ジョンホンの身辺雑記_12_『ありふれた事件』
欲求とリアリズムの関係を想像力によってどうするか。それが小説や映画の技術。根底は、リアリズム。
……と仮定するとだよ、一つぶちあたる壁がある。
ーー「殺人」だ。
よく俳優や芸人は芸の肥やしになるから何でも経験しろと言われる。
俺も、倫理・モラルを置いておくなら同意する。
では、「殺人鬼」の役に配役されたら?
「殺人」だけは別だ。想像力だよ、と映画人は言う。
『ありふれた事件』(1992)という映画がある。
殺人鬼の姿をドキュメンタリー映画スタッフが追っていく。殺人する瞬間も映し出す。
フェイク・ドキュメンタリー(モキュメンタリー)映画なのだが、スクリーンに存在するブノワ・ポールヴールドが、現実においてもサイコパスで平気で人を殺してしまうような人間なのでは? とまで錯覚してくる。
リアリズムとリアリティが異なることは理解している。
ただ、想像力も色々なことを体験して強度を増していく側面はある。
作家なら一度は考える、避けては通れないアジェンダなのかもしれない。