「メタバースで起業して1年で諦めた話 」を読んで、彼の事業について感じて居たこととかを書き出してみる
はじめに
私のフレンド兼「敵」がメタバースでの事業をたたむことになってしまった。詳しいことは以下のnoteに記載がある。
https://note.com/ashton_vr/n/n336a7d6c91ba
これまで私はnote上で彼とのメタバースに関する見解の相違があったことから、彼を名指しで批判したり、事例として取り上げていた。そういう意味で彼とはフレンドでありながら「敵」であった。
その彼が事業をたたむことになったのは非常に残念である。「敵」には「敵」らしく、私が戦いを挑むに足る「敵」であって欲しかったのだが…。ビジネスというのは難しいなぁと思った次第である。
でもまぁ、ここで「よしよしよく頑張ったね」、みたいなことを言うのは明らかにスタンスに反するし、かといって感情的に追い打ちをかけるのはいくらなんでも私だってそこまで悪魔じゃない。
そういうわけで、彼が書いた事業をはじめてからたたむまでの顛末を記したnote、要するに上に張り付けたnoteや、これまでの彼の活動を見て考えたことを書いてみようと思う。
いつもどおりnoteで書き物をする。これが私なりの、畳まれた会社に対する弔辞である。
大体、なんで彼の会社がうまくいかなかったのかの素人分析みたいな感じになると思う。でも私はビジネスの専門家じゃないので正当性は全然知りません。あらかじめよろしく。
1、やっぱり「ふわっと」やってはダメらしい
本人も失敗を認めている通り、コンサルティングの案件が何本か入ってきたことを契機に会社を立ち上げたようだが、やっぱりそういう立ち上げ方はダメらしい。
一時期彼はテレビにもかなり出ていたし、元々ウェブライターなんかをやっていたわけなので「業界人」的な立ち回りをしていたように見えた。だからメタバースやってみたい会社の人達も他の有象無象に助けを求めるより彼に助けてもらう方が良かったのだろう。そういう意味で、メタバースビジネスが順調に伸び続ければどうにかなったのかもしれない。
だがそうはならなかった。これは世界情勢のせいだとか、facebookのせいだとか、色々あるので、彼の責任にするのはさすがにはばかられる。まぁ、確かに「時代を読み切ってこその経営者だろう」という言い分もわかるが、それがわかれば苦労しないので。
営業とかもかけていたのだと思われるし、それを外部の私がどうこう言えるものではないのだが、ただよくよく考えてみれば現状のVRSNSで「コンサル」ってどういうことが必要なんだろうか?なんというか、コンサルをお願いしないといけないほどメタバースが成熟していないんじゃないか、という気もする。
この辺はメタバース観の違いもあるし、まぁ本人も失敗と認めているのであまり言及しない。
というか、本格的な問題はnoteに書かれていないことで、それはここから述べる2つのことの方が重大な問題だと思っている。
2、YouTube「メタカル放送局」は明らかに失敗だったと思う
あきらかにコストに対してリターンが見合っていなかったのが、毎週水曜日に放送していた「メタカル放送局」というYouTubeの放送だった。形式としては毎週1時間、必ずゲストを呼んで話を聴く、PRしてもらう、みたいな番組だった。正直、放送当初から私はこの放送には懐疑的だった。
いや、単純に話がツマンネー、みたいなことではなくて。
話が面白い面白くないは好みだし、つまらなかったとしてもやりようはあると思う。そうではなくて、その形式と構造の問題だ。
そもそも、よく考えてみよう。テレビ番組だとしても、毎回違うゲストを呼んで話を聴くという行為をしているのって、「徹子の部屋」とかぐらいじゃないだろうか。あとは「サワコの朝」とか?あれは終わったか…。
「徹子の部屋」はお化け番組(別に黒柳徹子をお化け呼ばわりしているわけではない。むしろ私は徹子さんのファンだ)だが、それだってスタッフの綿密な取材とゲストの深い人生経験があってこそ成り立つ番組である。放送中にチラッとうつる手元のハンドアウトもものすごい枚数がある。
さらにそれを捌くのが、日本でテレビ放送が始まったときからテレビ業界にいる、「テレビ女優第1号」の黒柳徹子だ。徹子さんだからこそ若手も、大御所も(もはや徹子さんより大御所なんていないのだが)捌いていけるのだろう。
それだけの条件がそろってさえ、CM込みで30分なのだ。
どう考えても素人が1時間でやるには時間が長すぎる。
