まぁ…そっか。」

さくら「じゃあ、行こ!」

さくらは遥香の腕を引いた。

遥香「あ!ちょっと!💦」


さくら「〇ちゃん!」

○○「あ、さくちゃん。」

さくら「かっきーが言いたいことあるって!」

遥香「え!?💦」

○○「?」

遥香「えっと、その、もう大丈夫…?」

○○「うん、まぁね。」

遥香「今までなんか色々疑ってゴメンね…。」

○○「あー、うん、全然平気。」

遥香「その、これからは私も仲間として接してくれる…?」

○○「フフッ、何言ってんの?当たり前じゃん!これまでもこれからもずっと仲間でしょ?」

遥香「あ、ありがと…。」

周りは何が何やらといった感じだったが、○○と遥香がわだかまりを解消したというのは察したようだった。

聖来「キ〜ス!キ〜ス!キ〜ス!♪」

「「キ〜ス!キ〜ス!」」

○○「してたまるか!!💦」

遥香「…///」

〇〇「まんざらでもない顔するなー!!💦」



「目が覚めたら乃木坂4期生の〇〇でした」 第34話 終

続く

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