Ezra Varier - Estonian Snow
いわゆるブラックゲイズやポスト・ブラックメタルの可能性、そのフレキシブルな守備範囲の広さを裏付けるような存在であり、北欧は辺境の地に位置するエストニア出身のZ世代アーティスト、Ezra Varierの2ndアルバム『Estonian Snow』は、いわゆるZ世代のぶっ壊れローファイメンタルを象徴する歪んだノイズやグリッチ、そしてこの手の音楽に欠かす事のできない内省的なエモ要素を盛り込んだ、宅録系ならではのローファイかつ実験的なサウンドを繰り広げている。
その孤独感に病んだ憂鬱な精神状態が反映された不協和音をはじめ、いかにもポスト・ブラックメタル的な仄暗いアートワークの右上にサブカルポイントとして極小の可愛い絵が描かれている所まで、現代アンダーグラウンドシーンの爆心地であるBandcamp界隈の住人達と否が応でもシンクロする。それもそのはず、彼が今まで聴いてきた(影響を受けた)アーティストとして、 韓国のParannoulやasian glow、スウェーデンのWeatherdayやブラジルのsonhos tomam contaの名を挙げている点からも、やはり彼もぶっ壊れ界隈に棲む住人だったというわけ。
それら界隈に属するアジアや南米の宅録系アーティストと比べると、このezra varierは比較的オルタナティブなスタイルを持ち味としている印象で、北欧の辺境ならではの陰鬱さを内包した仄暗い水の底から湧き出す幽玄なアトモスフィアと、氷結したバルト海のように凍った心を3㌧ハンマーでバリバリと叩き割るような耳障りな粗々しいノイズが織りなす、まるで悪夢のように不穏なサウンドスケープを以って、荒涼感あふれる病みカワ系デプレッシブ✞鬱✞ブラックメタルを聴かせる。また、グリッチを応用したブラックメタルの第一人者であるLiturgyに肉薄する欧州出身らしい宗教観も要所で垣間見せる。
確かに、界隈からの影響をダイレクトに受けているので鮮度自体は希薄だが、空想的な自傷性を内包した自身の音楽をメンタルヘルスの治癒薬として応用した、ある意味で伝統的な音楽家らしい彼が創り出す音楽、すなわち生命そのものである彼の音楽はあまりにも魅力に満ち溢れすぎている。