医師国家試験を解く- 114D71 高齢障害に生じた意識障害とその対応【Ankiを用いた学習法】【思考プロセス】
まずは問題から。
脳内で考えていることを、言語化しながら解く
今日は、ジョンが普段問題演習をする時に行っていることを、一部紹介できれば、と思っています。
皆さんは、筋トレ、したことありますか。
腹筋とか腕立て伏せレベルであれば、高校、中学の体育の時間にやらされた人も多いのではないでしょうか。その時の筋トレとの向き合い方は、人によって大きく違います。
「とりあえずフォームは参考程度に、回数をこなす人」
もいれば、
「フォームを丁寧に、着実に重量上げる人」もいる。
自分は多分後者。
そして似たようなことが、問題演習に於いても、言えるのではないかと思うのです。
つまり、
「問題の理解は参考程度に、ギャンギャン問題を解いていく人」
もいれば、
「1問1問の復習を丁寧に、確実に問題を解き進めていく人」もいる。
またもや自分は後者。
筋トレと勉強という一見異なる分野で、それに対する向き合い方が似ている、というのは面白い発見です。
閑話休題。
つまり今回は、「1問1問の復習を丁寧に、確実に問題を解き進める」方法について。具体的にお話する、という内容になっています。。
しばらくお付き合いください。
問題文を見て感じたことを、メモする(タイピング速度必須)
これは、私がこの114D71 を解く時に残していたメモです。
この文章がそれぞれ何を意味するのか、今から詳しく見ていきましょう。
私は普段問題を解く時、まず「問題で聞かれていること」に目を通します。
例えばこの問題であれば、「直ちに静注すべきなのはどれか」とありますから、何か患者にトラブルが起こって(何か、は現段階ではわからない)、それに対して対応する必要に迫られている、ということです。
つまり回答者は、「今患者の身に何が起こっているのか?」を意識する必要があります。それのメモです。
これは患者の情報です。1月から始まった臨床実習では、しばしば指導医の先生にコンサル(質問をカッコよく言った)する機会があります。その時に必要なのが「患者氏名、年齢、性別、疾患(可能であれば+治療)」です。
それを意識して、年齢、性別、主訴をメモするようにしています。
QBの場合は疫学的情報で処理できるものもあります。そういう場合は、年齢の後に「→」を付けて、追記しています。
問題にもよりますが、既往歴が記載してある場合、回答に必要になることが多いです。
私は最近はこの様に、
「○年前」であれば「○y」
「○ヶ月前」であれば「○m」
「○日前」であれば「○d」
「○時間前」であれば「○h」
と書くようにしています。
QBの場合はほぼ時系列順に書いてくれてますが、今回の様に「実は30年前から2型糖尿病なんだ」と、少し順番がずれることもあります。
この辺りからは、問題によってどこまで記載するか、の判断をいつも迷いながら行っています。
例えば意識レベルも、正確には「JCS-300」と書かなくてはならないですが、メモは自分がその時何を考えていたのかを見るためだけに必要なので、多少省略して書きます。
「血圧低下(ショック状態)」も、「収縮期血圧が90を切ったらショックとみなして良い」という、非常に曖昧な基準で判断しています。
※実際には血圧だけでショックかどうかを判断することはできません。組織還流が障害され、細胞が低酸素に陥る状態がショック、と定義されています(ロビンス基礎病理学より)
「左上下肢の不全麻痺 右上肢の痙攣」のあたりは、とりまタイプしてみたけど、特にAssesment がなかった、ということが読み取れます。
低カリウム血症に伴う周期性四肢麻痺を疑っていたのかもしれませんが、メモとして残っていないので憶測にしかなりません。
「皮膚・口腔粘膜乾燥→高浸透圧性脱水、昨日、薬飲んだ?→血糖1160、HbA1c少し上昇」
この辺りから、「30y 糖尿病 血糖降下薬を服用」を意識し始めています。
頭の中には「高血糖に伴うケトアシドーシス、糖尿病性昏睡があるのでは無いか」という考えが浮かび、薬の服用歴を考えます。
その直後、血糖値が1160mg/dlという記載を見つけ、「あぁ、高血糖に依る障害かな。血糖を下げなくちゃ」と思い始めています。
それを裏付けるのが、次のメモです。
ここまでの問題文を読み、患者で今問題となっているのが「高血糖」であることが分かります。それに対応できる選択肢は、5つの中ではインスリンしかありません。これは比較的簡単に選ぶことができました。
しかし、選ばなくてはならない選択肢は2つ。2つ目の問題点を探し始めます。
