Op.002【書評】青山さとる『たった3か月でTOEIC(R)テスト940点! 47才中年サラリーマンの奇跡を呼ぶ勉強法』ダイヤモンド社 2016年 全206頁
はじめに 1-5
序章 英語コンプレックス歴35年。ずっと英語が苦手だった 17-36
第1章 成功への戦略 私が3か月で結果を出したダメ中年の「メリハリ大作戦」37-84
第2章 成功を約束する問題集の選び方・使い方 85-108
第3章 試験日も勉強法も工夫次第!本番1か月前までの計画の立て方・守り方 109-154
第4章 モチベーションをコントロールする7つの「頑張らない」 155-184
第5章 本番にピークをもってくる!本番1か月前の過ごし方185-203
あとがきに代えて 204-206
青山さとる氏Blog等はなし
本書は氷河期世代のくすぶっている方々にも特にお勧めしたい。
47歳の自称落ちこぼれサラリーマンがリストラ寸前という崖っぷちの憂いにあい一念発起して、TOEIC試験を3か月で940点を取得した成功体験記である。自分のことを「冴えない人間」と自己肯定感の低い方にも勇気をくれる一冊である。
ただ一つ注意点としてはかなりざっくり感が否めない。1日30分で3カ月(単純計算で45時間)は940点を取るには少なすぎるという点で何重にも張り巡らされたフィルターや誇張を取り除く行間を読む作業が必要と考えられる。
そうした点を意識せずに読んだ印象としての書評を以下に記載するため、実際の勉強時間には疑義が生じる点を強調しておく。現在著者と同じ47歳であるが帰国子女の私でも45時間は年齢と略歴を考えて少し少なすぎると感じている。
はじめに
ゲーム感覚のアンケートがあるがそれに該当するダメサラリーマンでも人生を変える投資が出来るというお話。青山氏が一貫して守ったの、以下の三つである。
①断捨離
②工夫
③迷わない
序章 英語コンプレックス歴35年。ずっと英語が苦手だった
序章は、この物語の登場人物である青山氏に感情移入するためのいわゆる導入編である。 お気に入りは「アイム ジャパニーズ」事件。英語が苦手な方なら一度は経験がありそうな英語を嫌いになる逸話だろう。そしてサラリーマンとして中年を迎えた同期会での厳しい現実。私自身なかなか身につまされる思いになった。とことん落ち込んだところでさぁ、立ち上がろう冴えないサラリーマンたちよ。
第1章 成功への戦略 私が3か月で結果を出したダメ中年の「メリハリ大作戦」
第一章では、TOEIC試験を受験すると一念発起した青山氏の一貫した学習計画について書かれている。はじめにでも触れたが、青山氏の計画は一貫してシンプルである。大事なことを決めて、他には目もくれない。敢えて捨てていくスタイルと言えるだろう。
①「やること」「やらないこと」を決めて守る
②受験までのスケジュールを戦略的に立てる
③モチベーションをコントロールする
57頁のロードマップは先日紹介したAki氏のロードマップとは階層が異なる。後日比較記事を投稿するとして、とにかく点数を目標としていない出来るだけ成果を上げるために最初の2週間ですること、その後にすることととてもざっくりとした計画を立てている。
「引かない」「作らない」「こだわらない」「やらない」「かけない」と清々しいほど無駄だと思ったものをバッサリと切り捨てていくのが爽快だった。
第2章 成功を約束する問題集の選び方・使い方
第二章は独学者の方には特に気になる章だろう。ここでもばっさりと無駄を切り捨てていく。青山氏の主張に対してとても共感しつつも反したことをしたのが、「レベル別の問題集を買わない」という点である。理由も賛同できる内容であったが、試験の内容を理解する、慣れるという点においてだけ私は青山氏の主張に逆らって以下の書籍を購入している。
TEX加藤『TOEIC L&R TEST 入門特急 とれる600点 (TOEIC TEST 特急シリーズ)』朝日新聞出版 2019 全328頁
