炭酸リチウム

君がいないと僕は死んでしまう。僕には君が必要なんだ。

だけど君がいると、自分が自分でなくなる。

君を初めて飲んだ時から、僕は自分を見失った。いや、元から僕なんて人間は存在していないのかもしれない。

ドーパミンとリチウム。この二つが僕の感情を支配する。だから僕は本当の自分の感情を知らない。

僕が下すあらゆる決断は僕の意思ではない。じゃあ一体誰の意思の下、僕は生きているのか。僕には分からない。だからとても苦しいんだ。

とうの昔に自己決定権を手放したのに、我こそは実存主義の実践者だと思い込んでいる滑稽な男。

確かに君を飲み始めてから僕の気分は安定した。激しい躁状態にも鬱状態にも陥らなくなった。常に65点の気分が続く。

整理整頓された小綺麗な部屋の中に軟禁されている感覚だ。

もっと自由を感じたい。心の底から自分の感情で生きてみたい。囚われの身で誰かのマリオネットとして生きるのはもうたくさんだ。

君を飲むのを止めようかな。だけど君を飲まなければ、代わりにドーパミンに支配されるだけ。

死んだら自由になれるだろうか。この苦しみから解放されるだろうか。死の代償として、僕は新たにどんな罰を受けるのか。

僕には選択肢がない。僕は人生の無期囚。死ぬまで囚われの身さ。

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