ブランドの価値とは

短パンを穿いた付け焼き刃レディたちが
腕を組んでチンピラにぶら下がって歩く――

という一節で直ちに中島みゆきの「あたいの夏休み」を思い出す人は結構いい歳していると思いますが、まさにこの間別荘地、軽井沢に行ってきたのです。

なぜ行くことになったのかという説明は省きます。ともかく友人たちと連れ立って軽井沢に行ってきたのです。

我々がそこで見たのは短パンを穿いた付け焼き刃レディたちではなく、並び立つブランド直営店。軽井沢駅の南口にはブランド品のアウトレットモールがあったのです。

せっかく軽井沢まで来たのだし、ちょっと手近な店舗にでも入ってみようということで我々が入ったのはプラダ。そこで我々が普段目にするものがないことに気づきます。

そう、商品の値段表示がないのです。

つまり軽井沢に来るような人は、買うものの値段を気にしなくていい人たちなのです。資金は潤沢にあるので欲しいものは値段を気にせず買っちゃう。きっと買ったものも店から手に持って出ていくということはせず、別荘か自宅に配送されるのでしょう。ちなみに探すとちゃんと値札があるやつもあって、ネクタイは1本2万6千円くらいでした。お高い。

そしてそのような店構えをしているのはプラダだけではなく、目に入る他の高級ブランド店すべてがそのような感じでした。日用雑貨の店には値札がありましたが、だいたい安くても1万円から、それも元値の半額にまで下がってその値段です。たしかにいいデザインの置き時計ですけど、元値が2-3万円で、それが半額になったとしても置き時計に1万円や1万5千円を払えるかと言うと私には無理。結構大きかったし。

サングラスや腕時計なども平気で数万円から数十万円の値札をつける世界。店内を見て回っていたら、私は店員に後をつけられていました。疑う気持ちもわかりますがね。

そして駅の北口には別荘地専門の不動産販売店があって、そこも数千万円から数億円の別荘や土地を扱っていました。貼り出された物件一覧のうち9千万円ちょっとの土地は商談中となっており、景気が良かった時代はこの一覧にある物件は殆どが商談中か売約済みとなっていたんだろうなぁと思いましたが、そんな中に1200万円の別荘付きの土地が。

その別荘は林道の脇に立つ小屋のような建物で、きっとこういうのは「軽井沢に別荘を持っている」というステータスが欲しい人向けの、見栄を張るための物件なんだろうなぁと思うと、軽井沢という土地に集う人たちが見えてきたような気がします。

アウトレットで安く売られるブランド品。虚栄のための不動産。もともと高級ブランドの良さというものを理解しない我々は「きっと生地が違う」「縫製も違う」などと話しながらアウトレットのいろんな店舗を見て回っていたのですが、果たしてそれらにはそれだけの価値があるのか、高級ブランドは高級ブランドの名前だけでその価格を釣り上げているのではないかなどということを考え、そのようなものを身に着けて自らを誇示することを考えると、果たしてそれが金の使い方として真っ当なのか、ということを考えてしまうのです。

自由に使える金が何百万円もあったら、私は文化財の保護や医療関係の研究に出資したいと今は考えているけれど、もしかしたら私も同じ立場になったら同じように着飾り、己の財力を誇示しようとするのではないか。そう考え始めるととうとう人間とは何か、社会的な責任とは何か、人のあり方とは何かということに考えが至り、人の欲が透けて見えるこの街で金の価値やブランドの価値がわからなくなってきました。

そう、ここはあらゆるものの値段が釣り上がる軽井沢の街。土産物屋の菓子は他で買う似たようなものよりも倍近く高価で、喫茶店のアイスコーヒーも450円では飲めないのです。いや喫茶店のアイスコーヒーは値段相応の美味しさでしたけど。

物の価値がわからなくなってきた我々が、地に足つかない状態で漂い続け、最期に流れ着いたのはG-SHOCKのアウトレット店。

「すごい! GPSに気圧計、高度計、方位磁針まで付いている!」

「こっちはBluetoothでスマートホンに接続して運動量を管理できる!」

「見ろよこのデザイン! ボディだけメタリックだ! イカしてるぜ!!」

「それなのにこの値段!? 機能に対して安い!!」

どこに行っても変わらないG-SHOCKの評価基準。それはタフネスと多機能、そして機能美。こうして私と友人は、時計の現在時刻を合わせるかのごとく、G-SHOCKによって物の価値観というものを較正できたのでした。

どんな時計よりもタフで役立つ機能が満載、そしてお値打ち価格。ときには進むべき道を示してくれる。みんなもG-SHOCKを買おう。

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