暗闇|俳句修行日記
『行列のゆくさき暗し新社員』という句を提出したのだが、「これは俳句じゃない」と師匠のたまう。定型・季語・切れの三要素を「完璧に満たしている」と反論してみたのだが、「俳句というのはそんなもんじゃない」と。
心を忘れて形だけ整えた文章 ――― ボクの俳句のことをそう言って、「情報化の進展が後押しする二元的世界に、お前も与するのか」と師匠。
どういうことかと聞くと、「世界を自分と向こう側の二つに分かち、批判的視線を外に向けておるということじゃ」と。
このような世界は構成し易く、他者の同意も得やすいものだ。しかし、立場の違いから白黒塗り分けただけの世界には、彩りがない。だから、そこに生きようとする者は、白黒の境界線を凝視する。
「おまえは、『新社員』の内側を探ろうともせず、その行先を向こう側に設定してしまったんじゃよ。それは自分を立てるために、他者を貶める行為なのではないか?」
「そのようにしておれば、全てはおまえを置き去りにしていく。じゃがそれは、周囲が離れて行くのではなく、自分自身がそれを遠ざけているということに気付くべきじゃ。そこには、暗闇だけが残るもんぞ。」(修行はつづく)