オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第9回 農産物の品質管理
今回は、オーストラリアの野菜や果物の品質管理について考察していきます。近年、オーストラリアでは無登録農薬の使用、偽装表示、異物混入などの問題が多発し、消費者の食の安全安心に対する関心が高まっています。さらに、オーストラリアは日本を含むアジア諸国への輸出を強化しており、国際品質基準に基づいた安全で安心な農産物の生産が求められています。
オーストラリアの農作物栽培工程には最先端の品質管理システムが取り入れられており、栽培から流通までのトレーサビリティが管理されています。主な品質管理基準認証団体には、Freshcare、SQF、HACCP Australia等があります。
Freshcare
取得難易度:中級レベル(露地栽培作物~施設栽培作物に適している)
Freshcareは、オーストラリアの生鮮食品業界向けの認証機関で、G.A.P.認証(Good Agricultural Practice)およびHACCP認証の原則に基づいています。栽培規模や場所に関係なく、すべての農業従事者・農業関連業者が実施できるように設計されています。
Freshcare認証で必要な栽培工程の管理記録(一例)
Freshcare認証では、以下のような栽培工程の管理記録が必要となります:
組織図
従業員トレーニング記録
リスク評価(化学物質・重金属・土壌改良剤・水)
化学物質管理記録
残留農薬記録
肥料・農薬の使用記録
水源記録
カビ・コケ管理計画
施設安全性チェックリスト
測定機器の登録
清掃計画
病害虫管理計画
食品安全指示
出荷先リスト
食品衛生管理計画
収穫およびパッキング記録
安全基準管理計画
輸出基準評価
栽培工程におけるFreshcare品質管理の流れ(一例)
SQF
取得難易度:上級レベル(施設栽培作物~植物工場栽培作物に適している)
SQF(Safe Quality Food)認証は、食品安全管理システムを必要とする世界中の食品業者に認められている認証制度です。食品の安全性と品質を保証するための包括的なシステムであり、製品の追跡を容易に行うことができます。特に施設栽培や植物工場での活用が進んでいます。
SQF認証で必要な栽培工程の管理記録(一例)
SQF認証では、以下のような栽培工程の管理記録が必要となります:
食品安全計画書
品質マニュアル
供給業者の評価と選定記録
受入検査記録
製品の追跡記録
不適合製品の管理記録
内部監査記録
教育訓練記録
設備・施設の保守記録
衛生管理計画
苦情処理記録
改善活動の記録
緊急時対応計画
HACCP Australia
取得難易度:上級レベル(カット野菜等に適している)
HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)認証は、食品の安全と衛生を管理するための手法で、欧米をはじめ世界各国で導入されています。オーストラリアでは、特に食中毒のリスクが高いカット野菜などの加工が必要な農産物において、同認証の取得が義務付けられています。
HACCP認証で必要な栽培工程の管理記録(一例)
HACCP認証では、以下のような栽培工程の管理記録が必要となります:
危害分析報告書
重要管理点(CCP)決定記録
管理基準の設定記録
モニタリング記録
是正措置記録
検証手順の記録
文書管理システム
教育訓練記録
検査・試験記録
設備・施設の保守記録
供給業者の評価記録
内部監査記録
苦情処理記録
改善活動の記録
品質管理の重要性
オーストラリアでは、農業従事者の多くが移民であり、公用語である英語でのコミュニケーションが困難な場合があります。そのため、安全第一で分かりやすく品質管理システムを構築することが重要です。また、日本で主流の多品目栽培や複雑な作業が必要な栽培は、品質管理システムの導入において障壁となることがあります。
日本でもオーストラリア同様に移民が増えており、同様の品質管理システムが必要になりつつあります。特に農業分野では、多国籍な労働力が現場で働いているため、言語の壁を超えた分かりやすい品質管理システムの構築が求められています。これにより、消費者の信頼を得ることができ、収益の向上につながります。