感冒薬について思うこと

診療所を運営しています、ジョナ作と申します。

この時期は上気道の感染症が流行ります。
「風邪」には様々な病気が含まれますが多くはウイルス性です。
風邪薬に対する処方の選択は中々奥が深いと常々感じます。
今回はcommon cold(風邪)について思っていることを書こうと思います。
 


アセトアミノフェンという、総合感冒薬


風邪薬と言えばカロナールといった具合に、アセトアミノフェンはスタンダードな処方となっています。
市販の「総合感冒薬」にもアセトアミノフェンが含まれるものが多くあります。
アセトアミノフェンは、本当に風邪を治す薬なのでしょうか。
論文によると、下記の様な機序で、アセトアミノフェンは解熱・鎮痛作用を発揮している様です。

①中枢性セロトニン作動性メカニズム
ラットやヒトでの実験で、脊髄神経系の5-HT3受容体の賦活化がアセトアミノフェンによりもたらされ、下降性抑制性疼痛経路を強化すると考えられているそうです。
②COX阻害作用
アセトアミノフェンは、脊髄、視床下部などのシクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害作用によりプロスタグランジンH2合成を阻害し、鎮痛に寄与する
③視床下部における体温調節中枢に作用
上記のCOX阻害作用による解熱の他、視床下部のドーパミン、ノルアドレナリン神経に作用して熱放散の増大(つまり解熱をもたらす)に関わっているとのことです。
④その他:カンナビノイド受容体(CB1)の活性化作用など
アセトアミノフェンには鎮痛作用以外にもリラックス・多幸感の作用があることが示され、カンノビノイド(大麻の成分)と似た作用があるのではないかとされているようです。
 
①-④からは、
「アセトアミノフェンは、中枢神経系に効く解熱鎮痛剤であり、風邪の一般的な症状にも効果がある薬」
と言う表現が、個人的にはしっくり来ます。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、「末梢神経終末での炎症物質の酸性阻害作用」とされているので、
アセトアミノフェンとNSAIDsでは、作用部位と機序がかなり違うという事が分かりました。

総合感冒薬のコンビネーションにお勧めはあるのか


このメタアナリシスでは、風邪薬のコンビネーションによる検討がされています。
具体的な薬剤は文献によるため下に列挙しました。
1.総合評価(症状が対照群に比べどの程度軽減したかオッズ比で表示)
2.副作用
で、アウトカムが比較されています。

①抗ヒスタミン剤+充血除去剤:効果はほぼなし、副作用は有意にに増える

①抗ヒスタミン剤+充血除去剤

②抗ヒスタミン+解熱剤:効果あり、副作用は「眠気、過眠、過度の眠気」

②抗ヒスタミン+解熱剤

③解熱剤+充血除去剤:効果なし+副作用増える

解熱剤+充血除去剤

④抗ヒスタミン+解熱剤+充血除去剤 5日後だと効果あり、副作用は上記と同様

④抗ヒスタミン+解熱剤+充血除去剤:次の日の朝は効果なし


④抗ヒスタミン+解熱剤+充血除去剤3日後は効果なし


④抗ヒスタミン+解熱剤+充血除去剤 5日後だと効果あり

これらのコンビネーションの中では
②抗ヒスタミン+解熱剤と、④抗ヒスタミン+解熱剤+充血除去剤
が良さそうです。

充血除去剤:
エフェドリン、プソイドエフェドリン、フェニルプロパノールアミン、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフチルイミダゾリン
抗ヒスタミン薬:
アザタジン、ピリラミン、ジフェニルピラリン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、デキスクロルフェニラミン、ドキシラミン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、フェニラミン、トリプロリジン、プロメタジン、ロラタジン、デキスブロムフェニラミン、カルビノキサミン
鎮痛剤:
パラセタモール、NSAID(アセチルサリチル酸、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン)またはアミノフェナゾン

個人的には葛根湯推し


ちなみに下記の文献では「一般風邪薬」より、葛根湯の内服では患者の改善効果が良かったとする文献も見られます。
私も初期の風邪には日本発祥の漢方薬である、葛根湯を押しています。

 

あとビタミンCも最強

ビタミンCは、風邪になる前か風邪になった24時間以内に飲むと有病期間が大幅に短縮する事が知られています。
ビタミンCは水溶性ビタミンで、かなり多量に摂取したとしても、過剰摂取となるリスクは低いです。

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6124957/pdf/10.1177_1559827616629092.pdf

結論


通常の風邪薬には様々な投与パターンがありますが、効果がいまいちで副作用が有意に増えるものもあり注意が必要です。
風邪をひきたくない方は、寒い時期には予防的にビタミンCを内服し、
風邪になったら早期に葛根湯を飲む、
症状が長期化したときはコンビネーションを使う
のがお勧めです。

あと、個別の病原体に対する治療が受けられる場合は個別に治療をしましょう。

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