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Ὁπλίτης - Τ​ρ​ω​θ​η​σ​ο​μ​έ​ν​η


今年、瞬く間に新世代エクストリーム・メタルの最右翼として名乗りを上げた、近代メタル史のエポックメイキングとなる1stアルバムから約三ヶ月ぶりにリリースされた、中国は寧波市出身のὉπλίτηςの2ndアルバム『Τ​ρ​ω​θ​η​σ​ο​μ​έ​ν​η』は、メタル未開の地である中国から世界にその名を轟かせた1stアルバム『Ψ​ε​υ​δ​ο​μ​έ​ν​η』の中で示した、それこそ現行のヘヴィミュージック界のトレンドであるDissonant系のマスコアやデス/ブラック・メタルから抽出した真っ黒な邪悪ネスを主成分とする闇鍋の中に、フランスのGojiraや北欧スウェーデンのメシュガー以降のテクニカル・デス/ポスト・スラッシュ成分を継ぎ足し用の秘伝のタレとして追加投入した事により、著しくメタリックでハードコアな音像に、より獰猛で強靭なエクストリー厶・メタルへと大化けしている。

衝撃の1stアルバム…すなわち「この世で最も黒い絵」から滲み出た混沌蠢く邪悪ネスとともに、マスコアやテクデス然としたプログレスな転調を繰り返しながら怒涛の展開を見せる#1”Οὐλομένη”、(前作の#3参照の)アジア系特有のクセのあるシャウトが冴えわたる曲で、それこそアンダーグラウンドの国産デスラッシュ/ハードコア・パンクにいそうな雰囲気に俄然シンパシーを覚える#2”Τρῶξις”、ニューヨークのImperial Triumphantの正統後継者とばかりのシニカルでアヴァンギャルドなデカダンスを舞う#3”Τρῆσις”、テクデス然としたエクストリーミーな前半からブラックメタルらしいトレモロ祭りを催す後半に繋がる#4”Τραῦμα”、10年代のヘヴィネスを象徴するメシュガーやGojiraのエクストリーム・スラッシュを20年代=次世代の解釈で紐解いたバケモンチューンの#5”Ὁ τῶν τραυμάτων ἄγγελος”、Ὁπλίτηςのテクニカルな演奏力の高さに裏打ちされたインストナンバーの#6”Τετρωμένη”、スラッシュメタルらしいソリッドなキザミとトレモロ・リフによる不協和音およびマシズモが蛇神ヨルムンガンドのごとく複雑怪奇に絡み合う#7”Ἔκτρωμα”、さながらブルックリンのLiturgyがハードコア・パンク化したような#8”Θεία μανία”、冒頭の殺傷力マシマシのスラッシーな高速リフからDissonant直系のミッドに豹変する#9”Οἰχησομένη”、いわゆるメロデス的な単音リフを主張する幕開けからフィラデルフィアのSOUL GLOを想起させるハードコア・パンクへと激流葬する#10”Θεῖα δεσμά”まで、メロデスやメタルコアに肉薄する単音リフを積極的に取り入れたことで、前作比で著しくメタル度がマシマシの作品になっている。それこそ、昨年の俺的年間BESTメタル勢を闇鍋に放り込んでグツグツ煮詰めたような最狂のエクストリーム・メタルで、要するにただのバケモン。

Dissonant系デスメタルを代表するイタリアのAd NauseamやニューヨークのArtificial Brainからの影響をはじめ、ブラックメタルとマス系(カバラ数秘術)がクロスオーバーしたLiturgy(ラヴェンナ・ハント=ヘンドリックス)さながらの、ある種のタブー視された宗教学に裏付けられた革新的な音楽性に肉薄する、古代ギリシャ神話の「ペルセウスとアンドロメダ」をモチーフとした超絶ファンタスティック・ビーストの世界観を以って、前作を優に超える不協和音という名のグロテスクな咀嚼音(ASMR)をグッチャグッチャと轟かせている。

言わずもがな、中国出身のバンドがこれをやるのと、他の国のバンドがやるのとではワケが違ってくるというか、聴いてると色々な意味で彼らの身柄が心配になってくるのも事実。逆に、Ὁπλίτηςの奏でる音楽はギリシャ神話と中国神話の部分的シンクロを啓示するメタファー、そのように解釈すると俄然面白さと説得力がマシにマスのも事実(その解釈こそアウトじゃね?w)。とにかく、同じアジア系として今後も応援していきたいし、いずれは日本の明日の叙景あたりとの対バンを両国で実現されることを切に願う。

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