このあたりのルール付け、実際に使用した参考書、おさらばした参考書を理由も述べて記載してくれており、計画した勉強法がマッチすればこれらの書籍を購入するのも判断する時間を省略できるだろう。ただし、青山氏のように明確な指標を自身に持ったうえで判断してもらいたい。
第3章 試験日も勉強法も工夫次第!本番1か月前までの計画の立て方・守り方
第三章は日々の学習スケジュールや勉強場所等に関する助言が彼の実体験とともに記載されている。特に57頁のロードマップに合わせた形式で123頁に3か月前から試験日までの勉強スケジュールのコツが図解化されている。図解化は思考の整理に役立つので是非学習計画の際におススメしたい。他にも常に前倒しに進めていく青山氏のスタイルに本当に落ちこぼれだったのだろうかと疑いたくなるような仕事に対する基本的な姿勢がみられた。余裕を後に持たせることによって精神的な安定を図る行為や休むべき時に休むなどかなりメリハリある日々を過ごしていることが分かる。学習のバランスもかなり的を射ており「分量をバランスよく」は生徒にも伝えてみようと思う。
第4章 モチベーションをコントロールする7つの「頑張らない」
資格受験等の試験学習において「継続学習」は基本であるが、第4章では47歳の青山氏らしい達観した物事の捉え方が興味ぶかい。とにかく頑張らないことによって学習を安定して維持する秘訣を述べている。
一見矛盾しているような表現であるが、これは本文を読んで納得して欲しい。
第5章 本番にピークをもってくる!本番1か月前の過ごし方
第5章では本試験におけるPartの一部に関して、コツを記載してくれている。新形式になっても通じる部分はあるためとても参考になる試験対策と言える。残念ながら各Part毎に試験対策については言及されていないため、本書においてその点が物足りないと感じた一点である。
あとがきに代えて
TOEIC試験を通して、青山氏が実感した成長について触れている。ただの試験であるが、挑戦したことによって人生が変わったことは事実であり、また彼自身のスキルにも変化をもたらしている。自分にコンプレックスを持つ人間、歳を理由に諦めている人にエールになればいいと思えるいい文章で合った。
【書評を終えて】
読了後は物語を読んだような気分であったが、賛同しない意見も多々あった。ただ無駄と思うものを切り捨てて目標達成のために必要なことをするという点では自身が895点を旧試験で取得したときの経験と照らし合わせて共感できる部分もあった。かなりざっくり書いているため、馬鹿にされていると感じた読者もレビューをみる限り多くいるが、事の真相が虚偽や誇張が多くあれば問題である。しかし、その虚偽や誇張も騙された馬鹿が馬鹿みたいに900点越えを起こしたなら、創作上の物語としてついていいウソの部類と思える。
2022/07/03時点でAmazonレビューは33個、内星5つ 31%、星4つ 17%、星3つ 18%、星2つ 17%、星1つ 17% となっている。レビューの内容も低評価は、本書に記載されている内容に対する疑義について。30分を強調しているが他にもしている時間がある。リストラ候補というが、それまで何をしていたのか。高評価をつけるのは、鵜呑みにする人間だけだ。等々のかなり辛辣なコメントが低評価に集まっていた。
書籍の略歴は常に確認するが、本書において著者の出身大学・所属企業についての記載は一切なかった。Amazonの著者略歴は以下の通り、もう少し詳しく書かれていたが、やはり出身大学や職種など経歴に記載が少ない書籍は少し読者も構えるのが現実だろう。
「山口県生まれ。高校3年生の春に受けた全国模試で、英語の偏差値が35。首都圏の私立大学を卒業後、マスコミ企業に営業職として入社。主に国内営業部門に勤務。
入社25年目の秋、リストラ対象部署への異動を機にTOEIC受験を決意。「平日朝30分」「日本語先読み」「辞書を引かない」など、メリハリの効いた勉強法で3か月後に940点を獲得。リストラ候補から一転、国際イベントの担当に抜擢された。「サラリーマンはTOEICで人生を変えられる」をモットーに、英語コンプレックスの中年サラリーマンを救うべく、活動中。新形式TOEICでも975点を維持している。」