愛媛FC奮闘中19
リスペクトコラムです。(元記事:https://blog.goo.ne.jp/kataru-kai/d/20240403)
先日のFOOT×BRAINで、愛媛さんの特集があり、2年前に就任した村上取締役さんが紹介されました。実は当ブログでも前からチェックしていて、いいコラムがあってリスペクト記事にしようと思っていたのですが、ちょっと難しく、別のコラムが出てきたら紹介しようと思っていました。そこでいいタイミングで番組に出て来て良かったです。
【FOOTBRAIN×J2昇格×愛媛FC】
去年J3を圧倒的な強さで制し、2021年の降格からわずか2年で復帰。その裏にはチームを躍進に導く影の立役者がいた。ルールすら余り知らない自称サッカー素人だった!? 彼女はどんな人物でどうチームを変えたのか。その手腕は2年でスポンサーを90社増やすなど営業面でも絶大。サッカー素人ながら愛媛FCを支えるチーム改革術に迫る。
愛媛FC取締役 村上茉莉江。一橋大学大学院の経営学修士(MBA)を取得し、その後日本IBMに入社。31歳の時にコンサルティング会社に転職し、多くの企業の事業立て直しを手助けしてきた。そして2021年、父であり、愛媛FC社長である村上忠に呼び寄せられ、クラブの取締役に就任。そのきっかけは意外なものだった。
村上取締役(村):当時事情がよくわかっていなかった。新聞記事で私財1億円を投入する事が発表された。家族LINEに君たちに使えるお金は無くなったと。すごく大きい事が起こっているんだなと。その時に起こったのがクラブが7,500万の赤字を計上した。なので私にも組織づくり、お金の管理とか、手伝って欲しいというのが取締役就任のきっかけだった。サッカーの事は全くわからなかったけど、新しい今まで経験のない事業に挑戦するのはいいチャンスではないかと思った。
クラブは2019年に7,500万円の赤字を計上、2020年に父で社長の忠が私財1億円を投入すると同時にビジネス面の支えとして取締役就任の依頼を受けた。2021年に村上茉莉江が取締役就任。
①オープンマインド
村:2021年に就任した時は、この年のシーズンに(J3)降格が決まって、振り返りをしていった中で見えてきたのが、他責マインド。クラブがちゃんとやってくれてないんだとか、選手はちゃんと指示に従っていないとか、それぞれが誰か別の責任・原因を言っている状況があったので、変えていかないといけないと。
チームにまん延していた責任のなすり合いと風通しの悪さ。J3に降格した事でそれが顕著になっていたという。その解決策とは。村上は今、東京と愛媛の二拠点生活。事ある度に愛媛まで足を運び、チームの運営に携わっている。この日行っていたのは1対1面談。これこそがチームを変えた解決策の1つ。
挨拶はLINE交換。「不信感が募るくらいなら、直接連絡できる関係を作っておいた方がいい。風通しを良くする意味でLINE交換した」 クラブの意志決定権を持つ村上が、定期的に選手1人1人と対話する機会を設ける。気兼ねなく相談できる関係を築く。選手の不満やチームの問題の芽を摘み取って行く。
村:直属の部下たちとはやっていたが、選手とも2022年シーズン始動と同時に1on1面談を行い、みんなの問題認識とかクラブに対しての要望をしっかり聴き取る事を始めた。
驚きなのは選手だけでなく、監督やコーチなどすべての現場スタッフにも行なっている。これによって起こったチームの変化について、2022年から指揮を執る石丸監督はこう語る。
石丸監督:久しぶりに愛媛に帰ってきて、クラブとの距離感はあるのかなと思ったら、村上さんが僕らと面談してくれる事によって、こういう現状がありますとか話してくれると、クラブとの距離感は縮まったのかなと。一番初めに僕が来た時にチームに元気印を作りたいなと思って森脇(良太選手)を主将とか副主将とはではなく、ポジティブ・エナジャイザー(組織や職場に自らポジティブエネルギーを生み出して、周りに良い影響を与えられる人)と言う役職に就かせたいと話をしたら、いいんじゃないですかなどのやり取りがあった。
村上社長:昨年優勝した要因の中にたぶん一体感がある。選手が一番言っていたように思う。一体感が生まれたのは彼女(村上取締役)のおかげなんですかね。人をまとめ上げる事に長けていたというのが自分の評価。人の情報を引き出しながら、組織を構築していく事に長けていると思う。
村:ある選手からすごく畏まったLINEが送られてきた。卒業して行った選手も含めて、選手はみんな愛媛FCが大好き。それでもクラブを去る決断をする理由は、唯一の理由は年棒、お金的な部分だけ。「ビジネス部分に対して選手がもっと役に立てる事があるのでは、そこにもっと参加していきたいと言っている選手はいっぱいいる。僕たちをもっとそういう事に使ってください」と言ってくれた。
関東に愛媛のサポーターが多かったり、去年から愛媛の試合を東京で観ようというイベントを始めてみて、そこで優勝が決まった伊予決戦(愛媛ダービー)のシーンを見ながら選手達が解説するという取り組みを行った。選手が、自分の課題とか話してくれた。完全ボランティアで選手達が来てくれた。
(サッカー素人なのになぜそこまで話そうとする事は)組織変革のコンサルをやっていた事がすごく大きくて、いろんな業界に行っていたので、自分たちよりよっぽど詳しい本業の人たちと1対1面談をしていくので、持っているスキルとかが違う、その本業の所は彼らから聞いて、我々はマネジメントとかそういう理論・メソッドを提供する。持っている専門性が違うので、交換していくという考え方でやっていたので、その部分は臆する事が無い。
