無力感に苛まれる人へ
自分は昔からスポーツ観戦が好きで、特に野球に関しては中学生頃からテレビでよく観るようになった。
今も昔も好きな野球選手はたくさんいるが、今回は川﨑宗則選手の自伝本『逆境を笑え』をご紹介したい。
この本で学んだことは、壁にぶつかった時、無力感に苛まれた時でも立ち止まらず、
更に一歩踏み出す勇気を持つことの大切さだ。
今苦しい状況にいる人、逆境に立たされている人、自分を非エリートと思っている人にはぜひ読んでみて欲しい。
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口語調で、文章としては決して読み易くはないが、その分等身大で言葉が入ってくる。
川﨑選手は、1999年に高卒ルーキーとしてダイエーホークスにドラフト4位で入団した。
プロ球団からドラフト指名される選手なんて、昔からスカウトに注目されていて、
名門高校に入学して、甲子園に出て、そこでバリバリ活躍して…という抜群の実績を持っている超絶エリートが大半だ。
しかし、川﨑選手の経歴は至って普通。
中2まではベンチ、高校は地元の野球名門校を目指すもお声がかからず。
そこそこの強豪校へ進学するが、甲子園にも未出場。
最後の夏は鹿児島の県大会4回戦敗退だそうだ。
そんな川﨑選手がなぜプロ野球選手になれたのか?
ご本人はスカウトに指名理由を聞いたことが無いそうで分からないそうだが、
「もしかしたらこれが良かったのかな」と思われる武器が2つある。
走力と肩の強さだ。
だが、これらの能力は闇雲に練習して伸ばしていたわけではない。
高校進学の時点で、甲子園出場が難しいと感じていた川﨑選手は、プロ野球選手になることを第一目標とし、
高校の部活をプロの入団テストに向けた準備期間へと切り替えていた。
入団テストの一次試験はダッシュと遠投だということを調べ、
その2点を徹底的に強化したそうだ。
全体的に平均点やや上を目指すのではなく、戦略的に考え、自分なりの武器を磨き上げた結果、スカウトの目に止まったのだろう。
しかし、本人はそもそも高3の時点でプロのレベルに達していないと思ったとのこと。
そのためドラフト指名は寝耳に水だったとか。
そして意を決してプロの世界に飛び込んだ川崎選手だが、案の定というか、本当に歯が立たなかったそうだ。
周囲とレベルが違い過ぎて、ただただ無力感に苛まれる日々。
自慢の方や走力も、特に際立ったアピールにはならない。
練習すればミスばかりで、なんで自分がプロにいるのかも分からない。
悩み苦しんだ川﨑選手は、実家のご両親に電話をかける。
『もう辞める』
『元々プロになる力なんて無かった』
『光が見えないんだ』
この電話を受け、お母さんが実家から飛んできたそうだ。
来てくれたお母さんに対し、川﨑選手は愚痴や悩みをぶちまけ、禁断の言葉を口にしてしまう。
『死にたいよ』
ここまでの絶望的な状況に追い込まれていた川﨑選手だが、
実はずっと欠かさず続けていたことがあった。
二軍の打撃コーチとの、練習後のトスバッティングだ。
最初のうちは、なんでしんどい練習後に?という後ろ向きな気持ちがあったそうだ。
しかし、どん底を彷徨っている中で、自分が一番下手なんだから、
誰よりも練習するしかないという思いを強くし、真面目に取り組んでいた。
どれだけしんどい時にもサボることなく継続していた練習が、ついに花開く時が来る。
ある時期を境に、唐突にヒットが出るようになったそうだ。
練習ではうまくいかなくとも、試合では結果が出る。
小さな成功体験が、少しずつ自信を持たせてくれる。
それにより練習に身が入るという好循環。
ヒットが出たのはたまたまかもしれない。
しかし、小さな成功体験が自分を勇気づけてくれる。
その後の川﨑選手の活躍については、皆さんご存知の通りだ。
鳴り物入りでプロ選手になったものの、プロのレベルの高さに圧倒され、
挫折を覚えてそのまま引退してしまう、という選手は実は少なくない。
子供の頃からエースで四番、周囲から注目されてきた才能あふれる人が、
初めて組織の1番下のレベルになった時に、その現実を受け止めきれないのだそうだ。
川﨑選手の話は、組織のルーキーだけでなく、今現在無力感に苛まれている人にも通じる部分があると思う。
川﨑選手のプロ入り前の経歴は、お世辞にも輝かしいものではない。
少なくともエリートとは言えないだろう。
そんな中で、エリート集団に飛び込み、1番下の立場でもがき苦しむ。
いつ心が折れてもおかしくない状況だ。
しかし、そこで悲観的になって立ち止まったりせず、少しずつでも光を求めて前進する。
苦しい時こそ一歩前へ出る。
そういうことの大切さを感じさせてくれる、しかし等身大の言葉で話しかけてくれる、優しい一冊だった。
追記)
川﨑選手は2018年に自律神経失調症を発症したが、現在は元気に活躍されている。
ずっと気持ちを張り詰めて無理をされていたのだろう。
戻ってきてくれて本当に良かった。
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