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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第37回 未曾有の「生産コスト」上昇の対策(その1) 〜生産者側の視点から考える〜

オーストラリアでは近年稀な農産物の価格高騰が続いています。生産者は、なぜ農産物の「価格」を上げる必要があるのか?、「生産コスト」が上昇している背景から考察していきます。

インフレ前(2019年12月)からインフレ(2023年12月)までの
オーストラリアの生活費の変化

オーストラリアでは近年稀な農産物の価格高騰が続いています。生産者は、なぜ農産物の「価格」を上げる必要があるのか?、「生産コスト」が上昇している背景から考察していきます。一般的に多くの「製造業」は、気象条件を始めとする外的影響を受け難く、製造コストの計算は比較的し易いと考えられます。その一方、「農業」は外的影響を受け易く、シーズン毎にコストが安定しない傾向にあります。

生産工程で削減できるコストの「見える化」

原料費を含む製造コストが値上がりしている農業生産現場では、多くの生産者が否応なしに卸価格を引き上げざるを得ない状況です。こうした中では、「5W1H」の概念を基軸に、価格高騰の要因を「見える化」して分析することが必要不可欠です。卸し先によっては、「インフレ」、「ランニングコスト高騰」等、様々な理由を挙げ価格交渉(売価を上げる交渉)に応じない状況が発生する場合があります。これは、農業業界に限らず、全製造業界での共通事項と言えます。そのため、価格交渉材料として、「見える化」させたデータ等(※下の表参照)を作成し、ロジカルに交渉します。また、同データは現場の労働者の教育にも役立ちます。例えば、通常であれば、明確にされていなかった生産材料(肥料、燃料等)の使用量を全て数値化し、従業員の意識改革にも活用するようにします。

まずは肥料コストから

上の表の内容を紐解くと、インフレ前に比べて、ほぼ全てのコスト項目で上昇が見られることがわかります。特に、「燃料」、「肥料」、「梱包・貨物」等のコストが著しく跳ね上がっていることが分かります。これらは国際情勢やエネルギー市場の変動の影響を強く受けている項目と言えるでしょう。この中でも、作物の生長で必要な「肥料」は、サイエンスに基き、適期に「必要な施肥量」を事前に計算できます。一生産者として、コスト削減し易い項目として考えられるのは、まず「肥料」コストと言えるでしょう。「スマート農業」技術を活用して、肥料減でも今までの収量をどう維持できるかが、オーストラリアの生産者の最重要課題となっていることがわかります。

まとめ(日本の農業者へのアドバイス)

  1. エネルギー効率の改善: 燃料・電気コストの上昇に対応するため、再生可能エネルギーの導入や省エネ設備への投資を検討しましょう。日本の高度な技術を活かせる分野です。

  2. 精密農業の導入: 肥料コスト削減のため、ドローンやIoTセンサーを活用した精密農業技術の導入を検討してください。必要最小限の肥料で最大の効果を得られます。

  3. 水資源管理の最適化: 水コストの上昇に備え、灌漑システムの効率化や雨水利用など、水の有効活用を図りましょう。

  4. サプライチェーンの再考: 梱包や貨物コストの上昇に対応するため、地産地消モデルの強化や、効率的な物流システムの構築を検討してください。

  5. 人材育成と労働効率の向上: 労働コストの上昇に対応するため、従業員のスキルアップや多能工化を進め、生産性の向上を図りましょう。

変化の激しい時代だからこそ、データに基づいた冷静な判断と柔軟な対応が、日本農業の更なる発展につながるでしょう。日本の強みである高品質生産と技術力を活かした独自の農業モデルを構築することで、国際競争力のある持続可能な農業を実現できるはずです。


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