そのうえ、毎回ゲストを呼ぶというのも良くなかったように思う。ロールモデルを「徹子の部屋」ではなくJUNKやオールナイトニッポンのようなラジオ番組にとったとしても、ゲスト回はスペシャルウィーク(馬でもウマ娘でもない)の時とか大きな番宣とか、いわゆる乱入だけだ。大体4半期に1回くらい?だと思う。
もっと別にロールモデルをとってYouTuberやVtuberの配信をモデルにしたとしても、毎週毎週ゲストというのはないと思う。「みとラジ」とか「ShapnessRadio」とかだってかなり期間が開くものだ(古参にじさんじオタク)。
というか、そもそもの問題として、まだメタバースの中に毎週ゲストを呼べるだけの「広がり」がない。
芸能界や芸人ラジオはともかく、例えばVtuberだって今や1万人を越え、企業勢だってにじさんじのように1社で100人以上を擁する集団がようやくできてきたぐらいだ。その規模感ですら「みとラジ」は不定期なのだ。
Vtuber界隈と同じくらい、せめて1万人の広がりがあれば毎週ゲストを呼ぶことだってできたと思うが…。
しかも仮にVRSNSの同時接続が1万人を越えていたとしても、大部分は「一般人」であり、ゲストに呼ばれるような「何かやっている人」ではない。そうした中から毎週ゲストを呼ぶのはそのコンセプトが現状と噛み合っていなかったといえるだろう。
そうしたことが積み重なり、「出演者募集」をするようになっていたが、それではただの番宣番組だ。「この人にはこういう部分を話してほしいから来てほしい」という形で、テーマを設定できなくてはこういうタイプの放送は成り立たないし、「ただ出てしゃべってください」じゃ話にならない。
放送の同時接続数は悪くなかったらしいが、ゲストが来るというのは、YouTuberやVtuberのゲスト回が伸びやすいのと同じで「ゲストの身内」が見に来るから数字は出やすくなる。要するに「関係者席」が広くなるだけで一般席はそんなに変わらないのだ。その違いをちゃんと理解していたのだろうか?実際「大物ゲスト」が来た時と「小物ゲスト」が来た時の同時接続数の差とかを見れば私の言ってることはわかると思う。
こういう、構造的にうまく回らない番組の割に、絶対結構な時間をかけて下準備をしていたはずなので、コストにしてリターンが貧弱すぎる、という結論に落ち着かざるを得なかった。
ただこの問題は、じゃあメタカル最前線を放送中止すればよかったか、というとそうではないのだ。結局のところ、次にいう問題が一番根本的な問題だったと思う。
3、結局ビジョンがみえない
結局のところ、一番の問題はこれだったんじゃないだろうか。この会社を通じて何をするか、この会社が目指すものがなんなのか、そういうのが、少なくとも外から見ている分にはよくわからなかった。
一応やってた事業をみてみれば
コンサル
情報発信(メタバースニュース配信)
メタカル最前線
なので、「メタバースに関する情報発信をする会社か?」といった感じ。mutalkとかmeganeXとかのデモンストレーションなんかもやっていたので、リアルでの機器販売促進とかも事業と言えるかも。
とはいえ、まぁコンサルは実際どんなことが行われていたのかは外部からはわからないからノーコメントとして、
もっとミクロにするとしても、「じゃあバーチャルライフマガジンでいいじゃん」というような気がするし、もっとミクロにしたらTwitterでいいじゃん、という感じがぬぐえない。
ついでに言えばNeosVRやclusterなどVRChat以外のVRSNSを取り上げることもあんまりなかった。
はっきりいって、単なるニュースの切り売りよりもクローズアップ現代的な「独自取材」みたいなことをやっていく必要があったんじゃないだろうか。
そして、おそらくその「独自取材」を「メタカル最前線」が担おうとしていたのだろうが、上述のような構造的な問題ゆえにうまくいかなかったように思う。
「この会社ならではの独自の視点や切り口」がないから「じゃあ〇〇でいいじゃん」という感想になってしまうように感じる。
「独自の視点や切り口」というのは結構大事で、視点や切り口次第では同じニュースに対するリアクションや評価も正反対になることだってある。
今では完全に価値中立であることが求められているようだが、そんな無味乾燥の情報なら公式のHPを見れば済む話だ。小さい情報発信こそ、独自の視点や切り口を大事にした方がいいと思う。
だが、この「独自の視点や切り口」というのこそが会社の持つ「ビジョン」ということができるのではないだろうか?
