ジョンホン身辺雑記_52
おれには悪意に対する特別な理解がある。
悪意は、寂しさや悲しさや怒りといったネガティブな感情から生まれる。
何か大切なものを奪われたという、からだをナイフで本当に削り取られたような、自分の中にできた空洞から悪意は生まれる。
誰だって一度や二度は人を殺したいと思うような悪意を持ったことがあるはずだ。
でも、何かが歯止めをかける。
その人の空洞から生まれた悪意が、その人の空洞の底で止まり、やがて忘れられて、別のものに、たとえば仕事に対する熱意のようなものに変わったりする。
彼に感じるのは、底のない空洞だ。
彼には間違いなく底のない空洞がある。
その空洞が彼に嘘をつかせる。