ブギーマンに捕まるな4

私はさきちゃんの友達になった。
さきちゃんは人気者だったから、私は休み時間はさきちゃんから離れていた。

みんなに取り囲まれているさきちゃんのちかくにいるのは怖かったからだ。

でも、班分けでもペアをつくる時でも、さきちゃんは真っ先に私を選んだし、帰りは絶対に一緒だった。
みんなはさきちゃんが優しいから、私の相手をしてやってるんだって言ってたし、私もそうかなって思った。

話せない私といて何が楽しいの?
私だってそう思った。
もっと楽しいことを話せる人のところへ・・・人はいく。

さきちゃんは塾や習い事があるから、放課後遊んだりはできなかった。
だからさきちゃんと二人でいる時間はここだけで、私はそれが嬉しかった。

さきちゃんは楽しい話をしてくれたし、歌も歌ってくれた。
さきちゃんの秘密の一つが、さきちゃんのお父さんは歌手だってこと。
「もう、死んでしまったお父さんの方。今のお父さんは本当のお父さんじゃないんだ」
さきちゃんは私にだけ教えてくれた。
私は誰にも話さないから。

「お父さん、クスリで死んだんだ。今のお父さんはバカだって言うけど、お父さんはバカじゃないし、とても歌が上手くて・・・優しかったんだよ」 
さきちゃんは楽しいことみたいに話した。

クスリで死ぬって?
クスリは身体を治すものなのに。
私は良くわからなくなる。

「お父さんの歌はね、ちゃんとハートに届いたんだよ」
さきちゃんは嬉しそうに話した。

それならわかる。
私はいつだってさきちゃんは歌をハートに届かせてるから。

「今のお父さん嫌い。ホントは」
さきちゃんは小さい声で言った。

「大嫌い・・・死んだらいいのに」
さきちゃんの声は震えていた。

それがさきちゃんの二つ目の秘密。
お母さんにも言えない秘密。

「大好き、あんたは誰にも言わないから」
さきちゃんはよく私にそう言った。
言わないのではなく、言えないのだけど、私は言えたとしても言わなかっただろう。

さきちゃんは私の、こんな私の大切な友達だったからだ。

でも、私は聞いておくべきだったのだ。
声に出して聞くことが出来なかったとしても、なんとしてでも。
 
何故さきちゃんがお父さんが嫌いなのかを。
そうしたら、私は彼女を助けられただろうか?

わからない。

でも私はさきちゃんの特別な友達だった。
それはまちがいなく。

そして、さきちゃんと私がそれに出くわしたのも、そんな帰り道のことだったのだ

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