#全ジョーカーズ語れる説 Extra Ⅶ キリフダッシュについて考えよう!
こんにちは!Shinです!
今回は新弾のカードに関連して注目度が上がっている「キリフダッシュ」という能力について改めて考察していこうと思います!
1.キリフダッシュとは?
コロコロコミック2020年4月号付録「チーム切札超キングデッキ40枚」にて登場。
以降キングマスタースタートデッキ 「ジョーのキリフダッシュ」十王篇拡張パック第1弾「切札×鬼札キングウォーズ」から本格的にフィーチャーされ始めた能力。
シールドであれば自分のシールドでもよく、トリガーの処理が終わった攻撃の終わりのタイミングで使用できる、というのはビートダウン目線仰天のタイミング。マナさえ払えれば複数同時宣言も可能であり、《勝熱百覇モモキングRevo》のようにそれを前提としたデザインもあります。
クリーチャーが攻撃中にシールドをブレイク、という誘発条件から極めて攻撃的な能力であり、侵略や革命チェンジ、B・A・DやJ・O・Eの流れを汲む早出しかつ独特の軽減による召喚法です。
十王篇は10のキングマスターと呼ばれる切り札を中心とした10のキーワード能力とそれを支えるチーム・王国のデッキが組みやすいようにデザインされたブロック。
実はMTGのデザインと深い関係があるのです。
1-1.MTG「ラヴニカ」次元と「絢爛」
MTGの世界はデュエル・マスターズのように単一の世界で長期的に展開されている訳ではなく、「次元」と呼ばれる複数の並行世界があり、プレイヤーはその次元を行き来する「プレインズウォーカー」となります。MTGのゲームはプレイヤーがクリーチャーを召喚する呪文やその他魔法呪文を使ったり、同じぐらいの能力を持つプレインズウォーカーと契約したり……などしながら対戦するゲームとなっています。
その中に「ラヴニカ」、と呼ばれる次元があります。
「ラヴニカ」は10のギルドがあります。
ご覧いただければ分かる通り、色の構成は十王篇のキングマスターと同じ。
それぞれのギルドにキリフダッシュ等と同様にキーワード能力があります。
今回注目したいのは「ラクドス教団」のキーワード能力「絢爛」。
絢爛は元々グルール一族に向けたデザインだったようなのですが、開発段階で調整されラクドス教団のキーワード能力となったそうです。
デュエル・マスターズとは1マナのバリューが異なるゲームなので、この調整にも納得です。
さて、この話をした理由にはMTGとデュエル・マスターズの似て非なるデザインの話が絡んできます。
2.「シールド」と「ライフ」「土地」と「インスタント」
2-1.「シールド」と「ライフ」
デュエル・マスターズの画期的なシステム、それは「シールド」システム。
バトルゾーンとマナゾーンを隔てる自分を守る盾。山札から無作為のカードが追加され、ブレイクされるかカードの効果を使うまではその内容を知ることができない、というランダム性を持ちます。
また「S・トリガー」というメインの能動的な相手ターンでの行動が行えるシステムもシールドに依存した物です。
MTGのプレイヤーは「ライフ」という得点を持ちます。上限はなく、下限は0。0以下になった時にゲームに敗北します。
この増減に関し、ゲームのシステム上一切の特典はありません。カードの効果ではもちろんありますが、「手札が増えて選択肢が増える」というような逆転を産む要素はありません。
キリフダッシュという能力はこのシールド、ひいては「S・トリガー」というシステムが生み出したギミックであると言えるでしょう。
S・トリガーというものがあることによって、このゲームは「攻撃の後の行動」が著しく制限されます。
これは「S・トリガーで《ホーリー・スパーク》を使ったのにメインフェイズ2でアンタップしているブロッカーを並べられた」「《デーモン・ハンド》で破壊した強力なクリーチャーをメインフェイズ2で墓地から呼び出された」というようにS・トリガーが帳消しになるような動きをされることなくゲームがプレイでき、S・トリガーという効果の質を担保する為の施策です。
ですが、近年S・トリガーはゲームデザインの骨子が生まれた時からは想像もつかないほど強力になりました。
