なぜ作られたかわからない「大怪獣のあとしまつ」ネタバレ感想

見えている地雷原に全力ダッシュで突入する羽目になったいきさつ

 そもそもなぜこの映画らしきものを見に行ったのかと言うと、この映画の評判があらかた広まったあとで、Twitterにおいて「奥田さんにはオススメの作品です!」などと言われたからなのです。私を何だと思っているんだ。たしかに私はクソアニメ実況とかするほうですし、映画も好きなのですが、クソ映画は「デビルマン」「悪魔狩り リミックスバージョン」「プラネット・オブ・ザ・デッド」くらいしか見ていませんし、クソ映画を見る比率なんて本当に微々たるものです。しかし直接名指しでおすすめされたからには見ないわけにも行きません。かくして休日の130分と映画チケット1800円を犠牲に、悪評高いこの作品を見ることになったのでした。実写版デビルマンよりひどいとか言われている作品の真偽を確かめたかったというのもありますが。

 タイトルにもありますが、ここから先はネタバレ満載の感想になります。それでもいいという方のみお進みください。

それで実際どーだったのよ

 全体的な感想としては「なぜこんなものを作った?」といった感じです。笑わせる気のないギャグに粗が目立つ設定、整合性を取ることを放棄した展開、どれをとってもマトモに映画を作るつもりで撮影したとは思えません。それでいて役者がきちんと縁起を全うしているのが悲しい。全て見終わった私は頭痛に襲われ、なにかとんでもなくひどいものを見たあとに出るおののきが出始め、しばらく体に力が入らず手すりを持ちながら映画館をあとにしました。

 映画が始まってすぐ「にばんかん」と呼ばれる巨大な物体が航空機で輸送されているのを見上げる人たちのカットが入ります。相当有名なもののようですが、この「にばんかん」とやらは一体何なのか、最後まで説明はありません。ひょっとしたらあったかもしれないけど聞き流していたかもしれない。なので忘れていただいても大丈夫です。

 ことの始まりはその直後、主人公が「特務」と呼ばれる機関に呼ばれて同窓会を抜け出すシーンからです。何でも突如現れ突如謎の光に包まれて死んだ怪獣の温度が上昇しているとか。内部で腐敗が進み、その反応で熱を発しているらしい。よく浜に打ち上げられたクジラの死体に溜まった腐敗ガスが死体を破裂させるとニュースになるアレですね。そこまで見るニュースでもないかもしれませんが。さてそうなっては解体の上焼却処分するのが一番現実的かと思われますが、各省庁の大臣が

「観光資源にしよう」

などと言い出すもので。既に腐敗が始まっている以上、何の対策も取らなければ怪獣の体が破裂して衛生的な面で大きな被害が出るというのに。とは言っても、この怪獣、どうやら通常兵器を一切受け付けなかったそうなので、解体作業は非常に難しいでしょうし、どうにかして腐敗しないようにするほうが先なのもわかるし、その期間中は観光資源にできないかと考えるのもわかる。わかるんですがなんで削岩機で穴を開けて腐敗ガスを逃がす措置を取ってるんですかね。それ通常兵器が効かないのに削岩機は通すんだ。凄いな削岩機。かみをばらばらにするチェーンソーかよ。

 話は前後しますが、なにをするにもまずは情報がなければなんともならないので実際に怪獣に近寄ってみたところ、腐敗によって膨張した体表面があったので棒でつついてみたら破裂、全身に怪獣の腐った体液を浴びる特務隊員が出てきますが、特に防護服等を身に付けておりませんでした。不用意すぎないか。

 省庁間の責任の押し付け合いや管轄争いと言う名の足の引っ張り合い、国防軍(2型迷彩を着て89式を持っているし車両はまさに自衛隊のものだが自衛隊ではない)の作戦の失敗や、話に深みを出したかったのか知らないけれども何の役にも経ってない人間ドラマもあったりして話は進んでいきますが、とんでもなく説明しづらいのでだいたい飛ばして映画の中盤まで話を進めますと、怪獣が倒れているのが革であるのをいいことに「ダムを破壊して水流で海まで押し流そう」という案が実行に移されることになります。これには主人公と過去に確執がある発破の天才が指揮を取ることになるのですが、その確執というのがちゃんと説明されていたのにも関わらず何も理解できなかったのは私の理解力が足りなかったからでしょうか。まぁここまで見ているとあまりの酷さに「とりあえず見てはいるけど観てはいない」という状況でしたのでお許しください。ともかく水流で押し流す作戦はダムを管理していた国土交通省が足を引っ張ったせいでダムの爆破に失敗、発破責任者が爆雷でダムを破壊するも怪獣は少し動いただけで海まで流されることはなく、ただ口を川上に向けて倒れていたのでそこから水が入り、怪獣の体内を少し破壊したのか腐敗ガスが溜まっていたのを少し減圧していました。なお腐敗ガスが溜まっている部分が人形を作る風船みたいに膨らんでいるのはなぜなのか、私にもよくわかりません。