当時の私は「高血糖なんだからまぁケトアシドーシスとか起こってるだろ」という謎の思考をして(憶測)、ケトアシドーシスを補正するために7%重炭酸ナトリウムを選択しています。
この2行は、他の選択肢に関する吟味です。
問題を間違える理由として「〇〇(疾患)だと信じて疑わなかったので、他の選択肢に目を通していなかった」ということがあります。
これを防ぐために私は、問題演習をする際、選択しなかった選択肢を「どうして選ばなかったのか」と考えるようにしています。
例えばQBの回答で、「Dの〇〇は△△であり、正解にはならない」と書いてあった場合。その文章が自分と同じであるかどうかを確認することもあります。
※ 1問1答形式の問題では、「まぁこれだよね」で選択して、どうしてほかがちがうのか、を考えるのが難しい時もあります。
回答を見て、自分の考えが甘かった所に”Add"で追記する
ここからは、問題を解き終わった後、どうやって問題の復習をするのか、ということに関してお話していきます。
私が上で、説明していない文章があることにお気付きでしょうか。
問題を解いた時、何をするのがよいでしょうか。
・該当する範囲の病気がみえるを読む
・QBの解説を読む
など、色々あります。
私はその中で「自分がメモしている所の甘いところを見つける」ということをしています。
詳しく見ていきましょう。
この患者さんの状況把握は、概ね良好です。
2型糖尿病の治療中、著名な脱水(高浸透圧性)が発生し、高血糖になっている。
それに対して、どの様に治療するか、という対応を問う問題です。
この問題を解答する上で一つだけ、解像度が甘い部分がありました。
それが、「ケトアシドーシスの判断」です。
問題文には、次の様に書かれています。
私のメモには「直ちに静注→高血糖と、それに依るケトアシドーシスを防ぐ」という様に書いてありますが、どうしてケトアシドーシスだと考えたのでしょうか。
ケトン体がマイナスだと、ケトアシドーシスではないと言い切ってしまって良いのでしょうか。
そこに、自信が持てなかった。自分が知らないところはここだ、と考えることができます。
この問題から学べること。それは、「ケトアシドーシスの判定」だったようです。
ここまで分かったら後は単純作業。
自分が所有しているリソースの中から、ケトアシドーシスの定義や判定方法に関して書いてあるモノを見つけます。
「ケトアシドーシスの判断は、尿中ケトン体だけで行って良いのか?」
など、疑問点は尽きない。
例えば病気がみえるには、
と書いてあります。
また、YearNoteには
とあります。
どの検査結果が特異度が高いのか、感度が高いのかはさっぱりわかりませんが、これらの情報から「あぁ、ケトン体が陰性の場合は、DKA(糖尿病性ケトアシドーシス)はないと考えて良いのかなァ…」と考えます。
おや、YEARNOTE に
と書いてあります。どうやら補正はしないようですね。
❝Add❞を中心に、Anki化出来る所を探す(任意)
自分が不足していたところを補ったら、それを定期的に思い出すために、Anki化を図ります。
今回の問題は「HHS(高浸透圧高血糖症候群)とDKAの鑑別」が割と重要になているのかな、と感じました。
medu4で、該当範囲を探します。
テキストの中で、自分がまだAnki化していない部分を探します。
それをAnki化して、この問題は終了です。
例えば、「HHSという疾患が在る」ということを知りませんでした。
高齢者の2型糖尿病に感冒・手術などのストレスが掛かる状況で惹起されるようです。
以下のようなカードを追加して、Memory flowに流します。
情報を死滅させない演習をしよう。
先日、sangmin.eth さんがTwitterで興味深いツイートをしていました。
Ankiを併用した演習は、このイラストの「情報の活性化→必要な時、自由自在に使える知識への昇華」を意識したものだと思っています。
最初の例えに戻りましょう。
「問題の理解は参考程度に、ギャンギャン問題を解いていく人」
もいれば、
「1問1問の復習を丁寧に、確実に問題を解き進めていく人」もいる。
後者の人は、どうしても1問1問に掛かる時間が長くなってしまうもの。
でも、確実に「自由自在に使える知識」を増やしていく、という意識を持って学習していける。Ankiを使えば、それが出来ると信じています。
医学知識をどの様に頭にいれるか。様々な方法が世の中に溢れています。
私の方法が、誰か1人でも良い、誰かの役にたてば、筆者冥利に尽きるものだと思います。
では。