その為、ことビートダウンデッキにおいては不用意な攻撃が全て利敵行為となり得ます。
トリガーだけでなく、攻撃する側は手札を消費するのに攻撃される側は手札が増える、というのがこの簡単なゲームの奥深い戦略を生み出していると言えるでしょう。
その為、デュエル・マスターズというゲームはS・トリガーによる逆転をするゲームでありますが、その中で積極的に攻撃するビートダウンデッキが勝つ為には如何に逆転させないかを問われるゲームになるのです。
そのスタートは「シールド焼却」の《ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》や《暗黒王デス・フェニックス》にあります。
そうしてビートダウンのデッキは進化を続けます。
もう一度自分のターンを行うことで、トリガーを文字通りなかったことにしてしまうカード達。
圧倒的な攻撃力で《ホーリー・スパーク》を乗り越え、勝利を得るカード達。
《蒼き団長ドギラゴン剣》は《単騎連射マグナム》や《音精ラフルル》を添えて完全に相手のトリガーを無効化して攻撃することができました。
ジョーカーズは呪文トリガーであれば《ジョリー・ザ・ジョニー》さえ維持できれば勝つことができるようなデザイン。
赤ジョーカーズにおいては伝家の宝刀であるシールド焼却も獲得。
赤単は手札を消費するというデメリットを逆手に取り、手札が0枚であると強くなるカードでビートダウンの速度を更に跳ね上げました。
《オラマッハ・ザ・ジョニー》によって、変則的ではありますが、呪文を打ち消せるようになりました。後述しますが、ここから「デュエマにおけるインスタントタイミング」の検討が進んでいったように思います。
そして、キリフダッシュ。
キリフダッシュはトリガー処理の後。
このタイミングには《龍装者バルチュリス》という先駆者がいますが、キリフダッシュのカード達はそのバリューをマナコストと引き換えに大幅に引き上げたデザインが目立ちます。
自分のトリガー1体のブレイクから、複数体のキリフダッシュに繋ぎ、トリガーを上塗りする打点を押し付ける。赤緑の戦略としてマナリソースを最大限打点に変換することができるこの能力は、その後のビートダウンを大きく変えることとなりました。
今度はマナリソースという点からキリフダッシュとそれ以降のデュエマにおける「インスタント的カードプレイ」についてお話していこうと思います。
2-2.「土地」と「インスタント」
デュエマとMTGは「シールド」によって区分される、と述べましたがそれはシールドに限った話ではなく、「マナ」というシステムも大きく変わっています。
MTGにおける「マナ」は「土地」と呼ばれる専用のカードを使うことで生み出されます。
このカードを引かなければ、そもそもカードをプレイできない、という所にMTGの運要素があります。
しかし、リソース面の運要素は時として一方的な試合を産みます。
その是正の為にMTGにはインスタントというシステムがあります。
相手の行動に対し、妨害の為にマナを使用することで相手ターンのアクションを確保することでリソース差を広げすぎないようにする事がインスタントの本懐。
マナというリソースをアクティブプレイヤーが貯め切り、最大限使い切った者勝ちにならないように、積極的なアクションよりも少ないリソースでそれを打ち消し、逆にマナを残すプレイが積極的なアクション量を減衰させる。
これは、デュエマには一切ない考え方です。
しかし、リソース面での運要素は一方的な試合を産むだけでなく、プレイ体験の遅鈍化や、映像・漫画作品にした時のドローゴー描写の増加による迫力の無さを産みます。
その為、デュエマは全てのカードを土地化し全てのカードからマナが出るようにしました。
これにより山札の効率化も成され、60枚最大枚数から40枚最大枚数へと圧縮されました。
結果としてマナはとにかく貯めるだけアドバンテージ、リソースを押し付けることで勝利に繋がる……というのが定石でした。
MTGでは前述した様なインスタント運用に加え、逆転させない完全なる詰めの一手として運用されるインスタントも存在します。