 2度に亘る作戦失敗を受け、途中提案されていたものの一度却下された(と説明されていたけど明確なシーンはなかった気がする)案が実行されることに。なんでもガスが溜まった隆起に穴をいい具合に開けて竜巻を起こし、ガスを拡散させることなく大気圏外に排出するというもの。風船みたいに膨らんだ突起の下部2箇所に、突起の側面に沿うようガスを排出できるように穴を開け、更に頂点に穴を開ければガスは大気圏外に届くと言うが、この突起の中に入っているガスの気圧は最大でもたったの500kPa。まずもって無理だと思うが、まぁそこは寛大な心で許してさしあげよう。他にも言いたいことが多いしな。

 並行して、怪獣の体内から排出されるガスに、生体に悪影響を及ぼす菌の存在が確認される。生体にきのこを生やす未知の菌……未知の菌なのにやることが「きのこを生やす」なのか。生体に直接きのこを生やすのは確かに凄いと思うけどさ。ここからこの映画……映画? のクソっぷりが加速します。立ち入り禁止区域で動画を撮っていた一般人が、先の水流作戦で怪獣の体液を全身に浴び、全身からきのこを生やした状態でどこかの研究施設に横たえられていました。全裸で。これに関して大臣が「なんで股間のきのこだけ種類が違うのか」などと全く面白くないギャグを言っていましたが、この映画でギャグが飛び交うシーンは全部こんな感じなので気にしたら負けです。もう笑わせる気がないとしか思えない。ところで冒頭で怪獣の体液を全身に浴びた特務の人がいるという話はしましたよね? 特に彼らの体からきのこが生え始めたとかいうシーンはありませんでした。そこんところもうちょっとしっかりしてほしかった。ちなみにこの菌、体液だけでなく噴出するガスに触れてもアウトっぽいです。恐ろしいな。

 そんな危険なガスを、穿孔手段が小型ミサイル(見た感じは11式短SAMに見える)という大雑把な方法で先の案を実行したら大変なことになる、おまけに主人公がもっと確実な方法、つまり直接怪獣の体に登り穿孔するというのでメインヒロインが止めに走るのですが「ミサイルの精度はミリ単位だ」と却下されます。凄いなそのミサイル。多分半数必中界のことを言ってるんでしょうけれども、どうやって精度をミリ単位まで高めたのか、どうやって計測したのか、そもそもそんな精度は必要なのか疑問は尽きませんがともかくミサイルは発射されます。主人公が既に怪獣に登っているのに! 最初の2発はヒロインに協力する人の操る携帯型SAMで落とされますが(なんと1発で2機撃墜する大戦果)、最後の1発が主人公が穴を開けたところに着弾、主人公を怪獣の上から弾き落とします。死んだな

 と思ったら生きてました主人公。発射を命令した総理大臣補佐官は主人公を過去に怪獣を殺した光となにか関係がある存在だとにらみ、それをミサイルで試していたようです。さすがの私もその暴力的な手法には絶句するのですが、ここでなんと主人公、心配して駆けつけたヒロインをよそに、いきなりスマートホンのようなものを取り出して天に掲げ「Deus ex machina」と呟くや否や光に包まれ、巨大な人のようななにかに……おわかりですね、某光の巨人のパロですよ。上映前の予告で「シン・ウルトラマン」の予告もやっていたというのによくもまぁそんな恥知らずなことをできたものだ。そうして登場した光る巨人は空を飛び、怪獣を大気圏外まで運び去って行ったのでした。触れるときのこが生えるガスを当たり一面に撒き散らしながら。敬礼の姿勢を取り「ご武運を」と言いながら、それを見送るヒロイン。「ご武運を」じゃあないんだよ。そして唐突に映画が終わります。何を言ってるのかわからないかもしれませんが、私も何が起きたのかさっぱりでした。

総評

 映画じゃないです。コメディ作品を目指したんだろうけれども中途半端にシリアスでどっちつかずな雰囲気の中、全く笑わせる気のないギャグと整合性を無視した展開、例えるなら「やりたかったことを全部やってとりあえずつなげてみた」だけの映像作品に見えました。引き込まれる要素皆無。途中から死んだ目で見ていたので、他の方々の感想よりも内容の理解度で劣るところがあるのは認めますが、私としてはこのような評価にせざるを得ません。でも少なくともデビルマンよりはマシだと思います。

 這々の体でショッピングセンターの一角にある映画館を出た私が目にしたのは、輝ける太陽のもと、買い物を楽しむ人、家族で団らんを楽しむ人、オシャレに着飾ってショッピングセンターを歩き回る人たちでした。ああ、世界には光が満ち、喜びと楽しみに溢れている。皆さんも休日にはどこか陽の光が差すところで、なにか好きなことをなさってはいかがでしょうか。いいですか、陽の光が差すところ、ですよ。

 死んだ目とはいえ最後までちゃんと見たのですが、エンドロール後に「今作の半分の予算で次回作を作る」という旨の予告が入っていました。正気か。ただでさえ今作でもCGの安っぽさが目立ったというのに

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