星熊南巫 - TOKYO 神 VIRTUAL
近々ではDEATHNYANNとかいうソロ・プロジェクトを始動した(聴いたことない)、ラウドルシーンを牽引する我儘ラキアのメインボーカル担当こと星熊南巫の正真正銘の本人名義のデビューEPとなる『TOKYO 神 VIRTUAL』は、本家我儘ラキアが得意とするラウドロック路線から一線を画す、いわゆるEDMをベースとした打ち込み主体のサウンドを特徴としている。
Z世代の拡声器ことオートチューンを駆使したサイバネティックなサウンド・スタイルは、某『サイバーパンク 2077』とまではいかないが、AIが全てのインフラを管理する近未来都市(スマートシティ)『東京アンダーグラウンド』、そのVR(ヴァーチャル・リアリティ)的な世界観を司るアーバンな雰囲気が一周回って聞き手にノスタルジーを植え付ける。
星熊南巫がリスペクトするBMTHの問題作『amo』やEPの『Post Human: Survival Horror』以降の、主にフロントマンのオリヴァー・サイクスによる俗に言う”ハイパーポップムーヴ”の地平線上にあるEDM路線を踏襲した、このソロEPを象徴する表題曲の#1”TOKYO 神 VIRTUAL”を皮切りに、機械都市を舞台とするインダストリアルなサイバネティック・ハードコアの#2”DIVE”、交流の深い盟友のCVLTEとのコラボが実現したUKポスト・ハードコア仕草の#3”tears in rain ;(”、星熊南巫のポテンシャルその本領発揮と言っていい感情むき出しのエモーショナルな歌声が炸裂する#5”NEJEM”、そしてイタリアのHopes Die LastのBeckoことマルコ・カランカとコラボした#4”ERA”とAviel節すなわち英詩的な歌唱法を披露する#6”Dreamscape”という、それこそDeftonesのチノ・モレノとFarのショーン・ロペスによるプロジェクトで知られる†††(Crosses)、そのショーンがプロデュースに関わった知る人ぞ知るフロリダのエレクトロ・ユニットVERSAの『Neon EP』(サブスクにもない)を想起させる、いわゆるトリップ・ホップ的なローな倦怠感と某ミッドガルを装った東京アンダーグラウンドのネオン街をアーバンに照らし出すシンセが躍動的に瞬くこれらの楽曲は、このEPにおける最大の惑星およびパンチラインと言っても過言ではない。
確かに、「やってることはほぼ4s4ki」と言われたらそれまで、あるいはオリヴァー・サイクスが仕切ってるプレイリスト「misfits 2.0」に新規参入してきたCryalotの対抗馬とも言えなくもない音楽性ではあるんだけど、個人的には今の本家ラキアよりも全然鮮度があって面白いと感じた。というか、自分にとってはVERSAリバイバルじゃないけど、今はなき彼らの後継者的な位置づけで楽しんでる部分も少なからずある(単純に自分の好みに近いサウンド・プロダクトってのもある)。