「目が覚めたら乃木坂4期生の○○でした」 第1話
朝、××はけたたましいアラームの音で眠りから覚めた。
知らないアラーム音。
中々止まらないそれの音源が自分の枕元にあると気づく。
××は周辺を手探りし、やがて一台のスマホを手にとった。
見知らぬスマホ。
画面に映った停止ボタンを押してアラームを止める。
寝ぼけ目で辺りを見回す。
知らない天井。知らない壁。知らないベッド。
知らない部屋。
××は自分の部屋ではない、誰かの部屋で寝ていた。
××(…えっ!?)
その事実に寝ぼけていた彼の意識は一瞬で覚醒した。
××(ここは…どこ…?)
ベッドから降り、恐る恐る歩き出す。
××(誰かと飲んだ帰りにそのままそいつの部屋で寝たか…?いや、昨日はバイトから帰ってすぐ寝たし、第一飲みにいくような予定もなかったはず…。というか…、)
部屋の模様からは男らしさが感じられなかった。むしろ…、
××(ここ、女の部屋…?尚更わからない、俺に部屋に入れるほど親しい女友達はいないはず…。何で俺はこんなところに…。)
すると、壁に一枚の大きな写真が飾られているのを見つけた。
それは乃木坂4期生の集合写真だった。
全員ジャージやスポーティーな服を着ている。
そして背景の床と大きな鏡で出来た壁。
どうやらレッスン後に撮られた物のようだ。
それにみんな顔が幼い。
時期としては加入直後のものだろうか。
だがその写真には一つ不可思議な点があった。
「12人」いたのである。
写真の中央には、4期生に挟まれるようにして写る見覚えのない少女。
歳は十代中ほどだろうか。
端正な顔立ちをしており、4期生達のビジュアルに引けを取らないほどの美少女。
だが加入当初、4期生は11人だったはず。
後に新4期生が5人加わるが、写真の少女はその誰とも一致しない。
××(誰だ、この子…?)
何でこの少女は4期生の写真の真ん中に写っているのか。
××(いや、今はそんな事考えてる場合じゃなかった。ここがどこだか突き止めないと。)
部屋の扉は普通に開いた。
どうやら監禁されてるわけではないらしい。
××のいたその場所はどこかのマンションの一室だった。
玄関から続く廊下に四つの扉があり、××はそのうちの一つから出てきていた。
部屋の奥にはリビングとベランダがあり、そこから陽光が差している。
××(どこかにここの家主がいないかな?)
××(リビングにはいないか…。となるといるとすれば…。)
自分が出てきた寝室らしき部屋の扉を除いたあと三つの扉。
××はそのうち一つを開けた。
扉を開けると、危うく扉の近くにいた人とぶつかりかけた。
しばらくしてから、それが人ではなく鏡に写った虚像だったということに気がつく。
何故直ぐに鏡だと気づかなかったのかといえば、
鏡に映っているのが20年以上見てきた「自分の姿ではなかった」からであった。
そこに映っていたのは端正な顔立ちをした美少女。
そしてその美少女にはつい先ほど見覚えがあった。
寝室で見た4期生の集合写真にいた謎の少女。
今の××の姿は、まるでその少女にそっくりだった。
「目が覚めたら乃木坂4期生の『17人目』でした」
第1話 終 つづく
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