②選手のアイドル化
今チームの課題の一つが「集客数問題(伸び悩み)」。その解決策として村上が推し進めたのが「選手のアイドル化」。写真撮影でも普通の笑顔ではなく、少し動きを付けて印象はがらりと変わり、個性も際立つ。
村:選手達がいろいろやっているシーンを見て、キュンキュンできるとか、女性が行けば男性も付いてくる。女性が色んな意思決定権を握っているので、女性のハートをつかみたい。女性はペアや3人組の関係性に惹かれる。
動画配信でも女性が心惹かれるような見せ方を意識。試合では見られない選手の素顔や選手同士の仲の良さなど、女性がちょっとキュンキュンするような内容も。すると実際にスタジアムに足を運ぶサポーターに変化が。女性サポーターが2021年の1,179人から2023年の3,598人と増加。ゴール裏に子どもが増えた。コアファンに向けてチームの裏側がわかる動画・SNSでの配信も強化。選手がメディアによく出るようになった。
スポンサー周りにも連れて行って欲しいという声がサポーターから出たとか。サポーターの皆さんも当事者となってクラブと一緒に行動してくれる。
③ビジョンの確立
同じ県内に岡田メソッドのFC今治がいる。一方で愛媛FCはベテランに頼り、レンタルで選手を取り、一時的にチーム力を高める手法を取っていた。だが、それではチームの未来が見えないとサポーターや営業先からも懸念の声が出ていた。そこで村上が取り組んだのがチームの確固たる指針を示すビジョンの確立。「育成と成長」という言葉を掲げた。
そこにはそもそもユースチームが母体で創設されたチームの歴史も含まれている。
村:私は組織の変革時代、マネジメントのプロフェッショナルだったので、問題解決をするのがマネージャーの役割という事で、問題というのはありたい姿と現状のギャップをどう解決していくかが問題解決であると定義をして、愛媛FCはどういうヒストリーを持っていて、どういうのがあるべき姿なのかを議論していく中で、育成・成長というところで2022年から若返りを図り、戦ってきた。どうしても不安定になるし、ベテランに頼りたくなる事も出てくると思うが、その時もブレずに育成・成長で戦っていくチームにしようというのを自分達に言い聞かせている。
ビジョンの基盤に置いたのが、SCフライブルク(堂安選手所属)とのフレンドシップ協定。2008年から結んではいたが、今まではほぼ機能していなかった。チームの基盤を作ったフィンケ監督(就任2年で1部昇格達成)に去年2週間視察してもらった。アカデミーもフライブルクのダイレクターも愛媛FCに、パートナーとしてアドバイスをもらい。愛媛FCらしい育成をブラッシュアップしていく。
〔SCフライブルクとのフレンドシップ協定〕
チーム強化部の現地視察、年に1名以上の短長期留学、フライブルク在住者とスタッフ契約を結ぶ。改革の成果として、アカデミー出身のGK黒川選手がトップチームデビューを果たした。行友選手は昨年8月にFCファマリカン(ポルトガル1部)に移籍。また、指導者の育成に向けて、S級コーチライセンス取得の補助金制度も作った。そしてビジョンに共感してくれるスポンサーも多く、2021年から90社増えて、収益も約5千万円アップした。
村:愛媛県にもFC今治さんと2チームあって、全体で60チームになっているので、地域愛だけで収まらなくなっていると思うので、何を大事にしているか、ユニーク性・オリジナル性に共感して応援してくれる時代じゃないかと思う。今は東京でフィロソフィー(我々の考えている事)に応援・賛同してくれる人を探していて、その中で愛媛県は関係無いスポンサーを獲得したりとか。
去年はツアーを組んで、東京の企業をホームゲームに招待。クラブが掲げるビジョンが実際にどういうものか肌で感じてもらう機会を設けた。そして2年前、育成に欠かせない施設として、クラブハウスと天然芝グラウンドが完成。施設の充実によって、コンディションが整えやすく、足にかかる負担も大きく軽減。開幕前のけが人が2022年以前の10人から2023年は0人になった。村上取締役は今シーズン、J2優勝を目標に掲げている。
予想以上に村上さんはインパクトありましたねぇ。父親でかつて1億円をクラブに投資し、筆頭株主になった村上社長はニンジニアネットワーク㈱の社長です。気になるのが村上さんはまだ東京在住で、愛媛に骨をうずめていない点。初代WEリーグチェアみたいですね。でも実績が出ているからいいのかな。
改善策の①はコンサル業でよく見る手法ですね。まぁ面接という手段は他のクラブでも見られ、別にサッカー界以外でも普通に観られる取り組みですね。でも選手とクラブ経営者の距離が短いというのはいいかもしれません。②も最近のJクラブの流行であり、特にJ1では増えている取り組みですね。③もごく普通の取り組みですが、J3愛媛さんが実施し、村上さんがやったのが大きいですね。その成果でJ3優勝、J2昇格した訳ですから。
愛媛さんは最近ちょっとピンチでした。下からの今治さんの突き上げが激しかったですから。それを村上さんがガツンと手を打ち、今治さんを引き離した印象ですね。村上さんは近いうちにJリーグ理事にスカウトされるかもしれませんね。女性経営者なので、WEリーグもいいかもしれません。今年の愛媛さんは強そうだ。目標がJ2優勝ですから。その愛媛さんは現在8位か、なかなかいい位置にいるじゃないですか。
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