そもそもマジックの戦闘システムはデュエマとはやや異なり、タップしていないクリーチャー全てが基本的にブロック行動を行えます。これにより、アンタップしている盤面のクリーチャーの数=打点を止められる数という図式が成立し、相手より多い打点を用意することはデュエマ以上に重要になります。
その解消のために、赤のインスタントにはプレイヤーに直接ダメージを与えるカードが数多く存在し、それを戦闘の各ステップ毎に使用するタイミングが生まれます。
こうした「詰め」のインスタント運用はS・トリガーという逆転が攻撃中常に発生する可能性のあるデュエマにおいて、参考となるデザインでした。
攻撃の後にアンタップするキリフダッシュ。
除去や封殺など相手を牽制するキリフダッシュ。
変則的なものに、相手の攻撃をいなす壁のようなクリーチャーを呼び出すキリフダッシュもあります。
このように、結果としてリソースの運用そのものは押し付け的ではあるものの、相手に合わせた選択をこちらができるようになりました。
ビートダウンというデッキは、生きるか死ぬかの二者択一を相手に押し付け続けるデッキです。
「お前はこのまま殴られて負けるぜ!」と「お前は何もできなくて負けるぜ!」と「お前はこの壁を越えられないぜ!」という選択を与えることこそ、「詰めのインスタント」としてあるべき姿と言えるでしょう。
そうしてこの「詰めのインスタント」を最大限活用したデッキが【青赤マジック】です。
攻撃中に呪文によってクリーチャーを強化し、更なる打点を生み出して勝利する。
キリフダッシュの概念がなければデュエマでこのようなデッキができることはなかったでしょう。
派生として、《オラマッハ》についても触れておきます。
《オラマッハ》はこうした「詰めのインスタント」を使えることはもちろんのこと、相手の呪文を止める従来のインスタント的運用もできるクリーチャー。
このカードの存在が相手ターン中に起動する《ジョリー・ザ・ジョルネード》のマスターJトルネードやキリフダッシュに繋がっているのではないか、と予測します。
こうした従来的なインスタントの方向性は《禁時混成王ドキンダンテⅡⅩⅡ》によって完成したと言えるでしょう。
3.《疾駆竜ボルシャック・アッシュ・レイダー》の可能性
さて、ここまでの話を踏まえてこちらのカードを見ていきましょう。
キリフダッシュ目線、全ての能力が注目するべきテキストを持っています。
まず1つ目の代替コストと賄賂的シールド操作は、更なるキリフダッシュによる展開か、そのまま《アッシュ・レイダー》によるダイレクトアタックかを相手に選択させる事が可能。
これにより、実質的な二者択一の押し付けが可能となりました。
スピードアタッカーW・ブレイカー6000という魅力的なスタッツと、ドラゴンであるが故のサポートの豊富さも際立ちます。
最後のテキストは凄まじく、キリフダッシュして消費した手札をまるまる取り返せるほどのドロー効果を持ちます。
これは試しに組んでみた軽減+《ボルバルザーク・エクス》によるマナアンタップ。
軽減した《レイダー》の攻撃に合わせて《バークアステカA》のキリフダッシュにより、6マナ域の動きに拡張性が生まれ、ドラゴンのキリフダッシュは《ロック・ポロン》や《コッコ・ルピアGS》《龍友伝承コッコ・ゲット》などを使って軽減し、早期に《モモキングRevo》《モモキング》などを使ってゲームを決めることも可能。
《ロック・ポロン》によって《アッシュ・レイダー》の代替コストすら軽減することができ、キリフダッシュデッキは新時代に突入したと言えます。
4.終わりに
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました!
普段はジョーカーズ1枚についてじっくり語っています!
さてそんな来週の#全ジョーカーズ語れる説は!
月曜日:《ドンパッチおじさん》
水曜日:《ジョギラゴン&ジョニー〜Jの旅路〜》
金曜日:《ゴルドエッグ・ザ・スロットン》
の3体でお送りしようと思います!
今後とも#全ジョーカーズ語れる説 をよろしくお願いします!
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