そもそも、ニュース配信や情報発信というのはある種「転売」的なものである。これは別に彼らが転売屋だといっているわけではなくて、「情報発信元がある→それに付加価値をつけて売る」という形になっているからだ。この「付加価値」が量なのか質なのかはその会社の規模次第だが。
そして「転売」的な性質があるということは、「自分ではコンテンツを生産できない」ことを意味する。ニュースそのものが生まれなければそれに付加価値をつけて売ることができないのだ。
そこが、ワールドクリエイターや動画制作者らと違うところだ。ニュース配信や情報発信者は、自らの生産手段を持たないのだ。やはり何かを動かしていくにあたっては、自分たちの手で作り、動かせる、根本となる「何か」が必要だと私は考えている。ビジネスの基本はたぶん、「作る。売る」なのだ。
結局、今回畳まれた「合同会社アシュトンラボ」は何を売る会社で、どういうスタンスの会社で、何をめざしていたのか。
それがわからなければ、コンサルだって頼みづらかったのではないだろうか?
ただ、これはビジョンを示せなかった代表本人の問題「だけ」ではない。まぁ、個人的には代表というのは大きなビジョンだけ示してあとは有能な副官に支えてもらえばいいと思ってはいるのだが。
周囲の、というか彼を支える周りの副代表?とかそういう地位の人はこうしたビジョンを持っていたのだろうか?
何がしたくて彼についていこうとしたのか?
代表と周りを支える中核メンバーで話し合い、社としてのめざす向きや色、立場をもう少し明確にすることはできなかったのだろうか?
ありきたりで教科書的理想論になるが、やはり会社…いや、どれだけ小さな団体でも(それこそイベント組織とかでも)、「代表が大きなビジョンを設定し、副官がそれを補強し、実行に移し、一般メンバーは求められる任務を確実にこなしつつ現場の感覚を副官に伝える」という組織のあり方を形作らなければならないのだろう、というのがまぁ結論的なことだ。
おわりに
これは本当に言っておくけど彼に対する追い打ちじゃないです。まぁ、追い打ちと取られたら、そうですね…、副官の人に対する追い打ちとしておきましょう。
2人の副官のうち1人とは面識あるから許してくれるでしょう(適当)。
面識のない方は…まぁ私の事をブロックしてください。あるいは反論をぜひ。
ともあれ、彼はまだ若いので、ぜひ再起してほしいかなと思います。
冒頭にも言ったように、「敵」には元気で強大な「敵」をやっていてもらわないと私だって闘いがいがないですから。
本noteに対する批判、批評などは全て開かれている。Twitterなりコメント欄なり、あらゆる場所で「常識的な範囲で」何を言ってもらっても構わない。思うことはしっかり、言葉に残してほしい。以上でまとめを終える。
再起してきたらまた闘うぞ!
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