ある日。
''彼には何かしら手放せない辛い体験を、ひたすら胸に抱えているのではないかと思っていた。
いつも微妙な距離を保ち続ける彼は、その何かを背負ったまま生きることが義務なのだと、自ら己に課しているように私には感じられた。
「生きていればいろいろありますから」と視線を外して出ていこうとした彼を、引き止めて、抱きしめてしまいたかった。
言葉は難しいから、あなたを心配したい私がいることを知って欲しいと思った。
「同じですね、なんか」と言うのが精一杯だった。"
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