Ὁπλίτης - Ψευδομένη
金切り声の断末魔とともに、まるでルーヴル美術館に所蔵された「この世で最も黒い絵」から湧き出るような邪悪ネスが、さながら「悪魔が来りて笛を吹く」とばかりにフェードインしてくる冒頭からして、心霊スポットさながらのヤバい雰囲気を醸し出す立入禁止の忌み地に足を踏み入れちゃった感のある、中国は寧波市出身の2000年生まれのZ世代メタラーことLiu Zhenyang氏によるプロジェクト、その名もὉπλίτηςが今年の1月1日にリリースした1stアルバム『Ψευδομένη』。
バンド名も曲タイトルも全てギリシャ語で啓示された世界観の徹底ぶりには只々圧倒され、その言ってる意味はわからないけど、やってる音楽は思いのほか分析しやすい音楽的なスタイルで、そのギャップに萌える。それこそ、新世代UKメタルのPUPIL SLICERさながらのマスコアやブラッケンド/ハードコア・パンクのカオティック成分と、ヴァージニア出身のInfant Islandさながらの次世代ポスト・ブラックメタル勢に通じる無機的なモダンさ、そしてニューヨークの黄金仮面集団Imperial Triumphantに象徴されるアヴァンギャルドなDissonant Death/Black Metalの暗黒物質、それら現行のヘヴィミュージックシーンで流行りのトレンドを押さえた数々のギミックを、ブラック・マジック=黒魔術を施した闇鍋にブチ込んでグルグルかき混ぜたような、正直このクラスの20年代を象徴するような新世代エクストリーム・メタルが中国から生まれたことは、メタルの歴史に残るエポックメイキングと呼べるかもしれない。
例えるなら、心スポ凸系のユーチューブ動画で「そこにおるって!バケモンおるって!」と大袈裟に叫ぶユーチューバーみたいなノリで、一瞬だけは「Imperial Triumphantに次ぐエゲツないブラックメタルの爆誕や!」と威勢よく啖呵を切りかけるも、いざ冷静になって聴くと「あれ?これってブラックメタルというよりコテコテのマスコアじゃね?」ってなる感じというか。一見、はちゃめちゃエクスペリメンタルなスタイルに見えて、その意外にもしたたかな咀嚼力に裏付けられた音像を分析的に捉えられる点は俄然好感を覚える。
筆頭すべきは、Dissonant系のマシズモを煮詰めたマスコアと、DissonantでTechnicalなブラックメタルがエクストリーム合体したような#7”Μάρτυς”や#8”Θελκτήριον”におけるメタルバンドとしての演奏力の高さで、これまでメタル未開の地のイメージしかなかった中国メタラーのエゲツないエネルギーに面食らうこと必須。また、#3”Ψευδομάρτυς”みたいなド迫力のシャウトの発声や歌メロがやけにアジア人的というか、日本のラウドロック勢に通じる特徴してるのも中国のバンドらしいっちゃらしいのかも。
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